13 オーウ。オキムネーw
絵栗鼠は凄い勢いで走り去ってしまったので、僕は早々に見失ってしまった。
うーん。嫌な予感は強烈にするが、絵栗鼠が何をするつもりなのかさっぱり分からないから、これはどうしようもない。
とりあえずいったん自分の家に帰ってから、絵栗鼠のいる老谷さんの家に行ってみることにしよう。
などと考えながら歩いていった僕の目に入ったのはざわざわとした人だかり。
わっ、嫌な予感的中か? 早くも絵栗鼠が何かしでかしたのか?
僕は大慌てで人だかりの方へ走った。
◇◇◇
ざわざわざわ
人だかりはどうやら自動販売機コーナーを囲んでいるようだ。
ちょっとごめんなさい。見せてもらっていいですか? 何が起こってるんです?
「何が起こってるって、見て。あれ」
うちの学校の制服を着た女の子の指差した先にいたのは……
ぶっ メタルヒーローズじゃないか。いや一体しかいないからメタルヒーローか。絵栗鼠の言うところのRー1号かR-2号かは分からないが。
どうやら自動販売機を破壊して、中の商品や現金を取ろうとしている訳ではないようだ。それをやられた日には、絵栗鼠が最も恐れる「おまわりさん案件」だ。でも、本当に何やってるんだろ?
「どうやらね。自動販売機のお釣りが出るところとその周りにお金が落ちてないか探してるみたいな感じなの」
うちの学校の女の子の言葉に僕は絶句。それもセコイとは言え「おまわりさん案件」だよね。老谷のじいちゃん、結構、ギャグマンガ好きだったからな。残して行ったマンガ読んで学習しやがったのか?
「全くあんなかっこいい人が何であんなことしてるんだろ?」
へ? メタルヒーローがかっこいい? そりゃあ特撮的にはかっこいいけど、女の子の言ってるニュアンスはちょっと違う感じだ。いわゆる普通の意味でかっこいいと言ってるようだ。ん? ん? ん? まさか?
僕は左眼をつぶってみた。あーあーあー、やっぱりー。
僕の眼にはメタルヒーローに見えたが他の人には長身ですらっとした金髪碧眼の美青年に見えてるんだっ! しかも、パリッとしたスーツ着用。
道理で。改めて見回して見るとメタルヒーローを取り囲んでいる人たちは女性ばかりだ。言っちゃなんだが、これはいい齢こいたおっさんがやっていたら、一発で「通報しました」だろう。みょ~にこぎれいでかっこいい兄ちゃんがやってるからどうしたもんか悩んでおるのですね。
そうこうしているうちに遂に意を決した一人の女子高生がメタルヒーローに近づき、声をかけた。
「あ、あの。何をしてるんですか? あ? 日本語分かります?」
その言葉にメタルヒーローはこちら側に振り向いた。そして、勇気ある女子高生の他に僕とも目が合った。
「オーウ。オキムネー」
ざわっ
わあ、ざわめきと注目が僕の方に集まった。




