決定的に誤った選択
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
話をしている間に、東の櫓についたようだ。
部屋に振動はないので、時間経過で予測しているのかも知れない。
「ずっと部屋にいるのも気が詰まるだろう。ちょっと外に出ないか?」
ソージュに誘われて、確かにずっと室内だと気付き連れ立って外に出る。
「あ、夜になってる。最初の櫓だ、やっぱりなんだか懐かしくなるわ」
周りをくるりと見渡してみた。時間帯が違うから見え方が違うけど、確かにあの櫓だ。
「上に登るか?高い所がすきなんだろ?」
ソージュは、初めの頃のやり取りを覚えていたのだろう
「せっかくなら上がりたいです。でも、実は高い所が特別好きだったわけではありませんよ?
高い所なら、周りに何があるか見渡せると思ったのでそう言って見ただけです」
実は違いましたとソージュに伝えると、
「チャコは初めからちゃんと警戒していたんだな?俺はあの時、小さな子供が1人でなんて危ないんだとヒヤヒヤしたんだ」
目元で笑い「こっちだ」と手を引いてくれる
「今は手を引いてくれるんですね?」
と意地悪言ってみると
「暗いし、もっぱら口説き中だからな?」
とソージュは返事をする
「手にしたら、放置ですか?」
釣った魚に餌はやらない的な?
「ん?こうするな」
スルリと私の指と指の間に、ソージュの長くて、私よりも逞しい指が入り込んで、ぎゅっと握られる。
言わば恋人繋ぎだ。
——これ、どうしようか?
「分かりました、っと!何で顔が近くなってるんですか!?」
ソージュは恋人繋ぎして、階段室に入った途端に顔を寄せて来た。
「付き合ったなら、隙あらばじゃないか?夜だしちょうど誰も見てないし」
うん、いいたい事はわかった。落ち着け
「付き合ったら!ですね、分かりました。早く登りましょう」
近くなったソージュの顔を押し除けて、階段を先に進む。
手は自由にはならない様だから、仕方がないからそのままにしておく。
櫓の見張台に辿り着くと、昼間には分かりにくいが、夜だからかかなり遠くに街の火がチラチラ見えている。
「あれがヴァルドの街ですか?」
ソージュに尋ねてみると、
「ああ、さっき出た門の方だ」
そう言って、私に寄り添う。
「近く無いでしょうか?」
蟻すら通さないばりに密着してる。
私には体重が掛からない辺り物凄い体幹だわ
「近づきたいからな」
何食わぬ顔で望みを話してくる。
王子だから、我儘を言い慣れてるよな
「私は触れる事、許して無いですよ?」
手は不可抗力だよ?
「……触れてない。近いだけだ」
それ、どんな言い訳よ?
ぷいって横向くのは、可愛いから辞めて?
「……ソージュ?」
言い訳して顔を背けるソージュが面白くて、視線を追いかけて遊んでいたら
不意に頭を抱えられて、なんの前振りも予兆も無く
キスされてしまった。
しかもペリルと違ってガッツリ……
コイツら本当に隙あらは仕掛けて来るな?
なんて思いながら、されるがままソージュをボーっと見ていると、目があった。
——あ、ヤバ
ソージュに、何らかのスイッチが入ったのが一瞬で分かった。
力尽くで逃げれるけど、ガッツリホールドされてるから、無理にやるとソージュが千切れるだろう。
——流石にまずいか
きっと、元彼の事とか喋ったし、煽っちゃったんだろうな?
なんて事を考えていたのが不味かった
「随分と余裕あるな、上の空か?」
地を這うような、不愉快そうな低音が、左耳から流れ込んできた。
——マズイ、このままでは食われる。
下に荷馬車の手入れをするペリルが見える。
咄嗟に服の下のボタンを引きちぎり、ペリルに向かって親指で弾いて飛ばした。
——ペリルお願い!気付いて!
私は持ち上げられ、見張台にあるテーブルに身体を押さえつけられて……
今にもお料理されちゃうぞ!まな板の上のコイかな?状態だ。
——マズイ、このままじゃ剥かれる!
「過去は気にしないが……今上の空なのは気になる。俺を見ろ」
見ろって言ったって、近すぎて見えないよ!
文句の一つ言おうとしたら、また塞がれちゃったから辞めた。
——ペリル早く来て!
「お前は、どうしたら俺のことを見てくれるんだ?なぜ何も言ってくれない!」
ん、こちらとしては反論したいのです。
言うだけ言ったら、塞いでるのは貴方です。
襲われてるのはこっちなのに理不尽だ……
困った、どうすればと考えていた時、案の定手付きが不埒に変更されて来た。
私、学ばないよなあ、嫌じゃ無いのは本当だけど、今は後から気まずいので嫌だ。
あー、櫓の上かぁ、外はやだなぁなんて思っていたら
ドサッとソージュが私の上に落ちて来た。
いや、元々被さっていたけど、落ちて来た。
うんしょと、ソージュの下から這い出れば
「ごめん、遅れた?」
そこには、ハアハア息を切らして、手を差し伸べるペリルがいた。
「ギリギリ間に合った。危うく夜空に晒される所だったわ。気付いてくれて良かった。ありがとうペリル」
ペリルの手をぎゅっと握る。
ソージュは好きだし、そうなってもいいとは思うけど、襲われたいわけじゃ無い。
自分の意思に反する事が怖く無いわけ無い。
「……ソージュ様には、ちょっとしつけが要りますね?怖かったよね?ごめんねチャコ」
ペリルは、軽く抱き止めて宥めてくれる。
ザワザワした気持ちがおちついてくる。
ペリルはいつも冗談混じりで戯れて来る感じだから、楽しい感じで受け入れられる。
ソージュのは、ぶっちゃけ重い。
夢中過ぎる。ありがたいけど、こちらにはまだ受け止める土台がないから困ってしまう。
実際私も、あの顔に襲われてる最中に、他ごと考えていたし……
改めて慣れって凄いな……
ソージュ、嫉妬故の暴走か?
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