認識阻害で阻害できず
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
チャコの叫び声に背を向けた後、俺は自室に入り、来ていた服を全て脱ぎ捨てる
「疲れた」
正直疲れて何も考えたく無い。しかしこの後、栗を処理するために厨房に行かなければならない。
シャワーをひねってう湯を出すと、頭からシャワーをかぶり、しっかりと頭を洗う。今日は長い時間頭を締め付けていたから、少し長めに洗って頭の疲れを取る。
ほぐれて温まったせいか、少し視界がスッキリした
疲れてるし湯船に浸かりたいと感じだけれど、時間がないから諦めて身体を洗うとさっさとあがった。
腰にタオルを巻き、鏡に映る自分の姿を久しぶりに観察した。
見慣れてはいるが、そこにはまるで彫刻の様に見事な肉体美が写っている。もう少し太い筋肉にしたいのだけれど、幾ら鍛えても、これ以上変化する事はない。
「イケメンか……きっとこの姿を見たら、カタコトでは済まないだろうな」
俺は、昔から自分が人より容姿が優れている事を、誰よりも理解している。
もっと平凡がよかったといつも思っているけれど、こればかりは、出自も関係しているので文句を言ったところで仕方がない。
さて、と肩をぐるぐる回しながら考える。
チャコにずっとカタコトで怯えられるのは気分が悪い。かといって、彼女に遠慮して自宅内にいるのに顔を隠して過ごしたくはない。
チャコは、最初からカタコトだった訳ではないよな?
——いつからだ?
そう考えたとき、フッと、チャコが一気に赤面した場面を思い出した。
「あっ……あれか」
ナッツを、俺の口に次々口に入れようとしたから、イタズラに指先にキスをした。
挑発したのはあちらだが、俺は、子供が相手だからと、自分の容姿を甘く見積もっていたようだ。
「だか、好まれた訳でなく……拒否られてるんだよな?」
好かれるのは、今までの経験もあり正直鬱陶しいが、まさか自分が拒否されるとは、思っても見なかった為、事の他ダメージが大きい。
「何か凄く腹が立って来た。理不尽だろ」
納得がいかないと思いながら、ラフなシャツとパンツに着替えると、とりあえずレヒテハントに認識阻害の眼鏡を持ってきてもらう。
「坊ちゃま、何故自分の屋敷で認識阻害が必要なのです?」
レティヒハントは、不思議そうにしながら眼鏡を持って来てくれた。
この眼鏡は、ランプにシェードをする程度の認識阻害だが……しかし無いよりはマシだろう。
眼鏡をして、レヒテハントが入れたお茶を飲みながら今日起きた事と、明日の予定を伝え手配を頼む。
「また、随分と愉快な状態になっていたんですね?坊ちゃんが拒否されて、罵倒されるとかちょっと見てみたかったかもしれません」
レティヒハントはハハと笑うが
「愉快では無いが、珍しくはあるな。全力で拒否され続けるのは、さすがにキツイから。眼鏡が気休めになれば良いが」
そろそろ迎えに行こうと思うが、また拒否されたらと思うと気が重くなる。
「そもそも、その顔への耐性も無いのに、指先とは言えキスされた彼女に同情しますよ。刺激が強すぎます。美人は3日で慣れると言いますが……構えなくとも嫌われてないなら、大丈夫ではないですか?……それかショック療法でもしますか?」
気後れしている俺に、レティヒハントが提案をした。
「ショック療法とは、どんな内容なんだ?」
解決に繋がるなら……良いかもしれない。
「そうですね、今、着ているシャツのボタンを後二つほど開けるだけで良いかと。丁度髪も濡れてますし。かなりの色気です。そのまま近づくだけで充分ですね」
「……そうか」
俺は無言のまま魔法で髪を乾かし、シャツのボタンをきっちり上までとめた。
もう、どうにでもなれと、チャコを待たせている部屋に向かう。
ノックをして返事を待つと、中から萎れた声が聞こえて来たので慌てて中に入った。
「随分と弱々しい声がしたが、大丈夫か?」
入り口から顔を出してみる。
「あれ?ソージュさん眼鏡男子……」
近寄っても大丈夫か?3秒待ってから近寄る
「認識阻害の眼鏡だ。多少はマシになっただろうか?それより、かなりグッタリしているが、どうした?」
チャコは、ソファの肘掛けに寄りかかっている。
「認識阻害、全然阻害出来ていないのですが……却って萌えポイントが上がっただけでは?それよりも、全身丸洗いされたんですよ!お風呂なんて1人で入る物だったから凄く恥ずかしくて……」
チャコは目をギュッと閉じて、羞恥を思い出しているのか、かなり顔が赤い
真っ赤な顔は、恥ずかしさだけか?子供ははしゃぎ疲れても熱を出すよな。もしかして、発熱でもしているんじゃないか?
かつて、妹や弟たちが良く発熱していたことを思い出した。
「ちょっといいか?お前、熱が出ていないか?」
近寄ると、チャコの前に膝をついて屈み、おでこに手を当てる。熱いか?頬を触り、首筋を触る。
「良かった、大丈夫そうだ。顔がほてっているだけだな。体調悪くは無いか?水分ちゃんと摂ったか?」
なれない環境で疲れたのかもしれないな。
そう思ってチャコを見ると、彼女は真っ赤な顔で目を瞑りプルプル震えている……
——また、やってしまった様だ。
「済まない。俺には触れられたくは無かったよな?見たくも無いか……従者に指示は出してあるから、厨房は好きに使っていい。不愉快にさせてごめん。……俺はこれで失礼するよ」
嫌われているのに、何をやっているんだ俺は。
俺は居た堪れなくなり、これ以上拒否する様を見ていたくなくて、部屋を出ようと立ち上がり、この場から離れようとしたその時
——ふいにチャコに手首を掴まれた。




