57 ねこや先生バーニングw
とにかくねこや先生の言うところのバックハグをするしかあるまい。気は進まないけど……
僕は痛がっているエリスに背後から近づくと首回りに両腕を回した。
うっ、柔らかい。エリスは僕の眼にはメタリックボディに見えるけど、生身の女の子なんだよなあ。ううっ、ドキドキしてきた。
「うっふっふ。いいわね。いいわね。そのまま自分の顎を絵栗鼠ちゃんの肩に乗せてみようか」
はあ。次の指示を出すねこや先生。それに従う僕。
「いいわね。いいわねえ。じゃあ今度はあたしがやってるみたいに体全体を絵栗鼠ちゃんの背中にこすりつけてみようか」
ええーっ、そっ、それはいくら何でも。
「オキムネーッ! 何をしているのだっ! あたしはほっぺたが痛いのだっ!」
あっ、そうだった。また、ねこや先生に乗せられちゃったよ。
◇◇◇
先生ーっ、エリス押さえてますから、治療してくださいー。
「ちっ、気づかれたか」
気づかれたかって確信犯ですか? 先生。
「しょうがないなあ。アールニゴウさん、続きは後のお楽しみでね」
えーっ、まだやるんですか? これ? それによく考えてみれば何も僕がエリスにバックハグしなくてもエリスの顔を固定すればいい話ですよね。
「ちっ、気づかれたか」
どこまで確信犯なんですか。先生。
◇◇◇
かくて僕は後ろからエリスの顔を両手で支え、ねこや先生が治療しやすいようにしたのである。これはこれで女の子の顔に手のひら全体で触れているわけだから、相当思春期真っ只中の僕の心には来るものがあるよ。
「はい。消毒のやり直し。滲みるよ。ちょっと我慢してね」
「いだ、いだだだ。痛いのだ。先生」
「はい。声を出さずに我慢。普通みんな自分ひとりで我慢するんだよ。彼氏に顔を支えてもらえるなんて他にいないぞ。この幸せ者」
担任の鵜鷺先生は、ねこや先生のことを物凄く変わっているけど、根は優しくて面倒見がいいって言ってた。確かに本腰入れて治療にいそしむねこや先生はしっかりしていた。
「はい。終わりっ! しばらく頬を新田くんにこすりつけるのは遠慮してね」
エリスの頬にガーゼを張り付けたねこや先生はそう言って治療を終えた。
「ええーっ。先生っ! それは困るのだっ! あたしは一刻も早くオキムネと『恋人』になって、オキムネの『金塊』を手に入れなければならないのだっ! そのためにはすりすりしなければいけないのだっ!」
「んまああああっ! かっわいいっ! 絵栗鼠ちゃん。かっわいいっ!」
ぴこぴこぴこぴこ
「こうなったらねえ。お姉ちゃん、もうほんっきで絵栗鼠ちゃんのラヴをバックアップしちゃうからねえ。覚悟しなさいっ! にゃふふふふ」
大張り切りのねこや先生。うわあああ、嫌な予感がしてきた。




