踊り子魔法使い、エニーとエンディ
「ていうかリデ、その治癒薬、売ればいいじゃない、お高く売れるんでしょう?」
いい子勇者達を思い出していた僕にヴァルスが、それこそその治癒薬を金に変えるべきではと提案した。が、僕は首を横に振った。
「せっかくわざわざ作ってくれた治癒薬を、路銀には変えたく無い、本当の用途に使ってこそ、彼女の義理に答えた事になるから……できない」
「もー義理堅いわねリデ、そこが素敵なんだけど」
「頑固さんですね、リデさんは」
頑固結構、売ってしまって後悔はしたくない。何かの拍子に死にかけたら嫌だからなと、僕は小瓶の治癒薬が入ったサイドパックに触れる。
「あぁ、だから今日たどり着けなければ野宿ーー」
「ぐへへぇ、じゃあ今夜も私が立て替えるから、体で払って貰おうかにいちゃん」
「大丈夫、一晩でチャラになるから安心してよにいちゃん」
キミら仲良くなったなぁ、出会ってまだ2日じゃなかったっけ。ヴァルスが右腕に、ルーナは左腕に絡みつき、示し合わせたかの様に僕の尻を掴んでくる。つーかどこの怪しい仕事斡旋する人間だ。
しかしだ、ちょいちょい腹が立って来たので、少しばかり反撃してやろうかと思った。そーだなー……他に人も見えないし……茂みも深い。
「それ、今ここで払ってあげようか?」
「へ?」
「え?」
「ほら、この辺茂みが深いしさ、先払いって事で」
僕は二人の手首をがっしり握りしめて、茂みに向かう。
「あの、リデ?私はその、宿で払ってもらえれば」
「先払いなんてそんな、嘘ですよね」
「いいじゃんいいじゃん、お日様ポカポカに草のベッド、気持ち良いかもよ」
僕はニコニコ笑って二人の手を引く。しかし、そう言った趣味は流石に無いのか二人は慌て出した。
「ま、待って!ごめんなさいリデ、謝るから!冗談が過ぎたわ!」
「ごめんなさいリデさん!お願い、許して!」
「じゃあやめる」
僕はパッと手を離した。
「嫌なことされたら、そうなるでしょ?二人とも反省した?」
「「ごめんなさい」」
わかれば良い、僕は頷いた。僕だってこんな場所でしたく無い。うん……。
したくは……でも、焦った二人凄くそそっちゃったなと、僕は頭を振った。全く、そんな女性の尊厳踏み躙るプレイで興奮するなんてどうかしてる。
「そう、どうかしてたんだよな、あの時もお金に困ってて……」
「え?何が?」
「いいや、何でもない」
僕の呟きを聞いたヴァルスにそう返し、街道に戻った。
そうだ、あんな自分が、自分な訳がない。しかしそこにあいつが居るのは間違い無くて、あいつを気に入ってしまった二人に、今から会いに行くのだ。
正確には3人だが、最後の一人にできるだけ会うのは避けたいなと僕は思った。
そうこうしているうちに、夕方前にカルブキに到着した。
クーラントの夜遊びの聖地がデルシならアルシャ領の夜遊びは、カルブキとなっている。しかして全く毛色は違う。
デルシはそれこそ、高級志向。富豪貴族の御用達ならば、カルブキは大衆的な部分が多い。
そしてなんと言ってもカルブキは……踊り子の街なんて言われている。
踊り子、華麗で扇情的な衣装を纏い、音楽に合わせて舞踊をする。そしてその肢体に銅貨を投げ渡し、気に入れば今夜のお相手に連れ帰る。店によってはパフォーマンス嗜好な、アクロバットな技を売りにする店もある。
夕方となれば、様々な踊り子館の客寄せ達が、こちらへこちらへ男を誘う。
「ねぇ、勇者達もこの街に来てたわけ?」
そんな街に来ていたのか、勇者達はとヴァルスが質問を投げかければ、僕は頭を抱えた。
「説明すると長くなってしまうけど、流れ着くしかなかったんだよ、あの時は」
苦い思い出だし、思い出したくなかった。この話は絶対勇者達に知られたくもなかったし、墓場に持っていくつもりでいた。
しかし……また掘り返しかねない事態になるかもと、僕はある場所へ歩き出した。
「ねぇルーナちゃん、踊り子衣装買って着てみない?踊り子プレイなんてそそらないかしら?」
「でも、あんなの私のはみ出ちゃうかも」
「それくらい良いじゃないの、裸になって凄いことしてるんだから」
ヴァルスとルーナの踊り子か……いかん、絶対興奮するに決まってる。ていうか今日着せるか?などと考えていたら、目的の場所に辿り着いた。
「ここだ」
「ふうん、ここがその女のハウスね?」
僕が見上げた先にある、巨大なる建物。そして薔薇のレリーフの看板には『ラヴィアン』と刻まれている。
さて……帰りたくなって来た。僕は二の足を踏んだ。
「どうしたの、リデ?その女の子達に会いに行くんじゃないの?」
「そう、そうなんだけど……」
そう、あの姉妹に会うことは、過去を振り返る事になる。姉妹だけにあって話をつけたいのが理想。しかし、それは不可能。
わかってはいたが、いざ入るとなると足が動かなくなってしまった。
「やっぱり、朝に……」
あ、そうか、朝に尋ねればいいな。あいつも居ないかもだし、今でこそ踊り子として忙しいし。そうしよう、今日はヴァルスとルーナに踊り子服来させて踊り子プレイだ。
「「あぁー!リディアン様ぁ!!」」
うん、遅かった。この声を聞いて僕とヴァルス、ルーナは声の方に振り向いた。僕達が歩いて来た方角から、二人の踊り子が衣装がズレるのも構わず走って来て、そして……。
「ぎやぁあああ!?」
二人して僕に絶妙なコンビネーションで抱きついて来たのである。
「リディアンさまぁ!帰って来たんですね!」
「私たちを身請けしに帰って来たんですね!嬉しいです!」
見上げた先で二人の踊り子は、顔も同じ、髪の毛の色はブラウン、しかして片方はツインテールで、片方はポニーテールに纏めていた。
そして相変わらず……綺麗で大きな形の乳房をしていた。
「エニー、エンディ、まず隠しなさい二人とも」
ポロリしちゃってるからと、僕は衣装がずれているのを指摘するのだった。




