46 これもまたエリスの告白w
それでは行ってくるね。
「行ってくるのだ」
絵栗鼠はそう言い終わると同時に僕の右腕を取り、僕の右肩に頬をスリスリさせた。
「キャーッ! 何それっ? 何それっ? 何それっ?」
母さん、喜ぶまいことか。
「老谷のばあちゃんに教えてもらったのだ。これをやって『恋人』になってオキムネの『金塊』を手に入れるのだ」
そんな絵栗鼠の答えに母さんサムズアップ。
「ナイスッ! 老谷のばあちゃん。これは負けていられないっ! あたしも父さんとそれをやるのだっ!」
家の玄関で母さん、父さんの右腕をつかむと、その右肩に頬をスリスリ。
それを見た絵栗鼠も負けじと頬をスリスリ。
しかし、さすがは父さん。「足は遅くても手は早い」の二つ名は伊達ではない。老谷のじいちゃんと違って、微塵も照れることなく堂々としている。
いやっ、いやいや。そんなこと言ってる場合じゃなかった。これから学校へ行くために玄関にいるのだ。
決して「家族対抗スリスリ合戦」をやるためではない。
「そう言えばそうだったね。いってらっしゃい。スリスリ」
母さん、スリスリしたままお見送り。
「行ってくるのだ」
絵栗鼠、スリスリしたまま、玄関ドアのノブを回す。
◇◇◇
かくて僕は右腕に絵栗鼠がくっついたまま家を出た。
そして、
ドサッ
どこかでカバンが落ちる音がした。
これもまた予測通りなのだろう。振り向かなくても何が起こっているか分かり過ぎるくらい分かるのだが、振り向かないわけにはいかない。
はい。それで振り向きました。
はい。予測は的中しました。昨日の朝同様、驚くべきものを見たというサダヨシが立っていました。
すまん。僕にはそんな思惑はないのだ。しかし、結果論として「毎朝、衝撃的な光景を目の当たりにさせてしまっている」のは厳然たる事実である。
「オッ、オキムネッ! おまえってやつあ」
はい。まずはサダヨシ少年の主張を聞きましょう。衝撃的な光景を見せてしまったのは事実だし。
「まずは一番」
箇条書きですか?
「オキムネは絵栗鼠ちゃんに告白しないと宣言したのに彼女の方から告白された。ズルイッ、これはズルイッ!」
だから絵栗鼠は僕に告白はしてない……んだけど、この光景では説得力がないか。
「二番」
はいはい。
「入学式の次の日には腕組デート」
いえ、これは「デート」ではなくてね。
「そして三番っ! そのまた次の日には『同棲』!」
「同棲」って、うちには父さん母さんもいるし、絵栗鼠は僕の家に住んでるわけじゃないんだよ。
「オキムネ。さっきからあの男は何を興奮しているのだ?」
ああ、「あの男」じゃなくて、僕の昔からの腐れ縁のサダヨシね。僕と絵栗鼠が一緒に暮らしていると勘違いしているんだよ。
「サダヨシとやら、あたしとオキムネは一緒に暮らしてはいないのだ。あたしはオキムネの地球人の男がみんな持っているという『金塊』がほしいだけなのだ」




