祖父について
祖父について
九藤の父方のおじいちゃんは、孫にとっても甘い人で、九藤なんかにもそれはもう、甘々だったそうな。
だったそうな、と言うのは父から聞いた話ではそういうことらしい、という意味です。
九藤本人には、甘やかされている自覚はそんなにありませんでした。享受してる時には、そんなもんです。あとで振り返って、どれだけ貴重な時間と人だったのかがわかるのです。
確かに、厳しく怒られたりはしませんでした。一度も。
遠方に住むおじいちゃん、おばあちゃんの家で、怒られるようなこともしなかったのですけれど。
エッセイを読んで来られた方には疑惑を持たれそうですが、子供の九藤は割と大人しい、お利口さんだったんですよ?
有名な橋の近くに住むおじいちゃんと、手をつないで橋のたもとの砂利に広がる露店を散歩したりもしました。
おじいちゃんは、九藤の記憶にある限りは、渋い着流しをいつも着て、かっこよかった!
雨の日に散歩していると、鳩と鳩の餌売りさんに出くわしました。
九藤はおじいちゃんにお願いして餌を手に入れ、野生の人馴れしていない鳩さんに、手の平の上に載せた餌をそお~っと差し出しました。左手には傘を差して、怖く見られないようにしゃがみました。
数分、経過。鳩さん、やって来ません。
おじいちゃんには諦めるよう、言われました。
ですが変なところで頑固な九藤は動きませんでした。
更に数分後、鳩さんが、やっと九藤の手の平から餌をついばんでくれた。
九藤、喜びの絶頂!おじいちゃんを得意満面に振り向くと、おじいちゃんは笑っていました。
やれやれ、って感じに。
今でも、思い出すと胸がほんわかあたたかくなる、幸福な思い出です。
ある日には露店で、九藤が欲しがった、ふわふわのもこもこのキーホルダーを買ってくれました。
やっぱり笑いながら、楽しそうに。
しかし、あとで父には仰天されました。そのころの九藤には理由が理解出来なかったのですが。
そのキーホルダー、千二百円したのです。
小学校低学年の子供に、千二百円のキーホルダーを、気軽に買い与える。
父には考えられない、祖父の行動だったそうです。
おじいちゃんはもう亡くなってしまったけれど、そのキーホルダーは今も大事に引き出しに仕舞ってあります。
無条件で愛され甘やかされた、幸福な子供時代の思い出です。




