身代わりは王子様 その9
ぱちっと目を開ける。体を起こし、窓の外を見る。月明かりに照らされた屋敷の外には、高い塀の向こう側に僕たちが通ってきた森が広がっている。風に吹かれた樹木が闇の色に塗り替えられている。
枕元に立てかけておいた虹の杖を手に取る。先端の『核』が黒く光る。
「やっぱりね」
僕は腰にランダルおじさんの剣を差す。どっちにしようかと迷ったけれど、ヘンリエッタさんから預かった細身の剣だと頼りない。
スノウはまだベッドの上で寝息を立てている。かわいいなあ。これだけでよし、がんばるぞって気持ちになるから、スノウはやっぱりすごい。
「おっと、忘れてた」
枕元のカツラを被り直す。今の僕は殿下の身代わりだからね。
「よっと」
ゆっくりと二階の部屋から飛び降りる。草の上に着地したため音は出なかった。
もう一度、『失せ物探し』を使う。二十は超えているだろう。森から出てきた気配が屋敷の周りに広がっている。
「やっぱりか」
黒幕が誰かはともかく、あれだけの手勢でおそってきて、誰も帰ってこないんだ。仲間たちが捕まえた奴らを助けに来るのは予想が付いていた。来るとしたらどうせみんなが寝静まった真夜中だろうってこともね。
『贈り物』を使い、ひそかに地下牢へ下りる入り口の前で待ち構える。案の定、少し経つと黒っぽい衣装を着た人たちが五人ほど、建物沿いに近づいてきた。顔も布で隠しているから正体はわからないけれど、さっきから身振り手振りで合図を送り合っている。いかにもプロの殺し屋って感じだ。
ところが、近くまで来たところで物陰にうずくまってそのままじっとしている。どうしたんだろう。見回りの人はさっき行ったばかりだ。忍び込むのなら今が絶好の機会のはずだ。鍵が開かないのかな。もしかして、仲間が鍵を取りに行っているのかな。
ああ、そうか。別動隊が動く瞬間を待っているのか。騒ぎを起こしたすきに、地下牢に忍び込むつもりなんだな。
とりあえず、全員おとなしくしてもらうことにした。
全員を藪の中に押し込むと、もう一度『失せ物探し』を使う。大変だ。どうやら連中の目的は仲間の救出だけではない。
殿下の暗殺だ。
こうしちゃいられない。
ええと、残りは十六人か。半分が殿下のいる部屋の方へ向かっている。
まずいな。僕は殿下の部屋に行ったことがないから直接、『瞬間移動』で行くことは出来ない。それに残りの連中もばらばらに動いている。どちらかに行っている間に別の人たちがおそわれるかも知れない。
夜中だから短距離の『瞬間移動』も使いづらい。
では、どうするか。
答えは簡単だ。向こうから僕のところに来てもらえばいい。
この屋敷は四角の一片だけが取れたような形をしている。その中央には中庭になっていて、訓練とか兵隊が集まる場所になっているらしい。
僕は中庭に移動すると、虹の杖を掲げる。落雷のような音とともに青白い稲光が空の上へと駆け上がっていく。最大限に放った『麻痺』の光が収まると僕は、カツラのずれを直し、大きく息を吸い込んだ。
「聞け、賊ども!」
屋敷どころか村中に聞こえるような大声でわめいた。
「我が名は、スチュワート! 国王テオボルト陛下の子にしてこの国の王子である!」
殿下の声音を使って叫ぶ。こんな感じでいいのかな。偉い人の名乗り方って物語で読んだくらいだからよくわからないんだよね。
「お前たちの仲間は捕まえたぞ。もはや貴様らに望みはない。おとなしく観念して縛につけ! 今ならば寛容と慈悲を以て遇すると約束しよう」
連中の目的が殿下なら僕の仕事を果たすまでだ。僕は殿下の身代わりだからね。
だが、と今度は剣を掲げて屋敷の中を見渡す。
「逆らうとあれば、容赦はしない。一人残らずワタシみずから切り捨ててくれる!」
しまった。殿下は自分のことを「俺」って呼んでいたっけ。
偽者だとばれちゃったかなあ、と自分のへまを後悔しかけたとき、窓の外から黒い覆面姿の連中が次々と飛び降りてくるのが見えた。
よかった。無事にひっかかってくれたよ。
「抵抗するか。悪漢ども。いいだろう。王家の剣がいかなるものかその身を以て確かめるがいい!」
僕は杖を置くと、迫り来る黒装束たちに向かって剣を握り直した。
僕の真正面から黒装束が三人、ほぼ同時に飛びかかってきた。いずれも短剣を握っている。刃先が月明かりに照らされて、緑色のしずくのようなきらめきを放っている。きっと毒が塗ってあるのだろう。かすり傷でも付けられたら命取りだ。
先頭の男は短剣を腰の辺りに構え、先端を向けたまま体ごとぶつかってくる。僕は剣を構え直し、先頭の黒装束の短剣を下からすくい上げる。根元からぽっきりと切り落とされた刃が宙を舞う。続けて放った回し蹴りが黒い覆面の上からぶち当たる。がくんと、崩れ落ちる先頭の奴を押しのけるように二人目、三人目の黒装束が飛びかかってきた。
僕は横っ飛びで二人の体当たりをかわすと、振り返りざまに後ろから斬りかかってきた四人目の黒装束を剣の腹で叩き付ける。ぐらり、と糸の切れた操り人形のように横に吹き飛んでいく。
着地しながら今度は距離を取るべく後ろに飛び跳ねる。また中庭の方に向かってくるのが見えたからだ。いいぞいいぞ。固まってくれればそれだけ好都合だ。
中庭に十人ほど集まったのを確かめると、今度は前に出る。ぴょんとウサギのように飛び跳ねると、黒装束の集まっているところに飛び込む。着地するより早く、剣を振り回すと、剣の軌道にいた黒装束たちが次々と吹き飛んでいく。
やっぱりランダルおじさんの剣にして正解だね。
普通の剣だとこうはいかない。
「なんだ、こいつは?」
「強い、本当に王子なのか」
ほんの少しの間に仲間が五人もやられて、明らかに浮き足立っている。
そこへすかさず斬りかかった。
「もちろんだよ」
みんなにはナイショだけどね。
振りかざした剣で二人の黒装束をなぎ払う。剣光が閃く。こもった悲鳴を上げながら黒い影が地面に倒れ伏す。
「リ……殿下! 今お助けします。しばしお待ちを!」
いつの間にかコリンズ君が二階の窓から見下ろしていた。僕たちが泊まっていた部屋とは別の場所にいるし、手にはランタンを持っている。きっと夜中、僕が急に姿を消したから探していたのだろう。
二階の別の部屋では、ご学友たちが寝ぼけ眼だったり、驚きに満ちた目で僕の戦いを見物していた。
「参ったな」
戦いに参加されても困る。でもこのまま見物されていても僕が身代わりだってばれてしまう。おとなしく隠れていてくれるといいんだけどなあ。
「おお、すごいぞ、リオ」
殿下が三階の窓から顔を出していた。ほめてくれるのは有り難いんだけど、時と場合を考えて欲しい。
「いけません、危のうございます」
ヘンリエッタさんがあわてて下がらせるけれど、多分逆効果だ。
「いたぞ、スチュワートだ」
「やはり、こいつは偽者か」
あーあ、ばれちゃったよ。
「まあいいや」
敵は十分引きつけたんだし、もういい頃合いだろう。
僕は虹の杖を拾い上げる。『核』から放たれた『麻痺』の青白い稲光が中庭を野良犬のように暴れ狂う。耳をつんざくような音を放ちながら一瞬で中庭にいた黒装束の体を駆け抜けていく。『麻痺』を解除すると、ばたり、ばたりと黒装束たちが倒れていった。
「これで全部かな。ひい、ふう……あれ?」
中庭に倒れているのは十三人。さっき倒したのも含めると十八人だ。でも屋敷に来たのは二十一人のはずだ。あと三人はどこへ行った?
「まずい」
イヤな予感が駆け抜ける。
僕が見上げると同時にヘンリエッタさんの悲鳴が聞こえた。
僕は大きな声で呼びかける。
「コリンズ君、上にランタンを投げて!」
「え、あの」
「いいから早く、窓の外! 思い切りぶん投げて!」
訳がわからないって顔をしながらもコリンズ君は窓を全開にして、身を乗り出すとランタンを真上に放り投げた。
オレンジ色の暖かい光がくるくると宙を舞いながら空へと登っていく。あまり力の乗り切らない体勢だったせいか、ランタンはすぐに勢いを失い、殿下の部屋の外で静止する。わずかな光ではあったけれど、窓際に追い詰められた殿下とヘンリエッタさん、そして短剣を握った黒装束の男を照らし出していた。
「『瞬間移動』!」
次の瞬間、僕は殿下の部屋の中にいた。短距離の『瞬間移動』は飛ぶための場所が見えないと移動できないからね。
「なっ……」
三つの声が重なる。僕が急に現れたものだから黒装束だけでなく、殿下やヘンリエッタさんまでびっくりしてしまったようだ。
窓の外でランタンの割れる音がした。
「愚かな賊め」
僕は勝ち誇った顔を作りながら黒装束に剣を突きつける。姿形はほかの奴と同じだけれど、背丈も胴回りも一回り大きい。覆面の奥から覗く目尻にはしわもある。けっこう年配のようだ。こいつがリーダーかな。
「俺と身代わりの区別もつかぬとは、どうやらその目は節穴のようだな」
「区別ならつく」
低い声で返事をしながら黒装束は逆手に持っていた短剣を順手に構え直す。
「お前のような王子などいるものか!」
ひゅんと空気を裂いて短剣が飛んでいく。狙いは僕の後ろにいる殿下だ。くるくると回りながら僕の左脇を駆け抜けていく。僕はとっさに振り返りながら腕を伸ばし、短剣の柄の辺りを指先二本で捕まえる。
黒覆面の奥から明らかな動揺が見て取れた。
「そんなことはない」
短剣を窓の外に放り投げながら僕は肩をすくめる。
「『スティーブ王子の七つの試練』のスティーブ王子や、『聖剣とミツバチ姫』のベン王子を見てみろ。俺よりすごい剣士ばかりだぞ」
剣一本で海を割ったり、竜巻を切り裂いたり、空翔る星をぶった切ったりするのだ。僕どころかジェフおじさんだって足下にも及ばないだろう。
「くそっ」
あきらめたのか、黒装束は舌打ちをしながらバックステップで距離を取る。扉の外には同じような格好のが残り二人いる。
「逃がすものか」
僕は再び『麻痺』の雷光を放った。音だけは派手だったものの、寸前で扉の外に逃げられてしまった。廊下の壁だけが小さく黒焦げている。
廊下の外へ出ると、三人は廊下の窓から身を乗り出し、屋敷の外へと飛び出していくところだった。僕は走り出した。殿下の身の安全のためにもここで捕まえておきたい。
先の二人が飛び降りた。最後にいた黒装束が腰から短剣を引き抜いて、僕の前に立ちふさがった。さっきのリーダーっぽいやつだ。どうやら仲間のためにオトリになるつもりのようだ。その心づもりは立派だけれど、僕としては逃げられても困る。
「『麻痺』!」
動きを封じるべく、青白い雷光を放つ。すると黒装束はごろんと自分から寝転がった。大きな体を床に伏せると、その頭上を『麻痺』の稲光が駆け抜けていった。僕が魔法を放つタイミングを読んでいたのだろう。黒装束は短剣を構え、這うようにして僕に向かってくる。狙いは僕の右足か。おそらくこいつの剣にも毒が塗っているはずだ。とにかく体のどこかに傷を付ければ勝機はある、と踏んだのだろう。
僕はわずかに足を上げ、タイミングを見計らいながら短剣を握る手首を上から踏みつける。どん、と重たい音が床に響く。短剣が床に滑り落ちる。
「くっ……」
黒装束が手首を押さえながら、ネズミのように後ずさる。覆面の向こう側で、いまいましそうに顔をしかめる気配がした。
ケガをしていない方の手で腰の後ろに手を回すと、今度は小さな笛を取り出した。指先くらいの長さしかない。銀色で細身の笛だ。かわいらしいなあ。
黒装束はそいつを口にくわえるとピィピィピィー、と高い音をならした。
「もしかして、今のは仲間への合図というやつか」
返事はなかった。そりゃそうか。
「言っておく。忍び込んだ二十一人のうち十八人は捕まえた。二人は逃げた。残りはあな……貴様だけだ」
「……」
やはり返事はなかった。笛を握りしめたまま僕をにらみつけている。その中にほんの一瞬、あざけりというか、ざまあみろって感情が宿ったのを僕は見逃さなかった。
「そこは危ないです。廊下の外へ」
僕は部屋の中にいた殿下の腕を引っ張り、外へ出す。
「どうした、おい」
「殿下、ここは危険ですから部屋の中へ」
ヘンリエッタさんが反対の腕を抱えるようにして殿下を引き留める。声もどことなく震えているようだ。
「いえ、部屋の中の方が危険です。おそらく」
最後まで言い終えるより早く、殿下の部屋の窓が派手に砕ける。破片をまき散らしながら黒装束が飛び込んで来た。勢い余ったか、破片を身に受けながらころころと床に転がる。それでも素早く立ち上がると、短剣を構え、殿下へと向かってくる。
「危ない、殿下!」
ヘンリエッタさんが両腕をぱっと広げて黒装束の前に立ちはだかった。端正な顔を青ざめさせ、歯を食いしばりながらぎゅっとおなかに力を入れている。盾になるつもりか。
「危ないのはあなたの方です」
僕はヘンリエッタさんの横から虹の杖を向けると、『核』を光らせる。
「『大盾』!」
ヘンリエッタさんの前に光の壁が現れる。
黒装束の口からおどろきの声が漏れる。
鈍い音を立てて黒装束が『大盾』にぶつかった。二三歩、後ろによろめくと仰向けに倒れ込んでしまった。意識はあるようだけれど、うめき声を上げるばかりで起き上がる気配がない。渾身の力で突っ込んできた分、自分へのダメージもすごかったのだろう。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ」どこか呆然とした様子でヘンリエッタさんがうなずいた。僕は彼女の手を取り、ゆっくりと部屋から廊下へ連れ出す。
「おお、やったな」殿下が興奮した面持ちで拳を握る。
「いえ、まだです」
僕は虹の杖を構え直しながら気配を察知する。僕の目の前にはいまだ黒装束が手を押さえながらうずくまっている。その反対側、僕らの後ろ側から別の黒装束が音もなく忍び寄ってきていた。
「失礼します」
僕とヘンリエッタさんと殿下を両腕に抱えると虹の杖を光らせる。
次の瞬間、僕たちは廊下の遙か先、腕を押さえた黒装束の背後にいた。
「え、これは?」
困惑している様子のお二人から距離を取る。危ないからね。
仕掛けは簡単。『瞬間移動』で殿下たちごと移動してきただけの話だ。
「失礼しますね」
僕は駆け出すと、目の前の黒装束めがけて虹の杖を掲げる。
「『麻痺』!」
杖から放たれた電撃が廊下一杯に広がりながら、黒装束の全身を駆け抜けていく。悲鳴が上がった。
放電が収まると、廊下には一人の黒装束が倒れていた。立ち位置からして、さっき後ろからおそいかかってきた奴だろう。
「あれ?」
僕は虹の杖を頭上で払った。一瞬遅れて杖の先に固い物がぶつかる手応えを感じた。弾き飛ばしたナイフが床に落ちる。
どさり、と目の前に黒い固まりが落ちてきた。がたいのいい黒装束が荒い息をつきながらうずくまっている。どうやら『麻痺』の電撃を放った瞬間に、天井にへばりついて逃れたらしい。
「あきらめませんか? 殿下の暗殺は失敗したんですよ」
身代わりの芝居も放り投げて僕は言った。さっきからスチュワート王子を殿下殿下と呼んでいるから、もうばれているだろう。惜しいところまで行ったと思うんだけど。
「そうはいくものか」
黒装束が腰の後ろに手を回すと、細いロープのようなものが出てきた。なんでも出てくるなあ。まるで話に聞く手品だ。
「今度はなんですか? 僕としてはそいつが花束に変わると拍手喝采ってところなんですが」
「ああ、咲かせてやるよ」
一歩、黒装束が距離を取る。
「血の花で良かったらな!」
黒装束の腕が伸びる。同時にひゅん、と空気を切り裂く音がした。刃物とは違う。もっと長い。槍か?
反射的にしゃがみこむと、頭の上を黒く細長い皮が通り過ぎて廊下の壁を叩いた。パアン、と乾いた音が弾ける。
「ああ、なるほど。ムチですか」
話には聞いていたけれど、実際に武器として使う人を見るのははじめてだ。
「貴様だけは絶対に逃さん」
黒装束の目が憎々しげに燃えている。仲間を助けに来たと思ったらほぼ全滅させられたのだ。腹も立つだろう。
手首を返し、ムチの先っぽを床にたたきつける。
「僕は馬や牛じゃありませんよ」
「同じ事だ!」
わめきながら腕を振るう。笛のような音を立てながら黒いムチが飛んでくる。剣と違って軌道が不規則なので読みにくい。その上、夜中でムチも黒いから余計に見づらい。おまけに狙いも正確だ。そのせいで、寝転がったり、大きく飛び跳ねたりしなくてはならなかった。僕のいた場所を一瞬遅れて面白いようにムチがひっぱたいていく。廊下に敷いてあるじゅうたんがちぎれて、舞い散る。
「面白い手品ですね」
「これでもか」
避け続けていると不意にムチの軌道が変わる。僕の顔の側を通り過ぎようとしていたムチがくるりと向きを変えて僕の目の前に飛んでくる。とっさに虹の杖を掲げると、黒い皮がまるで生き物のように絡みついた。あっという間に『核』のあたりをぐるぐる巻きにされてしまった。
「捕まえたぞ」
黒装束が勝ち誇った声をあげる。
「言っておくがそいつは特別製だ。そこいらのなまくらでは切れはしない」
ぐい、と虹の杖を引っ張ろうとする。
「そりゃいいことを聞いた」
僕が片手でランダルおじさんの剣を振るうと、ムチは真っ二つに切れた。ぽとり、と切り落とした切り口がまるで蛇のように床を這う。
「僕の剣でも切れないって言われたらどうしようかと思ったよ」
アダマンタイト製のがんじょうがとりえの剣だけれど、切れ味だってランダルおじさんのお墨付きだ。
棒立ちになる黒装束を見逃すほど、今の僕は甘ちゃんじゃない。
一足飛びで距離を縮める。寸前で剣の向きを変えて、がつん、と剣の柄で四角いあごをぶん殴った。重い手応えが柄を通して伝わる。黒装束は後ろに倒れていき、そのまま仰向けに寝転がった。覗き込むと、完全に白目をむいていた。
「出たのは目から火花、でしたね」
ポンポンと両手を合わせる。手袋を付けているからいい音は出ないけれど、あんまりキレイでもなかったので拍手はこれくらいでいいだろう。
お読みいただきありがとうございました。
次回は2/6(火)午前7時頃に更新の予定です。




