第29話 美味いじゃねえか!(3)
「このご飯、俺もらっていいですか?」
当然、サキのお弁当にはおかずの他にご飯もある。男性陣で一番歳の若いラックルがそれに目をつけた。
「え、ええ。いいですよ」
サキは戸惑いながらも笑顔でそう返した。もうやけくそ気味なのだろう。
彼女は皆が食べる様子をじっと笑顔で見守っていた。
「先輩、食べないんですか?」
「ああ」
サキの弁当攻撃に気をとられ、私は昼食をとるのを忘れていた。
私の昼食は工場の近くにあるスーパー、そこで売っている焼きたてパンをいつも買ってきている。その中でも、チーズが入っているやつが私のお気に入りだ。
「いつもそれで飽きないんですか?」
「ああ、飽きないな」
私は一気にかぶりつき、引きちぎる。この食べ方が美味い、手でちぎるとかは邪道だ。
「しかし、サキさんもよく笑顔でいられますね」
「ああ、そうだな」
あれはあれで、何か良からぬことを考えていそうな気がする。そういう奴だ。
私はそう思いながら、食後用として買ってきたヨーグルトを食べたのだった。
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