貴族の家柄と妹への連絡
餃子の作り置きと、食材が劣化しないのを良い事に、ペリルに自分でやるには面倒なミンチや、微塵切り、すりおろしなど、色々な食材を下処理しておいて貰った。
「ソージュ、これから先の動きってどうなっているんの?」
ふと、私だけが理解していないスケジュールが気になり、ソージュに尋ねてみる
「この後は、一度聖なる栗の木探しだな。今向かっているのはチャコを拾った見張台の櫓だ」
なんだか、既に懐かしく感じるな
あまりにも状況が変化したから、もう、何年も過ごした気分だわ。
「まだ数日しか経ってないはずなのに、かなり前な気がします」
なんだか不思議な感じだ。
「まあ、色々詰め込んだしな?チャコ自身妹に会ったり、エストラゴンの子供になったり。
この先は、少しのんびりに感じるかもな?」
うん、確かに色濃く過ごしたわね。
とりあえずキッチンから離れソファに座る。
ソージュも座り、ペリルがお茶を入れてくれた。一緒に作ったクッキーも並べてくれた。
「ペリル、ありがとうございます。そう言えば、ペリルはアルゼと連絡は取ってるんですか?」
兄妹って通常だと、どのくらいの頻度で連絡するんだろう?
「してないよ?別に用事ないし、今まで距離を開けていたんだ。今更密にはならないかな?」
それは、そうかもしれないな
「チャコは?妹に連絡したのか?」
ソージュが私に話を振って来たけれど……
「それこそ、前世妹がいた事すら知らなくて、相手はすでに他界して転生してるんです。
どの面下げて連絡したらいいのか、わからないですよ?」
話はしたいけど、きっかけがないと無理だわ
「別に連絡しても良いと思うよ?バングル貰ったんだし。
彼女は連絡して欲しいんじゃないかな?」
ペリルはそう言って私のバングルを突いた。
「そうなのかもしれないけど……もう少し考えてみるわ」
ぶっちゃけ話す内容がない。
仲良くなる程の時間がなかった。
「この先、こちらに残れば嫌でも会う回数は増えると思うから、気にしなくてもいいんじゃ無いかな?」
え、なんで、回数増えるの?
「どうして回数が増えるの?」
何か、予定でもあるのかな?
「エッさんは貴族だし、僕にしろソージュ様にしろどちらかと一緒になっても貴族だし?」
ペリルは貴族と言っているけど、貴族だと何があるの?
「ペリル、チャコはそもそも貴族を知らないから、わかっていないよ?」
ソージュはさっきから、横で書類仕事をしている。隊長だから忙しいのかな?
「そっか。チャコ、貴族はね?それぞれ家格があって、エッさん、僕、ソージュ様はいいか。
僕とエッさんは、これでも一応高位貴族なんだよ。チャコの妹は、ゴルドファブレンの高位貴族だから、顔を合わす機会が多いんだ」
ソージュはいいの?王族だから別?
「チャコが俺と結婚したとしても高位貴族だからな?だから会う回数は少なくない」
ソージュがいきなり結婚話をしました。
付き合ってもいないのに気が早い人だ
「……高位貴族じゃなければ、会う回数は少ないのですか?」
とりあえずソージュの発言は無視だ
「家格が違うと集まりも違ったりするから、会い難くはなるかな。
今のところは大丈夫だけど、高位貴族はそんなに沢山いないから、妹に会いたければエッさんの家を継ぐか、僕と一緒になるのが安定してるかもね?」
……ペリルまで結婚の話をするのか
彼の場合、どこまで本気か分からないわ。
それよりも、家を継ぐか……
弓道場は継いだんだよね。
こんな事なら、継がなきゃ良かったかな。
「……チャコ?向こうがまだ心配?」
ペリルは目敏く私の表情に気づいた。
「うん、まぁ、向こうで継いだ家を放置して来ちゃったから、困ったなって」
誰か、受け継いでくれるだろうか?
「チャコは誰も親戚がいないのか?」
ソージュさんが書類を片付けながら私に質問する
「……いないかな?あ、ヤダ!マズイ!」
すっかり忘れてた!どうしよう。
「どうした?」「どうしたの?」
2人はいきなり叫んだ私に驚く
「すっかり忘れてたけど、もう何日か経ってるから、多分向こうで私は行方不明になってると思うの、そうなると流石に認めたくないけど、種父?は生きてるだろから連絡行くと思う」
しまった、生まれてこの方会ったこともろくにないから、存在をすっかり忘れていたわ
「私がいないとなったら、ギャンブラーだから我が物顔で家やら土地やら担保にして、下手したら全て売っぱらってるかも知れない!」
——どうしよう!
「……その可能性は、高いのか?」
ソージュは恐る恐る聞いてくる
「……かなり。祖父母から聞いた限りでは。祖父母が亡くなる時「息子には気をつけろ」って
あいつが来たら、必ず警察に連絡するようにと言われていたわ」
お爺ちゃんお婆ちゃんごめんなさい……
「種……は近くに住んでいたの?遠くにいるなら時間稼ぎにならない」
ペリル種って……父とは認めないのね?
私も認めないけど。
「わからない。実際生きてるか死んでるかすら知らなかった……」
そうだティト!もしかして彼女なら分かる?
「妹なら分かるんじゃ無いか?」
ソージュは気付いた。そうよね?所在していた場所を聞いてみよう
「ちょっと連絡してみます」
私はティトに貰ったバングルに手を添えた。




