24 普通の会話が普通に成立するなんてw
「さあっ、帰るよ。大体、あんた、マンション来てから麻雀やり過ぎ」
老谷のじいちゃんの首根っこ掴んで帰ろうとするばあちゃん。
あ、ちょっと待って。ばあちゃん。
「おや何かね。オキムネちゃん」
折り入って頼みたいことがあるんだ。元住んでた家を貸してほしいんだよ。
「え? オキムネちゃんの勉強部屋にでもするのかい?」
いやそうじゃなくてね。ここにいる絵栗鼠と二人の兄ちゃんに貸してほしいんだ。
「…… 何か深い事情がありそうだね」
老谷のばあちゃん。何だか僕、嬉しさのあまり涙が出てきてしまったよ。普通の会話が普通に成立するなんて、凄い久しぶりな気がする。
「ほらほら、泣かないの。事情を言ってみ」
うん。実はね。
「ぶはははははは」
突如、高らかに笑う老谷のじいちゃん。どっ、どうしたの?
「何も悩むことはないぞ。オキムネちゃんにばあさん。おいちゃんに任せれば全て解決!」
え? どうするの?
「そっちの外国人の兄ちゃん二人には元の家に住んでもらい、絵栗鼠ちゃんはおいちゃんの部屋で暮らせばいいのだっ!」
ドカッ
じいちゃん懲りないねえ。そんなこと言ったらばあちゃんに叩かれるの分かり切ってるじゃない。
◇◇◇
絵栗鼠は僕の学校の同級生なんだけど、高校のない遠隔地に住んでるので、こっちの高校に入ったんだ。でも、こっちのこと良く知らなくて、住むところが見つからなくて困ってるんだって
そんな僕の言葉にふむふむと頷いてくれる老谷のばあちゃん。ああ、普通って素晴らしい。
「それでオキムネちゃんは絵栗鼠ちゃんをあたしらが住んでた家に住まわせたいんだ?」
そう。知らない土地で苦労してるみたいだし、僕の隣の家に住んでもらえれば、僕も何かの役に立てるかもしれないし。
「ふーん」
そう言いながらばあちゃん、ニマニマ。へ?
「オキムネちゃんの紹介があるなら貸してもいいね。それにしてもオキムネちゃん。見る眼あるね」
え? 何のこと?
ここで声を潜めるばあちゃん。
「あの娘。絵栗鼠ちゃんだっけ。わざとああしているのか、僻地の出身で身づくろいをまだよく知らないのかは分からないよ。でも、地味に見えるけど、あの子、ちょっとしたきっかけで光るようになるよ。同じ女のあたしには分かる。何かどこかしら高貴な感じがするんだよね」
ぎっくう。何て鋭い勘してるんだ。ばあちゃん。そりゃあ絵栗鼠はあれでケンタウリ帝国の第五皇女だったってんだから、血筋だけは凄くいい。でも、それをパッと見ただけで見抜くとは、ばあちゃん、侮りがたし。




