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トングが聖剣?使わないけど〜最強女勇者はイケメン達に守られていたいんです〜  作者: 黒砂 無糖
家族

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92/201

恥ずかしい勘違いと遺言

 ティトに連絡してみようと思い、私は一旦自室に篭る事にした。


 ティトは学生だから、多分今頃は下校している頃かな?この世界の学校事情はわからないけど、留守電機能もあると言っていたから、連絡をしてみよう。


 緊張から、スーハーと深呼吸をした。


 とりあえずメッセージを送ろう。通話が出来るなら折り返して貰えばいい。


 深いアメジスト色に銀の蔦模様のバングルの内側には記録ボタンがある。

 その横には、発信ボタンが並んでいて、さらに横には受信ボタンがある。


 それに触れながら頭に相手を思い浮かべる。


「ティト?チャコです。いきなりごめんなさい。尋ねたい事があって連絡しました。

 話が出来るなら、通話したいけど、無理そうならメッセージ下さい。質問を投げます」


 そう記録してティトにメッセージを送った。


 バングルはペリルの蝶みたいなのが出るのかと思ったら出なかった。残念


 とりあえず待つか、とベッドに腰掛けた時、バングルがぶぶぶと震えた。


 携帯の消音時みたいだ。受信ボタンを押すと


『チャコ姉?繋がってる?このまま通話できるならもう一度受信ボタン押して』


 言われた通り受信ボタンを押した。


「ティト、聞こえる?」


 ちゃんと繋がるのかな?


『あ、繋がった!チャコ姉これ、凄いね?ツァオバライ商会から連絡来た時何かと思ったわ。アウスヴェーク様に大変気に入りましたと。よろしくお伝えくださいね?』


 ティトは子供なのにちゃんとしてるよな……


「ペリルに伝えておくわ。唐突なんだけど、ティト、貴方は以前どこに住んでいたの?」


 あ、せめて挨拶くらいすれば良かった


 大人なのにはずかしわ。


『チャコ姉いきなりどうしたの?』


 ティトは私の勢いに押されて驚いている。


「うん、私いきなりこちらに転移したじゃない?行方不明の場合『種』に連絡行くとして、祖父母の家を売られる可能性に気付いて……

ティトが遠方なら時間が稼げるかなって」


 もう、あの男は、種でいい


『うーんと、多分だけど、祖父母さんは保険をかけていたんじゃないかな?』


 ティトは冷静に伝えてくる


 その喋り方は、10歳の子供ではないな。


『チャコ姉はまだ若いし、祖父母さんは万が一を考えて、種に渡らないようにするなら、

 チャコ姉が未成年の間に後見人を立てるよね?道場に親族の大人はいなかった?』


 ——言われて気付いた。


「あ、おじいちゃんの甥っ子の叔父さんが、師範としていたわ」


 週に一回来るくらいだったから、これまたすっかり存在を忘れていた。


 私、あり得ないくらい失礼だわ。


『チャコ姉が困らないように、祖父母さんは遺言で叔父さんに託したか、一旦叔父さんが買い取ったんじゃないかな?

 チャコ姉が本気で継ぐようなら、譲る前提で叔父さんがお家を守ったんじゃない?

 叔父さん、かなりお金持ちじゃなかった?』


 確かに、叔父さんは、何処かの会社の会長さんだったはずだ。


「なんで知ってるの?」


 お母さんにでも聞いたのかな?


『あの人、金金うるさかったでしょ?叔父さんは種の従兄弟だから、種がタカりに行って断られた時……家で暴れたのよ』


 うわぁ、最悪じゃない


 正直、そんな話は聞きたくなかったわ


「ティト、なんかごめん」


 嫌な事を思い出させたよな


『なんでチャコ姉が謝るのよ?だから“知ってた”というより“記憶にあった”が正解ね?

 その叔父さんが相続したのか買い取ったのかはわからないけど、チャコ姉はその人に良くしてもらってなかった?』


 そうだったわ、それすら忘れてた。


 私、自分の事しか考えてなかった……


「かなり可愛がって貰った。むかしは弓の指導も叔父さんがしてくれていたわ」


 立て続けに祖父母が亡くなって、自分がしっかりしなきゃって力みすぎて……


 ——周りが全く見えてなかったんだ。


『その叔父さんは、チャコ姉に無理をさせたくなかったんじゃないかな?

 道場も、どうしてもやりたいなら継がせようと、祖父さんも考えていたんじゃない?

 彼氏とかいなかったの?』


 あ、いつもお爺ちゃんが言ってた……


「お爺ちゃん、よく“お前は好きに生きろ”って。うちの心配はしなくていい。

 好きな人の子を産んで、普通に暮らせって病院で言っていたわ。

 でも、私が寂しくて、弓が好きで、恩返しはそれしかないと思っていて」


 お婆ちゃんも同じ事言ってた


『お爺ちゃんが亡くなって、おばあちゃんが先が長くないと分かった時に、

 彼氏に裏切られて、私にはやることがあるって道場に縋っていたのかもしれない』


 全部私の独りよがりだったのかも知れない


 そんなんだから、彼氏が浮気したのかも……


『うん、だからそれを見ていた叔父さんは、敢えて何も言わなかったんじゃないかな?

 経営するって簡単じゃないのよ?会計や経理もやらなきゃならないし。

 叔父さんにチャコ姉が給料払ってたの?』


 やだ、私、本当に何もしてないわ?


 なのに偉そうに継いだだなんて……


「生徒に教えていただけだったわ。私の方がお給料を貰ってた。叔父さんの奥さんが会計士だったし、全部丸投げしていたわ。

 やだ……私ったら、やってる気になっていただけじゃない」


 ——恥ずかしいわ。


 私いなんかいなくても全然問題ないじゃない

ティトは26で亡くなったのでチャコよりは経験豊富です。

ティトの物語は「明日は明日の風が吹く」で詳しく描かれます。お時間があったら、見に来て下さいね


ここまでは読んでくれてありがとうございます

お気軽にコメントもお待ちしてます!

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