第28話 美味いじゃねえか!(2)
休憩室では女性陣はいつもの定位置で食事をしている。ライラとベルたちのグループは隣の和室を使っていた。
「先輩、サキさん可哀そうです」
向かいに座る緑は、私の気持ちも知らずにそんなことを言ってのける。
緑はサキがラルに好意をもっていることはわかっても、私のことはわからないのか。
そんなことを思うが、自分から言うのは恥ずかしいので黙っておくことにした。
「ああ、そうだな」
「そうですよね」
私の言葉に緑は少し怒ったように返事をすると、目の前に弁当を広げる。
彼女の小さくて可愛いピンクのお弁当箱の隣には、どんぶりほどのアイスのカップが置いてあった。
手のひらサイズのアイスかと思っていたが、こんな大きさだったとは……どうりで二千三百円もするはずだ。
「じゃ、先輩。いただきますね」
「あ、ああ」
彼女はそういうと、そのアイスをガンガン胃袋に押し込んでいく。
どうみてもお弁当よりアイスのほうが量が多くないか?
そう思うが、満面の笑みで美味しそうに食べる彼女を見て、私は何も言えなかった。
「あー、今月はもう一個食べられる。幸せ」
そう言って食べる彼女を見て、私は一時の満足感を得る。出費は痛いが買ってやったかいがあったというものだ。




