失望する男と受け入れる男
晩御飯の配膳を済ませて、皆で食卓につく
私を心配しているのか、チラチラこちらを伺いながら準備をしていた。
「……あの!」
このままでま気まずいから、声を掛けたら
「「「「ハイ!」」」」
皆、ビクッとしながら揃って返事をした
「何かごめんなさい。心配かけてしまって。でも大丈夫です。あちらでの事は、何も問題ありませんでした。
問題があったのは私でした。心配してくれてありがとうございます。私はもう平気です」
食事後に、ちゃんと話をしよう。
「私が自分で考えてみた結果、この世界で生きていきたいと思いました。話すと長くなるからまた後にします。一旦ご飯食べませんか?」
そう、きっぱり伝えると周りは「えっ?」と驚きはした。
でも、後なのかと、言葉を飲み込んだみたい
「色々、気にはなるが……いただきます」
ソージュの声掛けで、皆食事をした。皆話が気になるのか、早く食べるために無言だ。
「クスクス」
その姿がおかしくて思わず笑ってしまったら
「なんだ?」
エストラゴンがこちらをみた。
「だって、皆揃って無言なんだもん。そんな姿見たらちょっと可笑しくなっちゃって。
皆が、私の心配してくれているのはわかっているの。それが嬉しくて可笑しくて」
ふふふ、とまた笑いが込み上げる。
「チャコ、早く食べなきゃ、皆から注目された中で1人だけ食べる事になるよ?」
ペリルに言われて、確かに?と思い、慌てて食べ進めた。
間食をしたから、私は沢山食べる事はないので皆よりは早く食べ終われた。
片付けをしにキッチンに向かうと、ソージュも食べ終わったみたいで、食べ終わった食器を持ってこちらに来た。
「チャコ、さっきの話……」
ソージュが恐る恐る尋ねて来たので
「さっき言った通りです。この後、話をしたいのですがお時間頂けますか?」
真面目に答えると
「分かったよ。御者はオリガンに任せよう」
私は頷き、お茶の準備をしてソファへ向かった。オリガンが外へ向かう途中
「とりあえず、難しい話は分からんが、これからもよろしくな?」
と、一言だけいって御者をしに出て行った。
オリガンは気楽で助かるな。
それぞれ食事を終えて片付けを済ませると、なんだか緊張した面持ちでソファにすわった。
「なんだか、いざ改まって話すとなると緊張しますね?」
私の左右には、ソージュとペリルが座ってじっとこちらを見ている。
私が座ってる長椅子はとても大きい3人掛けだから、並んで座れる。
気付けば、ここが私の定位置になっているのは何でかな?
私は向こうの世界の事、自分で考えた事、をゆっくり話した。途中、感情が揺れても、ソージュ、ペリルが
「大丈夫ゆっくりでいい」
「少しお茶飲んで、はいちゃんと息して?」
など、タイミングをみて、声を掛けて来てくれながら、ずっと話を聞いてくれた。
全てを吐き出した時、心だけで無く体もスッキリしたように感じた。
「話を聞いてくれて、ありがとう。私はこの先こちらの世界で、エストラゴンの娘として生きていきます。
私は知らない事ばかりだから、色々教えてください。どうかお願いします」
頭を深く下げて、感謝とお願いをする。
「……分かった。こちらで、貴族として生きていくのに必要な事は全て教えよう。
ただ、基本的には今のままでいい。大丈夫だ心配は要らない」
エストラゴンが強く頷いてくれた。
「チャコ、残る決意してくれてありがとう。これからの事は慌てずにゆっくり考えていこう?決めたからって無理しないようにね?」
ペリルは、私が残る決意をする事をわかっていたのか、私の気質まで理解している。
「……チャコ」
ソージュは複雑そうだ。言葉に迷いがある。
私の過去を直接聞いたんだ。
汚れた女でガッカリした?
まあ……仕方がないかな。
「ソージュ、私は、決して正しくない、独りよがりで我儘で、他責傾向がある厄介女なの。
他人だから優しくするんです。近くにいると甘えて雑に扱って。男に捨てられた癖に悲劇のヒロイン演じたバカな女よ。
だから私に、夢を見ないでくださいね?」
私は家族になるんだ。
いっそ、振り切って全てを晒してしまおう。
「チャコ、そんなに自分を下げちゃダメだよ。
僕達に心を開いてくれるのは嬉しいけど、自分から下がらないで。
大丈夫、気にしなくていい。チャコはそのままでかわいいし、素敵だから」
ペリルは、私のソージュの態度への落胆を見抜いた。
「ソージュ様、チャコの元彼に対して嫉妬したくなる気持ちは分かります。
ですが今、その態度は、チャコに失望したと誤解されますよ?」
ペリルがソージュに物申すと
「はっ!チャコ、違うぞ?嫌、嫉妬は違わないが、チャコはいい女だし、話聞いたくらいでは変わらないよずっと好きだぞ?」
ソージュが、ハッとして、青い顔でわちゃわちゃし出した。
「チャコの過去は過去だろ?俺は今のチャコが気に入ったんだ。
過去のチャコがなければいまのチャコはないだろ?だから俺には過去は関係ないんだ」
なんて、真っ直ぐな……
「チャコ、言ったでしょ?僕らはナトゥーアの出身だよ?過去にたとえ何人いても関係ないんだよ?」
ペリルはパチンとウインクしてきた
ペリルが言わなければ、私は誤解していただろうな。
——ペリルは凄いな。
私も、ちゃんと相手を見なきゃね。
人の気持ちって一瞬できまりますよね?
自分の気持ちを優先してしまったソージュとチャコの気持ちに気付いたペリル。
次回一気に話が動き出します




