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忍者ムーブ始めました  作者: 大和・J・カナタ
第十六章 冬休み始まりました

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16-17 服職人と知り合いました

 クベラのフレンドであり、第三回イベントにランクインしている服職人・ネコヒメ。彼女に[虹の麓]に居る事を知られたクベラは、すぐに仲間達にその事を相談した。

「フレンド欄を見て、居場所が解ったんでしょうね……」

「せやな。急な依頼やからって、あっちから来ようとしてくれとったみたいやから」

 フレンドリストを見れば、相手が何処にいるのかがおおよそではあるが解る。ネコヒメのフレンドリストには、クベラの現在地が【七色の橋】ギルドホームと表示されているはずだ。

「まぁ、とにかく行って来るわ……根掘り葉掘り聞かれそうやけどな」

 そう言って、クベラがシステム・ウィンドウでメッセージを送ろうとした時だった。ネコヒメから、メッセージが送られて来たのだ。


『クベさん、和装販売を委託されてるんだったよね。その件でお話してるなら、忙しいでしょ。また今度でも良いよ!』


 引き際を心得ているらしい、ネコヒメ。そのメッセージの内容を見て、クベラは申し訳無いと思ってしまう。

 そんなクベラの表情に気付いて、カノンがおすおずと手を上げてみせた。

「あ、あの……クベラさんから見て、その……ネコヒメさん、は……信頼出来る、方……ですか? それなら、その……お話を聞く限り、今日中に……素材、欲しい……んです、よね……?」

 カノンの言わんとしている事はクベラにも、【七色の橋】や【桃園の誓い】、リリィとコヨミにも解った。


 もしもネコヒメが信頼に値する人物ならば、ここに来て貰えば良いのでは? という、事である。その最終判断は勿論、ヒイロとレンに委ねる事になるだろう。

 しかしながら、問題はそこではない。それを提案をしようとしているのが、カノン……人見知りな彼女である、という点だ。


――ふふ、紀子……勝守さんの為に、変わろうとしているのね……。


 ミモリは親友の、その変化を感じて口元を綻ばせた。内気な彼女は、この一年で劇的に変わった。しかしクベラという最愛の存在を得た今、彼女は更に進化しようとしているのだ。彼に相応しい自分、彼の隣に立って堂々とできる自分になろう……そんな思いで、彼女はまた新たな一歩を踏み出そうとしている。それがミモリには解る。

 それは仲間として喜ばしく、親友として誇らしかった。ならばここは彼女の援護射撃だと、ミモリは口を開いた。

「ネコヒメさんが信頼に値する人なら、ここに来て貰うのもアリ……って事ね? 良いかもしれないわね、それ」

「う、うん……その、勿論……皆が、いいなら……だけど……」

 気力を出し尽くしたのか、カノンはそう言って深く息を吐く。彼女の性格を考えれば、相当な勇気が必要だった事だろう。


 ならばそれに応えるのが、この面々である。

「うん、カノンさんの提案は一理ある。それに自分で商売もするプレイヤーという事なら、同盟の装備販売に協力して貰えたりしないかな」

 ヒイロがそう言うと、センヤとバヴェルも彼の言葉の意図を察した。

「あ、そっか! 今はクベラさん一人だけど、もう一人か二人居ればって話だったもんね!」

「協力してくれる人だったら、ありがたいよね」

 場の空気は、ネコヒメを招待するのもあり……という方向に向かっている。芸能人であるリリィ、配信者であるコヨミも否は無い様子だ。


「クベラさん、ネコヒメさんもお待ちでしょうし……どうですか?」

 ヒイロの言葉は、クベラから見たネコヒメの人となりについて聞きたいという意思表示だ。それに笑みを浮かべ、クベラは頷いて話始める。

「ネコヒメさんは、普通の服職人や。ただ一般的なファンタジーテイストの服よりも、可愛らしい制服とかそういうのに熱意を燃やしとる感じやな」

 センヤさんとは気が合いそう、と付け加えて、クベラは話を続ける。

「年齢は聞いた事無いんやけど、多分高校生から大学生くらいとちゃうかな。性格は明るく温厚で、礼儀正しく口も堅い。信頼出来るかって言われたら、花丸あげてええとワイは思うで」

 クベラは商人プレイヤーであり、他のプレイヤーとのやり取りが多い。そこで鍛えられた彼の人を見る目には、【七色の橋】も信頼を置いている。

 となれば、彼が太鼓判を押すネコヒメを招待するのは、いい案ではないか? と誰もが乗り気になっていた。


「提携云々はまだ確定では無いし、ネコヒメさんの意志もある。まずは、会ってみてからになるかな。クベラさんがそこまで言う人だったら、とりあえずここに招いてみようと思うんだけど……皆の意見は、どうかな?」

 ヒイロがそう呼び掛ければ、反対意見は出なかった。

「現実でお父様達のお相手をしている皆様の意見を聞くのは、後程としましょう。ひとまず、お招きしましょうか」

 レンも招待する方向で意思を固めたので、ツートップからのゴーサインが出た形だ。そうなれば、クベラはその方針に従って行動を開始するのみである。

「オッケーや、ほんならメッセージ送るで」


『さっき言った通り、こっち来るんやったらOKやで。【七色の橋】の皆さんから、ネコヒメさん呼んでええって許可もろた』


************************************************************


 そうして、待つこと三十分程。

「お嬢様、来客の様です」

「そうしましたら、ひとまずお出迎えしましょうか」

 出迎えに向かうのはヒイロとレン、顔見知りのクベラ。そしてカノンも、クベラと一緒に行くと立ち上がった。

「か、か、彼女……ですので……!!」

「せ、せやな……!!」

 甘酸っぺぇなぁ。


――まぁ心配は要らないんだけどな。ネコヒメさん、俺みたいのはタイプじゃないみたいだし。でもカノンさんがこうして側に居てくれるのは、嬉しいから良いか。


 そうしてホームの正門を開けると、そこには桃色の髪の美女が立っていた。頭の上には髪の毛と同じ色の猫耳が付いており、そのプレイヤーネームをイメージさせる。

 服装は自分で作ったのか、セーラー服を改造したデザインの衣装だ。上半身はノースリーブにしたセーラー服だが裾が短く、その下に着ているキャミソールが見えている。下半身はスカート状の腰巻と、ショートパンツ姿といった活動的な印象を与える装いであった。

「待っとったで、ネコヒメさん」

「ど、どうも……!! あの、私はネコヒメと申します!! 初めましてです!!」

 そう言って、ペコリと頭を下げるネコヒメ。その様子にヒイロとレン、カノンは「確かに良い人みたいだ」とホッとする。


「御足労頂いて済みません、ネコヒメさん。【七色の橋】ギルドマスターのヒイロです、どうぞよろしくお願いします」

「サブマスターを務めております、レンと申します。ネコヒメさん、どうぞ宜しくお願い致しますね」

 ヒイロのイケメンオーラと、レンの美少女オーラを同時に照射されたネコヒメ。更に二人から向けられた柔らかい視線に、暖かい声色での歓迎の言葉。ネコヒメは緊張と安堵がミックスされた様子で、しきりにペコペコと頭を下げるしかできない。

「ど、ども!! こ、この度はお招きありがとうございまひゅ!!」

 あ、噛んだ。


 そして、もう一人。カノンも表情をガッチガチにしつつ、何とか自己紹介をしようと勇気を振り絞って声を掛けた。

「は、初めまして。わ、私は……鍛冶職人の、カノン……です!!」

「カ、カノンさん……!! あの、素敵な武器をいくつも作る……あ、会えて光栄ですッ!!」

 ヒイロ&レンの時と違い、ネコヒメはカノンの名を耳にして目を輝かせた。カノンも生産職としては有名な職人であり、どうやら会えた事に感動している様だ。それは彼女自身も生産職であり、同時に同じ生産職人に対する敬意の念を持ち合わせているからだろう。


「さて、まずは商談やな」

 クベラがそう切り出すと、ネコヒメの様子が一変する。キリッとした表情をした彼女は、商人の顔でクベラに頷き返した。

「≪ミラルカブルクロス≫の市場価格は上がっとるけど、お得意様やしこの前と同じ値段でええで。≪シルクワームの糸≫は市場価格に変動は無いし、従来通りの値段で構わへんよな?」

「≪ミラルカブルクロス≫は需要が上がって、前の値段だと厳しいんじゃないですか? 前の値段通りだと、クベさんが損じゃないですか。これくらいでどうです?」

「そりゃありがたいけど、ええんか? 懐かっつかつやろ」

「ちょくちょく服が売れているので、そこまでかつかつじゃないですよーだ」

「ほんなら、ここまで来た手間賃でこれや。うとくか?」

「ん-、まぁこれなら。ほんっと、クベさんって損する性格ですよね。まぁ、私みたいなフリーにはありがたい存在ですが」

「安心せぇ、ちゃんと儲ける時に儲けとるから」

「【七色】と提携しているからですよね、それ。うらやま!!」


 商人同士の会話をする二人に、他の三人は置いてけぼりだ。しかしどちらも、市場価格の動きや損得勘定をしっかりとしているのは理解できた。これは職人や戦闘専門職では考えの及ばない、高度な商談だったのではないか? と思わせるものであった。

 実際に今の会話で、二人は現在の市場価格の認識の擦り合わせ、クベラの現在の儲け具合、ネコヒメの生産した服の売れ行きについての情報交換となっていた。

 そしてそこから得られた情報を総合して、互いに”今後も商談をする事に不都合はない”という結論に至っていた。

 この会話を聞いて、二人の真意を察する事が出来るメンバーは多くないだろう。レン・シオン・ハヤテ・ナタクあたりが、なんとなく意図を汲み取れるくらいである。


 それはさておき、クベラとネコヒメの商談は成立。無事にアイテムとゴールドコインのトレードが終わり、ネコヒメは残念そうな表情を一瞬浮かべた。しかしそれも一瞬の事で、すぐに笑顔を浮かべて一礼する。

「それじゃあクベさん、毎度ありです。【七色】の皆さんも、押しかけて来て済みませんでした!」

 ここで長居をするのは、失礼に当たる。部外者である自分は、早々に退散した方が良いだろう。そんな意志表示を見せたネコヒメに、ヒイロとレンは視線だけでまたも会話し意思疎通。


――やっぱりクベラさんの言う通り、良い人みたいだ。

――えぇ、ザ・良い人ですね。この機を逃す手は無いでしょう。


 恒例の視線で会話を終えて、レンは努めて普段通りのたおやかな笑みを浮かべてネコヒメに声をかける。

「ネコヒメさん、わざわざご足労頂いたのですし、お時間が許すならば上がっていかれませんか?」

「え……よ、宜しいのですか?」

 本当に[虹の麓]に上がれるとは思わなかったらしく、困惑するネコヒメ。その様子からしても、実はそんな態度が演技で、あわよくばを狙っていたという感じでは無さそうだった。

 それどころか、むしろ……。


――いやいやいやいや!! 私なんかが、どうして!? クベさんのフレだからかな!? でも、それだけでこのスタープレイヤー揃いの【七色の橋】に招かれるはず無いよね!? マジ何で!?


 いい具合に、困惑していらっしゃった。ガチのやつだ。ここで自分の人間性に好感を抱かれたと思っていないのが、またなんとも。

 表面上は少し、内心では盛大に困惑しているネコヒメ。そんな彼女にヒイロも声を掛けた。

「レン、それは良いね。クベラさんのフレンドさんですし、こちらの都合でわざわざご足労頂いている訳だし」

「勿論、ご予定があるのでしたらそちらを優先して頂いて、後日改めてでも構いませんよ。クベラさんがいらっしゃらない時でも、私共は歓迎しますから」

 こういう時は、レン様に限る。本物のお嬢様であるレンの言葉によって、ネコヒメは「今ってもしかして、絶好の機会か何かなのでは!?」という想いが沸々と湧き上がってくる。

 日を改めるにしても、その時クベラが居るとは限らない。同じく【七色の橋】に属さない彼が居る今は、千載一遇の好機なのではないかとすら思ってしまう。

 ちなみにクベラは所属していないだけで、どっぷりと【七色の橋】側なのだが。ほら、彼女カノンが所属している訳だしさ。


……


 結局ネコヒメは、ヒイロやレンの誘いに応じてギルドホームに上がる事になった。恐縮しきりの様子だった彼女だが、大広間でジン達の姿を見て目を輝かせる。

 ネコヒメの件があって着替えるのを忘れていたリリィとコヨミは、着替える為に席を外していた。それでも【七色の橋】フルメンバーに、【桃園の誓い】のダイス・ヒューゴ・ヴィヴィアン・ゼクト・バヴェルが居る状態だ。

「お、お邪魔します!! 服なんかを製作する職人の、ネコヒメと申しますっ!!」

 礼儀正しく挨拶をするネコヒメを見て、ジン達は「あ、こりゃあ良い人そうだ」と安堵する。最もクベラの推薦があり、ヒイロ・レン・カノンが実際に会って大丈夫だと判断したのだ。人柄的に、問題は無いと思ってはいた。


「しゅ、しゅごい……私の中の『いつか会ってみたいプレイヤーランキングTOP20』が半分以上、叶った……」

「そんなん作ってたんか……」

 そのランキング、内訳が気になる所である。

 するとネコヒメは、用意していたお茶を差し出すシオンに視線を向けた。

「あ、ありがとうございます……あの、シオンさん! シオンさんにも是非、お会いしてみたかったんです! 美人メイドさんで、トップランカーで! しかも服飾も腕が確かで……!!」

 お礼を言いつつ「間近で見ると本当に美人だなぁ」なんて思いながら、かねてから会ってみたかったという内心を告げるネコヒメ。そんな彼女に、シオンは意外そうな顔をして……そして、柔らかい表情で一礼する。

「左様でございましたか。光栄で御座います、ネコヒメ様」

「い、いえ!! こっちこそ光栄というか、幸せ過ぎると言いますか……!!」

 興奮気味に、シオンに声を掛けるネコヒメ。猫耳もあいまって、小動物っぽい印象を受けてしまう。


「販売されている和装も素敵ですし、何と言ってもあの≪星空の衣≫……!! デザインも素敵で、見惚れちゃいました!!」

「デザイン、という事でしたら……あの服のデザインの大元は、センヤ様がお作りになられたのです」

 シオンがそう言うと、センヤが「いや~それほどでも~」みたいな顔をしている。

「そ、そうなんですか……っ!? だ、だってセンヤさんって……例の()()()じゃあ」

「え!? 私そんなあだ名付けられてるんですか!?」

 それは某サムライ漫画の、主人公の異名の一部である。別段、飛〇御剣流の技を使ってた訳では無いんですけどね。

 そんな風に呼ばれているのはやはり、第四回イベントの影響だろう。観戦していたプレイヤー達にとって、センヤの居合い戦術は中々にインパクトが強かったらしい。


「私、流浪人じゃないんだけどなぁ……あれは居合い戦術だし。まぁ、居合いと抜刀術って似てるけどさー」

 そりゃあギルドに所属しているのだから、流れさすらっては居ないだろう。

 そこで、ナタクが苦笑しながらセンヤに声を掛ける。

「そうでも無いんじゃないかな。どちらかと言うと、居合いは模造刀でやるものだからね。意味合い的には本物の日本刀でやる抜刀術の方が、正確な表現なのかもしれない」

「おー……そうなんだ!」

「そっか、言われてみるとそうなのかも?」

「流石ナタクさん! 詳しいですね」

 ナタクの名前を聞いて、ネコヒメは「おや? ナタク? 聞き覚えが無い人だな?」と疑問を抱く。

 しかし彼の身に纏っている装備を見て、彼がマキナである事にすぐ思い至った。何せ彼が今身に着けているのは、第四回イベントでマキナが装備していた≪戦衣・勁草曙天≫と≪陣羽織・不撓不屈≫なのだ。


――あ、確かスパイのせいで身バレしたんだっけ。そっか、転生したんだ!!


 勿論ネコヒメも、その事について口には出さない。言及してよい立場では無いし、それくらいのマナーは基本中の基本だ。

 それに彼女は商売にも手を付けているので、対人間での信頼関係の重要性を熟知している。好奇心に従った結果、無用な軋轢を生むのは愚の骨頂なのだ。

 だからネコヒメはそのままにこやかに微笑みつつ、シオンの淹れたお茶を楽しむ。今後、【七色の橋】と交流する事が出来るかもしれない。ならば今ここで不用意に口を出して、彼等の心証を悪くするのは言語道断と思うが故だ。


 そんなネコヒメの対応に、ナタクも気付いていた。ギルドホーム内では、普段非表示にしている≪陣羽織・不撓不屈≫を装備しているのはわざとだったのだ。


――()()()僕がマキナだと解る様に、フル装備でいるけど……彼女は気付いて尚、それに触れようとしなかったな。うん、道理を弁えている人だと思って良い。


 ナタクはハヤテに視線を送り、「問題無し」という意思を込めて小さく頷く。それを横目で確認したハヤテは、口元を緩めた。

 この二人は同じ中学に通うと同時に、VRMMO歴の長いコンビでもある。近付けるべきか、遠ざけるべきか……その判断を下す際に、この二人の意見は非常に重宝されているのだ。

 クベラの太鼓判があり、ヒイロとレンが招き入れ、ハヤテとナタクが問題なしと判断した……この時点で、ネコヒメは【七色の橋】から高い評価を得たと言って良いだろう。


 尚、ここまでするのにも当然理由がある。リアルでも付き合いの深い【七色の橋】において、最もデリケートなのはジン・ヒメノ・レン・カノン・ナタクの現実事情だ。その中でもウェイトを占めているのは、ジンとヒメノのハンデである。

 二人の事情を考慮すれば、求められるのは信頼であるのは当然の帰結だ。本当に信頼できる相手でなければ、このギルドに深く踏み込ませてはならない。これは、メンバーの誰もが重視している。

 それは勿論【桃園の誓い】や【魔弾の射手】、ひいてはユージンやリリィ・クベラ・コヨミも同様である。


 そう、今回は同行していないユージン以外に、リリィとコヨミも居るのだ。丁度そこで、着替えに行っていたリリィとコヨミが姿を現した。

「済みません、お待たせしました」

「あ、そちらがネコヒメさんですかね? こんにちは~!」

 たおやかに微笑むリリィと、明るく快活な笑顔を浮かべるコヨミ。そんな二人を見て、ネコヒメがフリーズした。

「……ネコヒメさん?」

 数秒経っても身動き一つ取らないネコヒメに、ジン達は「どうしたんだろう?」と怪訝そうな表情を浮かべる。

 もしかしたら、アイドルであるリリィがここに居る事に驚いたか……と予想したのだが。


「よ、よ……()()()()!?」


 再起動を果たしたネコヒメは、コヨミを特徴的なあだ名で呼んだ。それは彼女の配信を視聴するプレイヤー達が、よく用いる愛称だ。

 どうやらネコヒメが驚いたのは、コヨミが居た事の方らしい。いや、多分リリィにも驚きはしてるのだろうけれども。


「え? あ、はい! コヨミですー!」

「嘘っ!! うわ……マジ……っ!! えっ……本物……っ!?」

 明らかにコヨミを前にして、語彙力を失っていた。その様子から、ジン達は状況を察した。ネコヒメは恐らく、コヨミのファンか何かなのだろうと。

「わ、私……!! ノラ!! ()()()()だよっ!!」

 いや、あんたネコヒメじゃないんかい! と、クベラがツッコミを入れたそうにしている。しかし、何とか踏み止まっているようだ。

「ノラ……イヌ……えっ!? ()()()()()!?」

 コヨミもどうやら、ネコヒメの言葉の意味を察したらしい。


 だが、他の面々は「え? 何? どういう事?」と意味が解らずに居た。そこで、ジンが「……あっ」と声を上げる。

 彼は一度だけ、ヒメノと共にコヨミの実況配信プレイに同行した事があるのだ。その際にコメントにも返事をしたりしていたので、ノライヌという名前に聞き覚えがあったのである。

「ノライヌ殿は確か、コヨミ殿のリスナーのお一人だったはずでゴザルな。まさか、ネコヒメ殿がそうだとは思わなかったでゴザルが」


 そう……ネコヒメはコヨミの配信を初期から視聴し、応援する古参リスナー。

 一部の面々に、【円卓の騎士】と呼ばれる十三人の内の一人であった。

次回投稿予定日:2023/7/5(本編)


【イラスト初心者の作者がネコヒメを描いてみた】

挿絵(By みてみん)

ついに本編に、【円卓の騎士(コヨミ推し最古参)】が登場しました←


ネコヒメが第三回の生産イベントに登場したのも、コヨミの配信でノライヌが登場したのも、予定していました。

コヨミ&ネコヒメの活躍にご期待下さいませw


改造セーラー服は良いぞ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは、コヨミファンギルド作って、七色と同盟を結ぶ流れか? いや、元々あったっけ? 個人的にそろそろギルドで競わない協力イベントがないかなぁと(ギルド対抗戦が長かったし) そういえば、V…
[良い点] 商人としての本気度が伝わってくる 彼女が変わろうと頑張ってる [気になる点] 円卓の騎士 ギルド作って 忍者ふぁんくらぶみたいになるのかなぁ [一言] ツッコミたいけど我慢する …
[良い点] WSS(私の方が先に好きだった)とかはなかったんや! と言うか優良商人同士の会話の中にいくつ探り詰め込んでるのw それも含めて商売ムーブ楽しんでるんだろうけど。 クベラさんでおおよその…
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