これより!真婚凄克(しんこんせいかつ)を開始するッッ!!
私は目を疑った、私の心の臓を貫き、私を女に堕とした人間の男が、黒髪の姫君らしき女性に顔面から馬乗りにされて、その刹那に転がったかと思えば、そのニーハイソックスとガーターベルトに包まれた太ももに絞め落とされた。確か、三角絞めとかいう技だったか。
一瞬の出来事に私は、思わず他の皆に魔族とバレようが構わないと、魔剣を召喚し、戦闘態勢たる装備に身を包んだ。
「リデッッ!」
そして、黒髪の姫君に振り下ろした。しかし、それは届かず、刃の横を蹴られ軌道をずらされ、地面にめり込んだ。
「あらあら、野蛮ね……貴女達も闇騎士様のお嫁候補かしら?」
姫君は傍にリデを抱え込む、軽々と、大人一人をだ。その身長は私達よりも少しばかり小さい。しかして、その肉体はしなやかかつ無駄が無いのがドレス越しにも分かった。
「貴女が……第四皇女様の、マリュー様でしょうか?」
「そちらの長耳さんは礼儀がしっかりしてるわね、そうよ、私がアルシャの第四皇女マリュー……まぁ、もう皇女は肩書きだけの厄介払いだけどね?」
やはりそうだったか、私はその気配と気迫に冷や汗をかいた。魔界でリデと対峙した時を思い出す、それぐらい緊張している自分が居るのだ、
「けど私は認めません!この人が旅路に幾人抱いたかも知っていますが、私は貴女達を認めない!」
マリューは私達向けて指差してそう言い放つ。
「闇騎士リデの妻たる人間はただ一人、この私マリューよ!そして、彼の種を得て私は最強の子を産む宿命を持っているの!」
話が一気に飛躍する!最強の子!?全く訳がわからないと私は話に割って入った。
「何さ皇女様、突然ね……私たちのリデへの恋慕は無視って事かしら?」
剣を突きつける私に、エニーとエンディも手をかざす。
「皇女様だろうと、私たちにとっては馬の骨よ」
「リデを返しなさい、この暴力皇女」
不敬罪構いなし、自分達の愛する男性を締め落とす輩を嫁に認めれるか、私こそがリデの妻になると、ルーナも皆を見て杖を構えた。
しかしこのマリューなる皇女、自信満々に私たちを一瞥して宣ったのだ。
「ふふ、皇女相手にその口振りは最高ね、いいわ、城に来なさい!私とリデを掛けて勝負しましょう!アルシャの女性達が花婿を取り合う昔からの決まり!真婚凄克でね!!」
「「「「真婚凄克!?」」」」
マリューの提案に、私たちは目を丸くした。
「ちょっと、ルーナ、何か知ってる?」
私はその単語に聞き覚えが無いため、ルーナに尋ねた。
「わたしも存じ上げなくて……エニーさんは?」
「私も知らないわ、お姉ちゃんは?」
ルーナも、エニーも知らないと来て、エンディが尋ねられた。そして……。
「その、昔スァーギタさんから聞いた事が……」
「「「え、知ってるの?」」」
まさか知っていたとは思わず、私たちはエンディに確認した。
真婚凄克とはッッ!!
その昔、アルシャでは男女の比率が2:8となってしまった時代があった。女性達は残りの男を夫にする為、男達の元に連日押しかけては求愛、求婚を行っていた。
アルシャでは一夫多妻は認めておらず、一夫一妻が法律で決められていた。その為、男を求めて女達の血で血を洗う凄惨な戦いが繰り広げられていたと言う。ある時は撲殺!ある時は謀殺!ある時は絞殺!またある時は毒殺!女同士、血で血を洗う抗争が行われていたという!
そこで、時のアルシャ国皇帝はある御触れを出した。それは、真なる花嫁を取り決める際には、花婿の前で、公平なる規律の下、花嫁を取り決める為の戦いをするという決まりである。
それが『真婚凄克』という、前時代の花嫁を決める方法であった!!
しかし、その御触れにより人口減少が著しくなり、結局アルシャは真婚凄克を取りやめ、一夫多妻制を認める事になったと言う。
なお、これによりアルシャの女性はその血統から中々に強い魔法使いや女戦士が出自したりしているらしいが、定かでは無い。
「と、聞いたわ」
「マジで!?アルシャってそんな修羅みたいな時代があったの!!」
エンディの話がにわかに信じられないと、私は驚いた。
「あるわよ、ちゃんと歴史書にも刻まれているわ、あ、これ真婚凄克のルールも書いてるからね」
マリューが態々古びた本を開いて渡して来た、変に律儀ねと私は開かれた部分を読む事にした。
・真婚凄克法
1つ、真婚凄克を行う際は、花婿を立会人として、四角の武闘場を用意する事。
1つ、目つき、噛みつき、股間への強打、武器の使用を禁止する。また、魔法の行使は可能だが、それにより相手方の命を奪う行為も禁止する。
1つ、相手を貶めす、罵倒するいかなる発言を禁止する。
1つ、花嫁達は、真婚凄克用の花嫁衣装を着なければならない。
1つ、決着は気絶、降参、もしくは相手花嫁衣装を脱がす事で決着とする。
「えーと……つまり、私たちに」
「キャットファイトしろと」
「言う事ですか?」
「キャットファイトじゃないわ!真婚凄克!これはちゃんとした花嫁を決める儀式なのよ!」
私とエニー、エンディ姉妹は理解して、キャットファイトを挑まれたのかと顔を怪訝に歪めた。
キャットファイトとは、酒場やらそんな店で、女の子達がくんずほぐれつ下着姿で戦う事、又は女の子同士の喧嘩を意味する言葉である。
「あの、キャットファイトってなんですか?」
「ルーナちゃんは知らなくていいわよ……」
あんもー、エルフって純粋なんだから、私はルーナの頭を撫でて知らなくていいと優しく諭すのだった。




