水が滴る男は……エロい
今日はひたすら慌ただしい1日だった。
▪ 朝のエストラゴンの養女発言にはじまり
▪ ツァオバライ商会でのソージュの爆買い
▪ 勇者資料館で転移勇者の聖具はイマイチな事
▪ 魔王討幕後に帰宅できる事を知った
▪ ……妹、ティトとの出会い。
「このままこちらに残っていたら又、会えるんだよね?」
腕についたティトに貰ったバングルを撫でた。
▪ 荷馬車の魔改造に、
▪ ソージュ、ペリルとの魔法料理
「ソージュは料理が上手だったわ。アイスもとても美味しかった」
私を元気付ける為に、慰め役ををわざわざペリルに託して、自分はアイス作ってるなんてね?
不器用な人よね?
自分に出来る事を選んだのでしょうけど……
ペリルは万能すぎるし、慰める時も私の状態を常に見極めて、ある意味最短で立ち直らせたわね?
「ペリルは……器用すぎるのよ」
根っこが優しいから、彼は損する事も多かったはずだわ?だから踏み込まないようになったのかも?
——私と似てるのかもしれないわ
だからソージュは、ペリルに私を託したのかもしれない。
あの2人は一見真逆に見えるけど、良く似てるんだ。
2人して真実の愛に憧れて、ちゃんとお互いをリスペクトしている。
エストラゴンを父のように慕い、オリガンはダメな弟として扱う。
「オリガンはいいクッション役なんだろうな」
ソージュは人嫌いだけど、本来人が良過ぎるから嫌いにならなきゃ付け込まれてしまいがち。
ペリルは人タラシ。全て計算した上で誰も信用しない。心の内側には定めた人しか入れない。
ペリルがソージュを守るように、ソージュもペリルの心を守ろうとしていた。
2人を人として素敵だと感じた。
2人の絆に心が動いたんだよね……
それを感じた事で、私はエストラゴンの娘になる決意をした。
だって、ソージュとぺリルの育ての親だよ?あんなに優しくて素敵な2人を育てた人の、娘になりたいと、家族になりたいと心から思えたんだ。
あの後、皆で食べたご飯はとても美味しかった。
ワイワイしながら食べて、
「チャコを一刻も早く養女にするから、すぐに行くぞ!」
エストラゴンなんて、食後すぐに張り切り出したから
オリガンに片付けを押し付けて……
慌てて、ぺリルが外の結界を解いて、荷馬車に飛び込んで
片付けが終わった時、満腹でソファーでうとうとしていたオリガンは蹴飛ばされていたっけ?
お風呂は案の定、大騒ぎだったな……
「チャコ、1番風呂入って来ていいぞ?」
と、ソージュに言われ
「悪いですよ」
と遠慮したら
「風呂なんて、チャコのためにつけたような物なんだから遠慮なく入って?」
と、ペリルに言われて
「嬉しい!ありがとう」
と、うきうき浮かれて風呂に入ったいたら
「……気配察知」
迫ってくる気迫
そっと湯から上がり、風呂桶に湯を掬う。気配を消してこんな時の為にと用意したタオルで体を覆う
風呂の引き戸に手をかけて一気に開ける
「この、色欲魔神共が!バレてないと思ったか!」
と、一括して湯をぶっかけた。
3人はケラケラ笑いながらびしょ濡れで
「だからバレるって言ったじゃん」
ソージュは、爆笑しながらぺリルに文句を言っている。
「チャコの気配消えた時点でマズイと思ったんだよね」
ぺリルは、バレていると分かっていていて、あえて挑んだようだ
「なら、煽らずに言ってくださいよ!」
オリガンは先陣だったため、一番お湯をかぶっている。
「ちゃんと三人で掃除してくださいよ?ペリル、魔法はつかっちゃだめだからね?」
やれやれと思いながら3人を見つめたら……
「水も…滴る…いい男……」
目の前には湯を被り、シャツは張り付き兵士として鍛え上げられた肉体が透け、髪の毛先から水が滴り、その髪をかきあげる事で、各々の綺麗な顔が曝け出されていた……
思わず、手を合わせて拝んでしまった。
「チャコ?何してる?」
ソージュが髪をかきあげつつ、濡れたシャツが気持ち悪いのかボタンを外しながら尋ねて来た
「ソージュ!色気!しまって!目が潰れる!」
くるっと反転したそこには、
既にシャツを脱いだオリガンと、前ボタン全開のペリルが!
「ぎゃー!イケメン!コワイ!」
パニックになり始めたら
「チャコ落ち着け」
ソージュに抱きしめられ、視界が真っ暗になった。
視覚の暴力から外れた事で、ホッとしたのも束の間……
頬に当たるのはソージュの素肌。
確かさっき……ボタンを外していたよな?
薄目を開けると肌色。私を抱き止めている腕のあたりを見ても肌色。うん、半裸だね?
「チャコ、あんまり暴れるとタオル落ちるよ?僕は見たいけど」
ペリルがとんでもない事を言って来たので、カチッと固まる。
「チャコ、ふざけてごめん。固まるな、床も拭くし今は覗かないから。体が冷えて来ているから風呂に入りな?」
ソージュが、腕を摩ってくれるが、お互い肌色が過ぎるし、流石にこのままではマズイ。動きたいのに動けずにいたら
「運ぶぞ?」
と一言言って、ソージュが私をタオルごとお姫様抱っこで浴室に入ってきた。
「え?ソージュ?」
はっとして顔を見るんじゃなかった。
少し恥じらい、頬を染めた半裸の水が滴るエロい男に運ばれている。
私が顔を上げたのに気付いたのか、ソージュと目があった
「……下ろすぞ」
私はタオルごと浴槽に下された。
その目には押さえ込まれた獣が見えたが、ソージュはグッと目を閉じて、私の頭をポンと撫でた
「ゆっくり浸かるんだぞ」
後ろ手にヒラヒラ手を振り扉を閉めた。
その背筋も、一筋まで美しかった。
「あの瞳は……卑怯だよね?」
ソージュの瞳を思い出しながら呟く
あの顔で、瞳の奥で求められるなど、陥落するに決まってる。
——あれはやっぱり一種の魔眼だ。
私の意思など簡単に消し飛ぶだろう。




