109 「金塊」は発酵熟成されたものがエライのだw
しかし、母さん。父さんに襲いかかられたって、今のご時世、そういうのはデートDVとかになるんじゃあ?
「あーっ、大丈夫大丈夫。あたしにその気がない時は父さんの『金塊』蹴ってやったから」
「え? 『金塊』を蹴る?」
それまで夢中になって僕にのしかかっていたエリスが不意に母さんの方を向く。
「お母上。それはいけないのだ。『金塊』は貴重なものなのだ。蹴ってはいけないのだ」
エリスの言葉に母さんにやり。
「あらあら心配しているの? だーいじょぶよお。絵栗鼠ちゃん。あたしはオキムネの青臭い『金塊』なんかいらないから。あたしはねえ。もっと発酵が進んだ『金塊』の方がいんだよ。父さんのみたいな」
「何? お母上。地球の『金塊』は発酵するのか? それは危険だ。速やかに冷凍保管しなくてはならないぞ」
何だか凄い話になってきたぞ。母さん、もうそのくらいにしてやってください。エリス、安心しろ。「金塊」はあらゆる意味で発酵はしない。
「しかし、オキムネ。お母上はお父上の『金塊』は発酵しているといったぞ」
あーそれはだな。ものの例えと言うやつで…… あーもうメンドくさい。要は発酵するのは父さんの「金塊」だけなんだよ。
「むむむ。それではオキムネの『金塊』は発酵しないのか? 常温保存で大丈夫なのか?」
ああ、もう常温保存で全然だいじょう「ちょっとおオキムネ。それじゃ父さんの『金塊』がおかしいみたいじゃない。失礼な。オキムネだって、その『金塊』から生まれたんでしょうが」
「なにい、お母上。オキムネは『金塊』から生まれたのかっ? 川の上流から『金塊』がどんぶらこっこどんぶらこーと流れてきて、お母上が包丁で割ったらオキムネが生まれたのか?」
ああーもうこれじゃあ収拾がつかない。
◇◇◇
分かった。分かりました。母さん。父さんの「金塊」は発酵熟成された見事なもので、僕の「金塊」より立派です。そして、エリス。僕の「金塊」は発酵しないので常温保存でも大丈夫なのだ。
「やっと分かったか。オキムネが父さんの『金塊』を超えるのは五十年早い」
「オキムネの『金塊』は常温でも発酵しないのだな。ならいい」
ふいー。何とか収拾がついた。でも何か大事なことを忘れているような。
「あーっ、絵栗鼠ちゃんとオキムネ。早く朝ご飯を食べないと遅刻するよと言いに来たんだったあーっ!」
母さん。まさにその通り! これは急がねば。ほら、エリス行くぞ。
「いたた。腕を引っ張るなオキムネ」
「こりゃあ急がないといかんな。だいぶ時間が押している。絵栗鼠ちゃんとオキムネはとにかく食べられるものを食べて行って。アールイチゴウさんとアールニゴウさんはもうちょっとゆっくりでもいいんだよね?」
「オキムネはとっとと食え。あたしは女子高生だからトーストをくわえながら『ちこくちこく』と言いながら走って学校に行けばいいのだ」
ああもうエリス。黙って食え。




