解雇通知
追放ではありますが、ザマァでは無いです、悪しからず。
あらすじ
勇者パーティを追い出された闇騎士リデは、故郷に帰ろうとしたが、3日前死闘の果て倒した筈の魔王配下であり、女魔剣士のヴァルスと出会う。
ヴァルスは魔王の配下を辞めて人間界でひっそり暮らす為、リデの帰り道についていきながら職探しをする事にしたのだが……。
「今までお世話になりました」
僕は勇者に頭を下げた。勇者の左右には、冷ややかな目をした僧侶と魔法使いが居て、勇者は足組んで椅子に座っていた。
「よし、じゃあ……回れ右して、失せろ」
「はい」
言われた通り、回れ右して、宿から出る事にした。
「あー待て待て」
「なに?まだ何かある?」
が、勇者に呼び止められた。そして勇者は、この旅で僕が腰に下げていた、粗野な剣を机に置いた。なんの変哲もない、鉄の剣、ずっとこれで僕は戦って来た。
「忘れ物だ、こんなボロクズを置いていくな」
「ごめん……」
その通りだ、勇者が着込む鎧や携えている魔法剣と比べたらボロクズに等しい。だが、始まりからずっと折れる事も、砕ける事も無かった、僕の大切な剣だ。
立つ鳥跡を濁さず、僕は剣を受け取り確認の為、鞘から少し引き抜く。
「あれ?」
何故か、ピカピカに磨がれていた。勇者に目線を送る。
「勘違いするな、俺の魔法剣を研ぐ試しにしただけだ、折れていいとも思って研いだだけよ……」
「そう……」
ああ、自分のを研ぐために練習で研いだのか、自分のは失敗したくないものだ。それもそうだ。
「じゃあ、これで」
ボロクズは回収した、もうこれで用は無いなと、改めて回れ右をして、宿の扉へ向かう。
「待ちなさい」
「何ですか?」
次は女僧侶に呼び止められた、いつもツンケンしたキツい人だった。そんな僧侶が、小瓶が嵌め込まれたベルトを見せた。小瓶には並々と輝く液体が揺れている。
「治癒薬、ついでに処理しときなさい、もう私が皆を治せるから必要ないわ」
治療薬か、確かに僧侶が治癒魔法を使えるから、もう必要無いのだろう。失せるついでに処理を命ぜられた。
「わかりました……処理しときます、じゃあこれで」
ベルトを肩に掲げ、再び回れ右をした。
「待て、闇騎士」
最後に、魔法使いが僕を読んだ。そう、僕は闇騎士だ、勇者に、僧侶、魔法使い、そして闇騎士。
「何ですか?」
「路銀だ、さっさと馬車でも雇って帰れ」
そう言って皮袋の財布を投げ渡してきた。ずしりと重いが、勇者の現在の財源からしたら雀の涙だろう。それでも十分だけど。
「そう、手切金だね、確かに受け取りました」
「そうだ、もう出会う事も無いだろう」
「うん、じゃあ、これで……」
ボロクズの剣に、必要無い治癒薬、少ない路銀。残ったのはこれだけだ、軽くなったなと思いながら、僕は改めて扉に向かった。
「リデ……いや、闇騎士」
また、勇者が呼び止めて来た。
「なに、まだ……何かある、ジン?」
勇者の名前を呼んだ、勇者の顔を見ず、扉に手をかけ、開く。
「さよならだ」
「うん、さよなら」
僕は、勇者ジンに別れを告げた。
僕は、闇騎士リデ。
さっきまで勇者一行の一人で、今しがた三行半を突きつけられた。
現在無職、あるのは、鉄の剣に、治癒薬数本、路銀を少し。
僕達は王様より魔王討伐を命ぜられて旅をして、途中途中の魔族やらを打ち倒し、困っている人々を助け……そして今、魔王と魔族が支配する領地の手前に到着、そして現在に至る。
解雇理由は……足手まといか、はたまた体裁を保つ為だろう。魔王討伐のメンバーに闇騎士なんて、後世に面目が立たないからだろうなと、僕なりに結論付けた。
これから特にすることも無いので、故郷の村に帰ろうと思ったのだ。
とりあえず、お腹空いたから朝ごはんを取ることにした。




