子沢山親父の気遣い
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戸籍関係は、役場の奥まった場所に集まっている。我々は高位貴族のため別室にて待機だ。
幾つもの書類を渡したので、暫く時間がかかるだろう。
「チャコ、ひとつ伝え忘れていた事があるんだが、聞いてくれるか?」
急いでいて、すっかり忘れとったわ
「何ですか?」
チャコは何の曇りもない瞳で、こちらに顔を向けた
「今回、養子縁組ではなくて、実子登録をする事にしたんだ。
その事を詳しくつたえたくてな、ペリルから聞かんかったか?」
チャコは、目を見開いて固まっている。
ペリルに出生の話を伝えて貰った筈だが?
「あ、忘れてた」
ペリルが、しまったと言う顔をしている。こいつが頼みを忘れるなぞ珍しいな?
「言わんかったのか?何故だ」
チャコが、固まってしまったではないか
「チャコが認識阻害眼鏡が好きじゃないみたいだったから、ピアスに作り替えていたらすっかり忘れていました。
申し訳ありません。チャコ?驚かせてごめんね?しっかりして?」
ペリルが、チャコの背中をパンと叩くと
「実子?!……それ、大丈夫ですか?」
チャコは恐る恐る尋ねる。嫌なわけでは無さそうだな?
「問題ない、その為にケーニッヒに適当な奴を探して貰ったんだ。丁度都合の良い者がいてよかったぞ?」
名を聞いても全く分からんが既に亡き者、名を借りたのだ。感謝はしよう。
「……ありがとうございます」
チャコが泣きそうな顔をしている。
——ソージュ、ペリルなんとかせい!
「チャコ、良かったじゃないか、本当の親子になれるね」
ペリルよ、お前は本当に良く気付くな
「チャコの怪力に説得力が増すな?」
ソージュ、女子にその様な事、喜ばんぞ?
ほら、チャコに睨まれてるではないか。
「そもそも、養女だと良からぬ噂を流す奴が現れたやもしれん。丁度良い相手がいてくれて助かったぞ」
名前が知れてるのも良くない時があるな
「良からぬ噂を?ですか?」
チャコはよくわかっていない様だな。
こちらに来たばかりの娘だ、世間知らずなのは当然だろう。一から教えてやらねばな
「エッさんはずっと独り身できたからね、男ならまだしも女の子を養女とすると、そういった趣味と勘違いされる可能性が高い」
バカな話だ。だか世の中にはバカが多い。そんな事で娘に庇護はつけたくないからな
「ケーニッヒに指摘されてな?漸く思い当たったんだ。聞いたこっちが驚いたぞ?」
全く持って、胸糞悪いわ
「ケーニッヒさんて、国王様ですか?」
ん?チャコは名前は知らんかったか?
「俺の父だな。エストラゴンの親友らしい」
らしいとは何だ!きちんと親友だぞ?
「実際、話を持っていったら、国王がエストラゴンは幼いのが好みだったのか?なんて言うから僕も驚いて、一度待ったを掛けたからね?」
ペリルよ、何故笑う?そこはけしからんと怒るところだろう?
「それに対しては俺達も、散々口説いておきながら思い至らなかったのはダメだったな」
何?ソージュは口説いていたのか?後から尋問せねばなるまい
「……お前達には聞きたい事が山程あるが、今はいい。チャコ、そう言った訳もあってな?
実子登録する事にした。驚かせて悪いな」
驚いたのか、チャコは珍しく口数が減っているではないか
「実感が湧かないけど、私は書類上だけで無くて正式な子供になるのよね?」
書類上には変わらないが、気持ち的にはわしも違うな
「そうだ、チャコはわしの娘だ」
チャコの頭を撫でてやると、嬉しそうににこにこし出した
「嬉しい!本当のパパが出来た」
余程嬉しかったのか、撫でているわしの手を掴んでぶんぶん降っている。好きにしろ
「この後、2人にはチャコの見届け人になってもらうぞ」
ソージュとペリルを見て真面目に伝える
「ソージュとペリルは、最後に本人の立会いが必要な正式な登録の書類に、見届け人として名を連ねて記入してもらう」
2人はわしの気持ちを察したのだろう。
久しぶりに子供の頃の様な目を向けてきた。
「お前らはわしにとっては子供みたいなもんだ。実際実親よりわしの方がお前らの考えや趣味趣向まで知っとる。
だかお前さん達にはちゃんと親がいる。わしはお前らの親とは名乗れんが、お前らチャコの見届け人としてわしを監督しろ。
ソージュとペリルには、わしらの親子関係に口を出す権利をやる」
そう伝えたら、ソージュもペリルも揃って似た様な表情をしてこちらを見ている。
血も繋がってないのに良く似たものだな?
「……エッさん、とりあえず、皆んなが家族って事でいい?」
ペリルがわしに伺いを立てるなんて、珍しいことだな?
「いいぞ」
チャコにぶらぶらされている手の反対の手でとりあえずペリルも撫でといた。
「エストラゴン、ありがとう」
ソージュもついでに撫でとくか。ワシワシ撫でたら神がボサボサになったわ
「お待たせ致しました」
ガチャリと扉が開き、役人が入って来た。
「こちらが最終の正式書類となります。
上から、親、子、見届け人の順にお名前を記入して下さい」
事務的に書類が回される
わしから名を書き、次にチャコ、ソージュ、ペリルの順に名を連ねた。
「これにて、エストラゴン・クレフティッヒとチャコ・クレフティッヒは正式な親子であると認められました。
見届け人ソージュ・アウスリーベンとペリル・アウスヴェーク両名はこれを認め監督する事をここに記しました。
今後両名は監督として見守ってください。
これにて全ての手続きが終了致しました。おめでとうございます」
そう言って、役人は一礼をしてさっさと退室していった
「……ペリル、ソージュがいる事がバレるやもしれん。騒ぎになる前にソージュを連れて、いそいで荷馬車に戻るぞ。
チャコはわしが抱えて一緒に戻る」
署名があるから直ぐにバレるだろう。
さっさと逃げるが勝ちだな
チャコをいつかの様に腕に抱き上げ、そっと扉を開ける。
「チャコ、しっかり捕まっていなさい。ソージュ、ペリル、いくぞ!」
わしは気合いを入れて、でも小さな声で号令を出した。
「「「はい!」」」
実子が1人と子が2人、外にも、女ぬだらしない奴がもう1人いるな。
知らぬ間に随分と子沢山になったもんだな
チャコはエストラゴンの実子になりました。
次回辺りからチャコの気持ちに変化が生まれます。
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