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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十六章 冬休み始まりました

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16-44 旅行が終わりました

 【暗黒の使徒】が一人残らず強制転移した後、ジン達は始まりの町でログアウトする事にした。

 本来であれば【聖光の騎士団】や【森羅万象】も交えて、今後の事について話をしたかった。しかしジン達は旅行中であり、時間加速下とはいっても長時間のプレイが出来ない。

 それは【魔弾の射手】の面々も同様だし、今回行動を共にしている三人……恋の姉と義兄、そして三枝は運営のトップ陣だ。相手が信頼のおける面々とはいえ、素性を知られるのは避けるに越したことはない。なので、今回はその場でお開きである。


 代わりに、アークからこんな申し出があった。

「二人の為に力を尽くして貰った事、心より感謝する。後日改めて、話をする時間を貰えないだろうか」

 そんなアークの言葉に、【聖光の騎士団】の面々は異論は無いといった様子だった。そんな【聖光の騎士団】に対し、【七色の橋】【桃園の誓い】【魔弾の射手】はこれを快諾。ユージン達ソロプレイヤーは都合が合えばという事になった。

 そしてこの言葉は、ライバルギルドである【森羅万象】の面々にも向けられている。その申し出に対してアーサーは、「シンラとクロードに確認を取って連絡を入れる」と約束。アークもそれで良いと承諾した。


 その光景を見ていた野次馬達は、ゲームを牽引するトップランカー達の間に何か強い結びつきが生まれているのでは? と感じ取る事が出来た。それがまさか、クリスマスパーティーを共にしたからだとは思わないだろう。


 【聖光の騎士団】と【森羅万象】がそれぞれのホームに帰還し、【魔弾の射手】も早々にログアウトしていく。ジン達もそろそろログアウトを……と思ったのだが、ここでログアウトするとラミィが次にログインする時に始まりの町からリスタートになる事に気付いた。

「ギルドに加入すれば、ホームに直接飛べるんだっけ?」

「はい、その通りでございます」

「じゃあここでギルド加入してログアウトでも、大丈夫ですね~」

 それでは早速……といった所で、ラミィから予想外の申し出があった。

「あ、ちょっと待った。ケインさん達が良ければなんだけど……私は【桃園の誓い】の方に加入しようかと思うんだよね」

 その申し出は、仲間達全員に驚きをもたらした。


「多分だけど、私は戦うのはあんまり向いてないしさ。逆に物を作るのは結構好きな方だから、そっちで貢献する方が性に合ってそうだし。ケインさん達は生産が出来る人を増やしたいって言ってたでしょ? それなら、私は【桃園の誓い】に入る方が良いのかなって」

 ラミィはそう言うが、ケイン達としてもそこは【七色の橋】との協力体制や、PACパック契約の推進で対応するつもりだった。それならば、弟であるナタクが所属する【七色の橋】に加入する方が良いのではないか? と思うのだ。

 代表してケインがそう言おうとすると、その前にラミィが言葉を続ける。

「あとは、ちょっとチャイナ服を着てみたいって思ってたし。ついでに言うと、弟とその恋人のイチャイチャを見せ付けられるのは結構メンタルにクる」

 本音は最後の一言だろうか。ナタクとの姉弟関係は良好だし、ネオンの事も既に未来の義妹として可愛がっている。だが……その二人のイチャイチャを日常的に見せ付けられては、精神的にダメージが来るらしい。精神的糖尿病待ったなし。


「……歓迎するよ、ラミィさん」

 ケインは「考え直した方が良くないかな?」という言葉を飲み込んで、彼女の判断を支持した。彼にも姉がおり、実家に居た頃は恋人との甘ったるいイチャイチャシーンを嫌でも見なくてはならなかった。なので、ラミィの気持ちが良く解ったのだ。

「まぁ、姉さんがそう言うなら……い、一応気を付けるようにするけど」

「ラミィお姉さんも一緒だと思っていたんですけど……」

 気まずそうなナタクと、残念そうなネオンを見てラミィは苦笑。ネオンの髪を撫でつつ、笑い掛ける。

「でも姉妹ギルドなんでしょ、なら一緒に活動する事が多いだろうしさ? むしろ私がこっちに居る事で、ナタクとの兼ね合いもあってより密接な関係になるかもだし」

 それは事実、ありそうな話だった。既にシオンとダイスという、強い関係性の二人が居る。そこにナタク・ラミィという姉弟が加われば、ギルド間の関係もより密になるだろう。


 こうして【桃園の誓い】は、ラミィという新メンバーを迎える事となった。その場でギルド加入を済ませ、次回以降はギルドホームからリスタートが可能となるのだった。


************************************************************


 ログアウトすれば、時刻は十五時を回っていた。仁達は各自荷造りを済ませ、旅館のロビーへと向かった。

「お、もうゲームは良いのかい?」

 逆に親達は、今もまだ浴衣姿で寛いでいた。マッサージチェア等に座り、リラックスムードである。

「えぇ、十六時には出ると仰っていましたから……」

 左利がそう言うと、親達は時計に視線を向ける。

「うん? おぉ、もうこんな時間か」

「私達も、帰り支度をしないとですねぇ」

 どうやら親達は、若者チームがゲームをしている間にめちゃくちゃリラックスしていたらしい。


 親達が帰り支度をしに向かうと、仁達はロビーの席で待機する事にした。

「また、こうして皆で集まりたいですね」

「そう言って貰えると、俺達としても嬉しいね。是非、また集まろう」

 英雄と左利がそんな会話をすると、他の面々も乗り気の様子で会話に加わる。

「バーベキューとか、キャンプとかやってみてぇな」

「今度はゼクトさんと、バヴェルさんも一緒に参加出来ると良いわね」

「早めに予定を立てて頂ければ、私も調整出来るかもしれません」

「うんうん、楽しみです!」

 様々な事があったオフ会温泉旅行だが、こうして終わりが近付けば名残惜しさを覚える。しかし誰もが、今回で最後ではないと確信していた。


 帰り支度を終えた親達が来れば、いよいよ帰路につく頃合い。バスに乗り込み席に座れば、つい眠気がやって来る。

 ゲームをしていた面々は、バスが高速道路に入ってすぐに眠りに落ちるのだった。


 そんな若者達を見れば、親達は不思議な満足感と安堵感を覚えるのだった。


……


 新田修は眠っている愛娘と、拓真……そして鏡美を見て口元を緩めていた。

 拓真に対しては基本的に厳しい表情を崩さないが、優との交際についてはほぼほぼ認めている状態である。そうなると、拓真が将来的に義理の息子になる可能性が高い。


――真面目で気配りが出来る子だ。何より優を大切にし、幸せにしてくれるだろう。


 出会ったきっかけがゲームという事もあり、修も最初は拓真を警戒していた。ゲーム上でのトラブルや犯罪に巻き込まれたりしないかと、ヒヤヒヤしていた部分も多分にあったのだ。

 しかし蓋を開けてみれば、拓真もその周りの仲間達も実によく出来た子供達である。自分の心配は杞憂だったと省みて、冒険を楽しむ子供達を応援しようと心に決める。


……


 伴田家と古我家は昔から、家族ぐるみの付き合いだ。なので千夜と音也が恋人になるのは予想していたし、そうなって欲しいと常々思っていた。

 今回の旅行ではそんな二人が仲間に恵まれ、生き生きとしている様子が見られた。それだけでも、参加した甲斐はあったと思っている。


 そして同時に、ここ最近の二人の変化についても納得がいった。

 VRゲームを始めると言われた際は、当然「大丈夫か?」と心配にはなった。しかし二人は学業を疎かにする事もなく、しっかり決められた時間を守りながらゲームを楽しんでいる。

 それに、こんなに沢山の信頼できる仲間が出来た事。これは二人にとって、大きな財産になるだろう。

 寄り添って眠る二人の顔を見て、二家族は穏やかに流れる時間を過ごしていた。


……


 愛の父である勝利かつとしと母の友子は、安心していた。

 祖父との死別から、愛はどことなく影を引き摺っているように感じられた。しかしある時から、次第にそれは晴れていった。誰が、何がそうしてくれたのかは薄々察していたが……AWOを始めて、仲間が出来て、隼と巡り合えた。それが愛の心を救ってくれたのだと、察する事は容易だった。

「あんなにはしゃぐ様子を見たのは、久し振りだったわ……」

「そうだね。本当に楽しそうで良かった」


 愛の心からの笑顔を取り戻してくれた、隼と仲間達に二人は強い感謝の念を抱いていた。最初はゲームを通じて知り合ったという経緯に、多少の懸念はあった。しかし今回、こうして寝食を共にする事で人となりも知ることが出来た。

 二人は旅行に来れて良かったと、互いに笑顔で口にするのだった。


……


 鷹志と桔梗は、息子である隼が一つの事を長く続けている事に驚いていた。

 というのも隼は興味がある事に手を出すが、あまり長続きしないのだ。それはゲームに限らず、スポーツ等もそうである。そんな息子の本心に、二人は薄々気付いていた。


――陸上に打ち込む仁君に憧れて、自分も何かをしたいと思っていた……しかし全力で情熱を注げるものが、見つからなかったんだろうな。


 そんな隼がAWOに熱中しているのは、そこに仁と和美が居るから。そして愛という恋人、拓真という親友、大切な仲間達が居るからだろう。

 ようやく隼は、自分の情熱を注ぎ込める場所に出会えたのだ。鷹志と桔梗にはそれが喜ばしく、これからも見守っていきたいと思うのだった。


……


 行きには歓迎の準備の為に同乗していなかった賢だが、今回の旅行の帰路には彼も参加していた。また、折角だからと瑠璃・亜麻音もバスの旅に便乗する事になっていた。亜麻音の車は、既に初音家の方で解散場所まで移送している。

「成程、では舞子さんのご両親にもお話を?」

「えぇ、本人の意向だけで決められる事ではありませんからね」

 舞子の適性を見抜いた亜麻音は、事務所に所属しレッスンを受けさせたいと考えていた。現在レッスン中の少年少女と比較しても、舞子は決して見劣りしない。ここまで独学で歌やダンスの練習をして来たのだから、正規のレッスンを受ければ更に上を目指せる。それが亜麻音の、舞子に対する評価だ。

「夢に向かって努力する彼女を、応援したいと思ったんです」

「その気持ち、解りますよ」

 賢も亜麻音の考えに、賛成の様だ。舞子がアイドルとして活躍する日は、そう遠くない未来の事なのかもしれない。


……


 一方、初音夫妻は星波夫妻と今後の事について相談していた。

「恋と英雄君の婚約について話が広まれば、何かしらのアクションを起こす輩がいるかもしれません。こちらでも手は打っておきますが、何かありましたらすぐにご連絡下さい」

「えぇ、お手数をお掛けします」

「いえいえ、子供達の為ですからね」

 秀頼の言う「何かしらのアクション」には、英雄だけでなく大将や聖に働き掛ける可能性も含まれている。例えば大将の職場に圧力を掛け、嫌がらせをする等だ。

 最もそんな姑息な手段は、初音家からすれば容易に想像が付く。秀頼の頭の中では、既に根回しのプランは着々と進んでいた。


「それと、聖さん。もしよろしければ、恋の花嫁修業にご協力をお願いしたいのですが」

 花嫁修業……つまり定期的に星波家に赴き、料理やら何やらを学ばせてやって欲しいという意味合いだ。乙姫がそう言うと、聖は笑顔でそれを快諾した。

「えぇ、勿論です。姫乃も喜ぶでしょうしね」

 ちなみに聖はかつて飲食店に勤めており、調理師免許を持っている。彼女の料理の腕が高いのは、そういった事情からだ。料理を学ぶならば、彼女は実に最適な人選と言って良いだろう。


……


 ぐっすりと眠りながら、互いに体重を預けている仁と姫乃。その様子を見た俊明と撫子は、フッと笑みを浮かべていた。

「よく寝ているな」

「お昼を食べた後はゲームをしていたし、疲れたのかもしれないわね」

「楽しく冒険していたんだろうなぁ」

 いいえ、【暗黒の使徒(ならずもの)】を処していました。それはもう、盛大に。

 今回の件は、親達には伏せる方向で意思統一されていた。折角、AWOをプレイする事に異論は無いという方向性になっているのだ。ここで待ったをかけられるのは、誰もが避けたかった。

 和美もすっかり持ち直し、今はぐっすりと眠っている。なので、親達が何かあったのか? なんて心配する様な事は無かった。


……


 豪華バスによるゆったりとした移動を経て、解散場所に到着した仁達。折角だからと夕食を全員で食べた後、名残惜しい気持ちを抑えて解散となる。

「今回はご一緒出来てとても嬉しかったです。皆様、本当にありがとうございました」

 恋が満面の笑みでそう言うと、親勢は「それはこちらの台詞だよ」と笑った。旅行が始まった頃の様な堅さは無く、この三日間で旅行参加者の心の距離は随分と縮まっていた。


 解散場所は仁達の最寄り駅なので、寺野家・星波家は徒歩で帰宅。和美と紀子は、寺野家に宿泊なのでこちらに同行する。

「それじゃあ、そろそろお開きッスね」

「皆さんも、どうぞお気を付けて!」

「まぁ、ゲームですぐに顔を合わせるんだけどね!」

「いやいやいや、千夜ちゃん。現実とゲームじゃ、やっぱり違うから」

「ふふっ、音也さんの言う通りですね」

「とても楽しかったです、皆さんありがとうございました!」

 相田家・巡音家・伴田家・新田親子・古我家・名井家一家は電車で帰宅だ。どの家族も、満足そうな様子だった。最初は家族同行の旅とあって、どうなる事かと思ったが思いのほか充実した時間を過ごせたらしい。


「それじゃあ、俺達もここで。皆さん、お世話になりました」

「またご一緒できる機会があれば、どうぞ宜しくお願い致します」

 左利・輝乃・十也・朱美・治・千尋・蔵頼・勝守は、事前に携帯端末で予約していたホテルへ向かう。

「勝守さんも一緒だったら良かったのにねぇ」

「か、和美……それは、流石に……!!」

「人数が多くなると、仁君の家にご迷惑を掛けるからね。明日、帰る前に合流してご飯でも食べるだけでも十分だよ」

 勝守は旅行中から言っていた通り、ホテルの方に泊まる事になる。帰りは和美・紀子同様に飛行機なので、途中で合流して空港に向かう事になる。

 新幹線を使う左利達も、勝守と同じホテルだ。年末年始の休暇がもうすぐ終わるという事もあり、予約が空くタイミングだったのだろう。全員、同じホテルで予約をする事が出来た。


「私達もご一緒させて頂いて、ありがとうございました。おかげ様で、とても楽しかったです!」

 瑠璃と亜麻音は、初音家が移送してくれた車で帰宅だ。瑠璃は断念していた旅行に参加する事が出来たからか、実に嬉しそうに笑っていた。そんな瑠璃の様子を、亜麻音は優しい眼差しで見守っている。


「それじゃあ皆さん、お疲れ様でした!」

 こうして二泊三日の温泉旅行は、無事に終わりを迎えたのだった。

次回投稿予定日:2023/9/20(本編)

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[良い点] 頭領様 旅行中だった すっかり忘れてたwww 親としては 子供達の成長を 子供達としては さらなる親睦を それぞれ 充実した旅行になり とても良かったです(⌒▽⌒) [一言]…
[良い点] 二泊三日とは思えない充実度じゃった…w 各ご家庭で安心や楽しんでるのを分かっていただけたなら何よりですなぁ。 大人組はホテルでもう一杯行ったりするのかしら。 居酒屋やバー、どちらでも妄想…
[良い点] 長いようで短いでもやはり長い旅行も終わりこれから日常に戻って行くわけですがこれで今回の恋人成立ラッシュも落ち着きますかね?いやまだ本命ギル達が残ってますねwギル頑張っ。
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