第30話 美味いじゃねえか!(4)
翌日、サキは大きな包みを持って休憩室へとやってきた。
「ラルさん、また作り過ぎちゃって」
そう言ってサキが包みを開く。そこにはお重が三つ重なっていた。
おい、その量は作り過ぎたとかのレベルを超えているだろ。
私も周囲の女性陣も苦笑いだ。
「ありがとうございます」
「いいえ。皆で食べてください」
サキはそう返すと、用意していた箸で大皿におかずを並べていく。からあげ、玉子焼き、サラダ……色とりどりのおかずがそこにはあった。
「さあ、マルスちゃんたちも食べて」
さらに大皿に載りきらなかった分を、小皿に乗せ私たちのテーブルへと運んでくる。
「いただきます」
緑はそれを遠慮なく受け取ると、私たちの前に置いた。
「得しちゃいました」
「ああ、そうだな。悪いなサキ」
なんで私のラルを取ろうとしているやつに、お礼を言わないといけないんだ。
ん? 私のラルでいいんだよな……。不安になってきた。
「サキさん、すみません」
そう男性陣に次々に声をかけられるサキ。
「いいの。さあ、食べて」
サキは皆に笑みを返す。そして、玉子焼きを口に運んだラルに話しかけた。
「どうですか?」
「美味いですよ」
「よかったあ」
なんだそれは! 完全に彼女気どりじゃないか!
私はその様子を見ながら、彼女が寄こしたからあげを一つ頬張った。
「ちくしょう、本当に美味いじゃねえか」
「そうですよね。サキさん、料理上手ですよね」
緑はそう言い返すと、玉子焼きにかぶりつく。
お前の小さな体のどこに、その量が入るんだ。私はそう思いながらも、サキとラルの様子をただ見ているしかなかった。




