無職2人、準備する。
「え?何で?」
突如、女魔剣士のヴァルスが、ついて行くと言い出したので、リデは振り返り尋ねた。
「理由?無職だし……魔界に仕事も無いし、人間に紛れて仕事探そうかなって」
「あー……えー……」
「駄目?」
まぁ、人間に紛れて暮らす魔族が居るのは確かだったりする。ひっそりと暮らしていて、ふとすれ違い、あぁこの人魔族だなってわかる事もたまにある。
そんな魔族は、人々に害を及ぼさないが……仮にも元魔王配下が、紛れて悪事を働かないなんて思えないわけで。
「悪さ、しない?」
「しないし、してないわよ私……精々来た輩を倒して来ただけなんだから」
それに、とヴァルスは足を組み替え僕を見つめた。
「キミなら私が悪さしても、殺せるでしょう?」
そう言われて僕は……しばらく黙って頷いた。確かに、彼女を殺す事はできる。こっちも無事じゃ済まないけど。
勇者ジン達となら勝ち筋は幾らでもある、自分1人なら……腕片方持ってかれるだろうなと思いながら、僕は腕一本でこいつが悪さしたら止めれるなら安いかと天秤が傾いた。
「じゃー、いいよ」
「え?いいの?」
そして、断られると思ったヴァルスも、思わず聞き返した。
「仕事見つけたらちゃんと紛れるんだよ?」
「決まりね」
無論仕事が見つかるまでと条件は付けた。
こうして……僕は故郷に帰る傍ら、魔王配下の再就職先を探しながら監視する事になった。前途多難である。
さて、リスティアより今からひたすら北上して帰るわけだが……新たに荷物やら装備やら整える必要がある。何せ路銀はあるが、装備は鉄の剣、そして治療薬数本だ。
次の街まで馬車を頼んでから装備を整えてもいいが……何があるか分からないのが旅路だ。野盗やモンスターの襲撃にも備えねばなるまい、何せここは魔界最前線の町でもある。
卸されている品々も高額ながら見合ったものが置かれている。しかし、路銀だけでは足らない。
如何するかと考えながら、僕は防具屋の、革製装備品を眺めていた。
「キミ、私と戦った時も勇者に比べて軽装だったよね、鎧も無しによくまぁ向かって来たね」
「逆に動けなくなるから不要だよ、大概はこれで十分」
ヴァルスが、3日前の死闘を振り返り、その時も軽装だった事を指摘すれば、僕は理由を話した。そして……腰元の鉄の剣の鞘を左手人差し指で突く。
「私を刺したのもこれなのよね、馬乗りになって、力強く、何度も何度も」
クスクス笑いながらヴァルスが、谷間に人差し指を立てて、挿したり抜いたりした。他の客がひそつきだして、僕は眉間に皺を寄せた。
「1回だけだから、何度も刺してないから」
そんなシリアルキラーじみた真似はしていないと否定する。ただ……本当に刺し貫いたのにこの女魔剣士は生きていたのだ。
もし、また魔族と対峙する時は、何度も貫くべきなのだろう。いや、そもそも魔族と対峙する事は無いのかもしれないけど。
変な事で悩みそうだ、とりあえず目の前にあった革製のサイドパックを持ってみて、腰元にあてがってみる。別れで渡されたベルトに取り付ければいい感じかもしれないなと、これを購入する事にした。
「で、ヴァルスは何か買うの?」
さて、ヴァルスは何か必要なものはあるか尋ねる。しかしヴァルスはキョトンとしてこちらを見た。
「え、買ってくれるの?」
「いや、何たかろうとしてるわけ?」
「ケチだなぁ、元勇者パーティの癖に」
「お金無いの?」
「あるわよ?」
「なら自分で買って、僕は帰りの路銀しか渡されてないから」
集るつもりでいたらしい、むぅ、と頬を膨らませたが知った事か。そもそも3日前殺し合った相手、慈悲だとか馴れ合いもする気は無い、ただ……職を探す傍らついてくるだけだ。
防具屋から出て行くヴァルス、もう着いていく気も無くなったか、なら別に構わないけどと、僕はサイドパックをカウンターに置き、代金を支払った。
選別に貰った治癒薬の瓶を取り付けれるベルトに、サイドパックを通し、ズボンに巻きつける右にサイドパック、左に鉄の剣、瓶はサイドパックに移し替えた。
とりあえずはこれで良し、あとはリュックや食糧かなと、防具屋を出て行けば……。
「あら、早いわね」
ヴァルスが居た。
「いや、何してんの?」
ただし、ビキニアーマーで。
3日前の戦いの時に着ていた、肩当てに胸当て、そしてレギンス。さっきまで着ていた開襟シャツにチノパンは消え去り、機動力重視のビキニアーマーで待っていたのだ。




