襲撃、ヒルカ別荘
「なーんだ、他の魔族も、魔王様もやべー奴って言ってたあなたも人間だったのね、安心したわ」
「え?僕魔王からやべー奴扱いされてたの?」
光栄というべきか、どうなのかは知らない。ひたすらガムシャラ、やる事はやった旅路だったから、そんな評価されていたとは思わなかった。
「それで……どうするの、このまま……まだ下調べやらするのかしら?」
「え?」
「随分回りくどいじゃない……要人暗殺もしてたんでしょ?」
ヴァルスが腕を回して、仮面を僕の前に見せつけてきた。先程のVIPで貸し出された仮面を持って帰ってきたらしい。
「勇者のパーティでしたという大義名分が必要?まさか、今更汚濁を被るの嫌になった?」
仮面を揺らすヴァルスに、僕は仮面を取り上げて思案する。そうだったなと、勇者のパーティだった時も、要人暗殺の時に勇者から別に指示は受けてなかった。
調べ上げて、邪魔になるから、勝手に行って、勝手に殺していたのだ。幾つかは指示をさせようと煽った事もあったが。
何をもたついているのやら、何が下調べだ……この目で悪事を見た、僕が敷いた赤絨毯を汚した輩が居た。なら、縛り上げて殺すだけだろうにと、僕は上半身を起こした。
やっぱり引きずっているのだろうな、追放された事。
「そうだったな……集落焼かれて、しかもルーナがあんなになってたから動揺してた」
「あは、いい顔……私と対峙した時の恐ろしい顔じゃん」
どんな顔しているのやら、魔族が恐ろしさを感じるなんてな。すくりとベッドから立ち上がって、買ってもらったタキシードのネクタイを緩める。
「あの後、一度見たからヒルカもルーナも魔力の感じが分かったから、居場所も特定しているわ……そうしたらすごい事に、今まさにこの街から歩いていける別荘地に、色濃い魔力を感じたのよ……エルフの何人かはそこで監禁されているんじゃない?」
「そうか、じゃあ……行くか」
渡された仮面を弄び、僕は準備に取り掛かった。
デルシの街郊外、ヒルカ別荘。あたりにも他の貴族や富豪が建てた別荘が集中している地域、いよいよ灯りが消える時間となっても、ヒルカの別荘はまだ灯りが灯っていた。
毎夜毎晩、灯りが消える事が珍しいくらいだと、他の別荘主は語る。果たして何が行われているかまでは知らないが、まともな奴は彼と関わる気にはならないだろう。
「っあー、たくよぉ、いい加減ちったあ反応返せや、肉人形がよぉ」
そんな別荘のある一室、舌打ちしながら金の波打つ癖毛の男はベッドに座して、裸体でうつ伏せに横たわる耳長の美女の尻を叩いた。
「エルフってのはこうなのか?しまりも肉体も最高だがマグロじゃねぇかよ……わざわざ金払って拐わせたのに全く楽しめねぇなぁ……」
男は、女の具合を評すると苛立ちながら髪の毛を掻く、下では笑い声に泣き叫ぶ声、楽しそうにしてやがるなと男は、そっちに混ざるかと立ち上がる。
「う……あ……」
「あぁ?」
その時、耳長の女が身体を震わせながら顔を向けてきた。目にまだ光を宿し、口は笑みを作り、女はこう言ったのである。
「あなた、下手くそね、三日も嬲って……全然です」
男はそれを確かに聞いて、ギリリと歯を軋ませた。そうして力任せに身体を抱き上げ、足を無理矢理に開かせる。
「テメェ上等だわ、ヤク漬けにして明日売り払ってやる、その前に泣き喚くまで付き合ってやる」
「無理……ね、無駄に出してなさい」
そうして男が腰を押し進めた矢先……。
「ヒルカ!やべぇ!!な、なんかわけわからねぇ野郎が敷地入って、ガードの奴らを殺してやがる!」
部屋に入ってきたメンバーの、商会連合の跡取りの一人が慌てて入ってきた。
「あぁ?なんだ、ヤク回ってんのかテメェ」
「俺は素面だ!まじヤベェって!ベランダから見てみろ!」
ヒルカは更に苛立ちを募らせながら、メンバーの言う通りにベッドから降りて、ベランダに向かう。こいつらヤクに酒にやり過ぎたなと思いながらベランダから敷地の庭をヒルカが覗き込んだ瞬間ーー。
剣が真横に飛んできて、頬を掠めた。
そして目にしたのである。護衛達が血を流し庭を血に染めていて、その中で仮面を被る者が二人こちらを見ていたのを。




