81 この世にこれ以上崇高な光景があろうか。いやない。反語w
「来たのね。来たのね。待ってたわーんわんわん。店長の犬咲純だわん」
店長さん、予想を上回るハイテンションなお出迎えありがとうございます。
それにしても鵜鷺先生の話だと凄まじいオタクさんというお話ですが、髪の毛ポニーテールに縛って、眼鏡もしてないし、活発そうなお姉さんですな。
「この仕事は力仕事もあるからね。動きやすくないと。おっ……」
店長さん、懐から眼鏡を取り出し、エリスを注視。何かさっき同じことを僕らを事務室へ案内してくれたお姉さんもやっていましたね。下総屋の伝統芸か何かですか?
店長さんは僕の言葉をスルーして、外した眼鏡を懐にしまうと一言。
「八十点」
な……
さすがにあっけに取られました。何ですか? その点数。エリスは何が起こったか分からないまま僕に引っ付いていますが。
「素材は最高級。だけど、惜しい。実に惜しい」
店長さん、おもむろに僕らに近づくと、エリスを僕からひっぺがす。
「へ?」
さすがに驚くエリス。
「まずはこうね」
分かりづらいので僕は青い左眼を閉じ、エリスが黒髪ロングに見えるようにする。
!
何と店長さん、エリスの前髪を下ろし、目が隠れるようにしてるし。
「やっぱ前髪で目を隠した方がインパクトがでるわんね。これで九十点。さて残り十点は……」
「店長。これでしょ?」
僕らを事務室へ案内してくれたお姉さんが持ってきたのは濃紺のセーラー服!
「さあすがピッピちゃん。気が利くう」
「はっはっは、伊達に長いこと店長の部下やっていませんよ。あ、ごめん、自己紹介がまだだったね。私、鳳琴理。店長は『ピッピちゃん』と呼ぶけどね。まあ琴理と呼んで」
今更な自己紹介、ありがとうございます。
「はいじゃあ新田くんだっけ。いかな彼氏と言えど、高校生。不純異性交遊はいけません。店長―っ、絵栗鼠ちゃんを更衣室で着替えさせてきて」
「合点だ。ピッピちゃん」
待つことしばし、満面の笑みの店長さんが黒髪ロング、前髪で目を隠し、濃紺のセーラー服着用のエリスを伴い登場。
「素晴らしい」
エリスの姿を見るや涙を流す琴理さん。
「店長。かくなる上は琴理さんも行っちゃっていいですか?」
「グッジョブ! ピッピちゃん。行っちゃってGO!」
待つことしばし(二回目)。その姿を現したのは金髪縦ロールクリムゾンレッドのフリフリのドレスをまとった琴理さん。
「素晴らしい」
今度は店長さんが落涙。
「目を隠した黒髪ロングセーラー服女子高生と悪役令嬢のツーショット。この世にこれ以上崇高な光景があろうか。いやない。反語」
あの僕、中古ホビーショップのアルバイトに来たつもりだったんですが、ひょっとしてコスプレ喫茶に来ちゃったんでしょうか?




