72 日常系SFコメディー最大の試練w
「お話をうかがっている限り、こっちに仕事のあてがあって来日したわけじゃないのよね。と言うことは就労ビザ取ってないでしょ?」
しゅ? 就労ビザ?
「仕事してもらうには就労ビザを取らなきゃいけないけど、校務員は特殊技能が必要とされる仕事とは言い難いから厳しいのよね」
そういう話があったんですか?
「そうなんですよ」
「公共」の教員の鵜鷺先生も頷く。
「普通は仕事決めてから来日しますからね。気をつけないと不法就労になっちゃうし」
うぐっ、この作品始まって以来のシリアスな話題。日常系SFコメディー最大の試練かも。
「ビザって何だ? 斜めに建ってる塔か?」
いやエリス。そこのボケはせめて小麦粉をこねて円形に焼いたものを切って食べるとかクレジットカードかと言ってくれ。ピサの斜塔とか遠すぎだろう。
「外国籍の方が来日する時は必要なのよ。恐らく観光ビザ取ってるんだろうけど、それじゃ仕事できないの」
勉強になります鵜鷺先生って感心してる場合じゃないな。
「R-2号さんは絵栗鼠の護衛用アンドロイドなのだ。だからピサとか持ってないのだ。こちょこちょ先生、校庭に斜めの建物を建てればいいのか?」
エリス。まだ「ピサ」か?
「ごめんね。剣汰瓜さん。厨二で乗り切れるものとそうでないものがあるの」
優しく諭す校長先生。しかし、こんないい話はそうはないし、何とかしたいなあ。このままじゃどこで仕事しても「不法就労」になっちゃうし。
……
何か一つ引っかかるものがあるぞ。あっ!
◇◇◇
「校長先生。絵栗鼠も相当な遠隔地から入学してますが、そっちの手続きはちゃんと出来てたんですか?」
急な質問に校長先生は戸惑ったみたいだけど、穏やかに答えてくれる。
「え? ええ。書類に不備があれば入学できないし。そう言えばアールニゴウさんは外国籍ぽいけど、剣汰瓜さんは日本国籍ね。この学校にも何人か外国籍の生徒いるけど」
やっぱりか。何かやったなケンタウリ人。エリス、この学校に入学する時に何かやったのか?
「無礼者っ! 絵栗鼠は皇帝だぞっ! 何もやってないっ! エヘンッ! R-1号さんがやってくれたのだっ! 高貴な者は護衛用アンドロイドがみんなやってくれるのだっ! エヘンッ!」
エリスにそんな気の利いたこと出来るわけないもんな。パチンコ台を解析して大当たりを連発させたR-1号ならそういう能力持ってそうだな。となればケンタウリ人のエリスを日本国籍にしたように、R-2号の問題も何とか出来るんじゃないかな。
「アールニゴウさんは何か特殊技能持ってないの? こんないい筋肉してるのに?」
あ、ねこや先生がR-2号の胸板撫でながら聴いてる。
「聞いて驚け。R-2号さんは十万馬力で空を飛ぶのだっ! エヘンッ!」
わあっ、エリスッ! 話をややこしくするなっ!




