163 厨二魂は最新技術を凌駕するw
バサッ
うわっ、前が見えない。何この布? って、あれ?
これよく見たら、のれんじゃん。ん? 何か文字が書かれているぞ。えーと。
「秘」「密」「基」「地」?
わー、何だ何だ? のれんに「秘密基地」と書かれているのか?
「オ・キ・ム・ネ~」
エリスが凄い顔して僕をにらんでいる。
「とうとう知ってしまったな。『秘密基地』の『秘密』を」
何? こののれんに何か「秘密」があるのか?
「そののれんを掛けると、ここはっ! ここはっ! 本当の『秘密基地』になってしまうのだっ!」
何と! 見たところ普通ののれんだが、4.367光年の距離を超えて、地球にやってくる! 二体のアンドロイドが空を飛び、火を噴き、競馬で一日で三千万円稼ぎ、一日で普通の平屋を「銀ピカの天体観測ドームもどき」に改造するケンタウリ星の科学力が作ったのれんかっ?
とも思うが、何しろエリスが言っていることだからなあ。しょうもないオチならともかく本当に家が変形合体でも始めた日にはたまらん。ここはスルーが吉と見た。
◇◇◇
バッ
そんな僕からのれんを奪い取ったのがいる。って、老谷のじいちゃん。どうするの? そののれん? それに腰痛は大丈夫なの?
「すまねえ。オキムネちゃん。『秘密基地』の『秘密』の詰まったのれんと聞けば、わしのっ! わしのっ! 厨二魂が黙ってはおられんじゃあっ!」
わあっ、やめてやめてっ! 腰は悪くするし、とんでもないことが起こるか、しょうもないことが起こるかのどっちかなんだから。
「オキムネちゃん」
わ、何ですか? 老谷のじいちゃん。妙に真剣な顔して。
「男なら危険を顧みず、腰が痛くなると分かっていても行動しなければならない時がある……しょうもないオチが待っていると分かっていても戦わなければならない時がある」
何をかっこいいぽいセリフに変換しているんですか? しょうもないオチが待っているって、自分で認めているし。
◇◇◇
サササッ
老谷のじいちゃん、腰痛持ちとは思えないスピードでのれんを持って玄関に向かう。
僕も老谷のばあちゃんもエリスもしばし呆然としていたけど、一番最初に我に返ったのは何とエリスだった。
「いかん。R-1号さん。老谷のじいちゃんを止めろっ!」
R-1号はケンタウリ星の最新技術の粋を集め、作られたアンドロイド。その速度からして老谷のじいちゃんを止めるなぞ容易なはずだ。しかしっ! その時ばかりは老谷のじいちゃんの厨二魂がそれを凌駕したのだ。
玄関に「秘密基地」ののれん。老谷のじいちゃんの手によって、見事掛けられたって、今更ながら家が変形合体とかしないでくれっ!




