191 もみくちゃ天国、いやもとい地獄を抜け出すことはできませんw
「まあまあ新田君。孔明先生を誘導して店内を一周すればいいから。バイトに入る前も下総屋の常連だったもんね」
犬咲店長。それはその通りなんですが。
「それでは参りましょう」
その掛け声とともに、犬咲店長と琴理さんが「Staff Only」の扉を開ける。
僕の後に孔明コスのR-1号が出てくると店内が少しずつざわめき始めた。
見ると一昨日より店内に人が随分多い。僕とエリスが下総屋に入った後についてきた人たちが、せっかく入店したのだからと店内を見て回っているみたいだ。
ざわめきながらも初めは静かだった展開。しかし、ゴングは鳴った。
「「「「「キャーッ!」」」」」
どこからともなく上がる黄色い悲鳴。
「えーっ、孔明先生?」
「すごーい。キャラ立ちしてる」
「イメージ合ってるかも」
「ムードあるー」
そこから先はまさに決壊。次々に孔明コスR-1号に迫る女性陣。僕まで巻き込まれてもみくちゃもみくちゃ。
しかし、巻き込まれとはいえ、女の人たちにもみくちゃにされるのは悪い気分でもないかも。
◇◇◇
「コラーッ! 何をやっておるかーっ! オキムネーッ!」
うわっ、何だ? エリス? そのコスは? どでかい王冠かぶって、首の周りにクジャクの羽みたいの巻いて、赤い服着て。
「わんわん店長が言うにはだな。『いんぐらんど』の女王エリス・ザ・ファーストの衣装だそうだ。あたしは『女王』ではなくて『皇帝』なのだが、名前がエリス・ザ・ファーストというのなら仕方ない」
それはエリス・ザ・ファーストじゃなくて、エリザベス・ザ・ファーストだよねとツッコむ気力もないと言うか。女の人たちにもみくちゃにされるのが楽しくてそれどころじゃないとか。
「喝―っ! オキムネ。このたわけ者がーっ。わんわん店長に言われてただろうがっ! R-1号さんをもみくちゃが守るはずが、一緒にもみくちゃにされてどうすんだっ?」
今回は珍しくエリスの言っている方が正論かもしれません。でも、僕はーこのたくさんの女の人たちを押しのけて、もみくちゃ天国、いやもとい地獄を抜け出すことはできません。
◇◇◇
「えーい。しょうがない参謀総長だ。はいはい。ちょっと道を開けてね。『皇帝』が通るよ」
女の人たちの人込みをかき分けるエリス。
「あら女王コスのあなた。孔明先生に触るのは順番よ。並んで」
「いやいやいや」
人込みの中で右手を振って否定するエリス。
「その孔明コスの兄ちゃんはあたしの護衛用アンドロイドだから存分に触ってよろしい。『皇帝』であるあたしが直々に許す。ただ、その隣にいる三国志の兵士コスの男。そいつは返してくれ」
「あ、この人? はい」
R-1号と僕を一緒にもみくちゃにしていた女性陣は、あっという間に僕をエリスのところに送り出した。わーん。つーかエリスの「護衛用アンドロイド」という言葉に誰もツッコまないのは何故だっ?
「ええい、オキムネ。まったくこの男はあたしに『金塊』をくれないくせに一丁前に色気づきおって」
「ちょっとー。絵栗鼠ちゃん。それだけじゃ駄目でしょ」




