周囲20.補習中の男
「あー……なるほど、ここはこう解けばよかったのか。日紫喜、教え方上手いなぁ」
「いや、なんでうちが伊達山に勉強を教えちゅーのさ。教えちょいてなんやけど」
「先生に頼まれたからだろ。あと俺が日紫喜に教えてもらったら分かる気がするって言ったから」
「余計なことを……」
「いや、そもそも断っても良かったろ。今日も図書委員の仕事で学校来てたんだから、忙しいだろ?」
「なんでうちが図書委員だって知っちゅーのよ」
「好きな人の事は何でも知ってるものだ」
「なんか、伊達山の方がうちよりよっぽどストーカーっぽうない?」
「いや、ほら。図書委員にも友達いるから俺。そっから聞いたんだよ」
「まぁええわ。本は好きやきそっちは別に苦やないわ」
「それで、ちょっと聞きたいんだけどさ」
「何? そこは応用やき自分でちっくとは考えて……」
「なんでわざわざ、俺が補習の時に図書委員の仕事入れてくれてんの?」
「は?」
「図書委員の仕事ってバイトみたいなシフト制じゃん。そんで、日紫喜の希望日ってちょうど俺の補習日と被ってんだよね」
「……偶然ちや」
「こんだけ被ってて、偶然なの?」
「偶然偶然。世の中には行く先々でばったり出会うなんて偶然、ようある話やろう」
「ホントに? 俺の事心配してとか、俺に会いたいとかそういう気持ちが微塵もなかったと?」
「己惚れんでよね!! そがなわけないろう!!」
「そっか……」
「……」
「……」
「なにシュンとしちゅーのさ……そりゃ……偶然会うかもとは思うちょったわよ」
「!! そっかぁ!!」
「偶然よ、あくまで偶然やきね! そがな嬉しそうな顔せんでよ!」
「なぁ、日紫喜。俺の補習もうすぐ全部終わるからさ、一緒にプール行こうぜ」
「ほげんでよね、夏祭りは行かいでええが?」
「ぶっちゃけ、どっちも一緒に行きたい」
「何ほげてわがまま言いゆーのよ!! 嫌よ!!」
「……そっか、……嫌なら仕方ないかぁ……」
「……」
「……」
「だ……。あーもう! ちゃんと補習終わったら考えちょく!」
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