え?なんで私キスされたの?
ソージュは、彼女の言葉に私との親密性や、なぜか私との関係に対して応援と背中を押された事など、理解するには情報が少ないために、困惑したままティトを無言で見送った
「……チャコ姉?ティト?姉??短時間で随分と仲良くなったんだな?」
とりあえず、姉に対して反応したようだ。
「そうね、もっと時間が欲しかったわ」
——もっと沢山語り合いたかった。
彼女を知りたかったし、知って欲しかった。時間が足りな過ぎた。
「……話を聞いてもいいか?少し時間が必要か?」
私の落ち込んだような空気を察知して、ソージュが、心配そうに尋ねてきた。
「ソージュ、話を聞いてくれる?私も今感情がぐちゃぐちゃだからちょっとだけ整理したいんだ」
一旦、言葉にして頭を整理したいわ。じゃなきゃ感情が溢れちゃう。
さっきの部屋に戻り、ソージュに2人で話した内容を掻い摘んで伝えた。
感情が揺れる話はわざとぼかしていたら、途中質問責めにされてしまい、結局自分の思いも全て口にして、何度か泣きそうになった。
ソージュが手を握りさすっていてくれたので、その優しさを頼りに、何とか能力の話以外は全て話し切る事が出来た。
「お疲れ様、なんて言うか、妹の魂に会えて良かったな?かな?」
結局涙腺崩壊した私は、気付けばソージュの腕の中だ。
——結局、甘えてるよな
「ソージュ、いつもありがとう」
ソージュは初めから私に優しい。
「ん?どうした?」
ソージュはのぞき込むように私の様子を伺った。
「私、都合よくソージュに甘えてるよね」
抱きしめられながら、泣いてぼーっとした頭のまま会話する
「俺が都合がいいなら、甘えればいい。俺はチャコが甘えてくれたら嬉しいよ?」
私の肩を抱いたまま、背中をポンポンして泣いた私をさっきからずっとあやしている。
「やめて、弱ってる時に優しくされると本来堪え性ない私は、甘えて流されてダメになっちゃう」
前もそれで失敗したのよ!
「俺はチャコを甘やかしてダメにしたいな。だからチャコ……俺に流されて?」
ソージュの私の肩を抱いていた左腕の力が緩み、その手が腰にまわり、グッと引き寄せられ全身の密着度は上がる。
ソージュの右手が、私の頬に手を当て涙を拭う。
恐ろしく美しい顔に見つめられて身体が固まるが、じっと愛しむような瞳に見つめられ、だんだんと顔が近づいて来るのを見ていたら、暖かい腕の中このまま流されてもいいのかもしれない……と感じ、
——目を閉じた時
「話は終わったかー?」
エストラゴンがバンと扉を勢いよく開けて入って来た。
思わず目を開き、眼前の超絶美形と目が合い、意識を取り戻し咄嗟に顔を背けた。
「チッ、エストラゴン、ノックくらいはしろ、礼儀だろ?」
ソージュから腰をホールドされていたが、その腕の力が抜けた瞬間、身体を回転して一歩下がる。
「あっ……」
ソージュは名残惜しそうだったが、今は気にしてはいけない。
——危なかった。
私は感情がかなり揺れていたし、ティトに後押しされたのもあったから、ソージュの甘さと、美形に完全に魅了されていた。
私、簡単すぎだわ……だから騙されたのよね?
なんて考えていたら、エストラゴンとソージュが近寄りたくないくらいの威圧をお互いに放っている。
「ソージュ、わしはチャコを、わしから簡単に奪えるとは思うなと念押しをしたよな?」
地を這うような低音で、お父さんモードのエストラゴンからはゴゴゴゴと地鳴りが聞こえてきそうだ。
「お互いの同意が有れば良いのでは?いくら養女にした所で、過保護は嫌われますよ?」
しれっとしながらも、邪魔された事にご立腹なソージュからは、落雷が鳴り響いているようでビリビリした殺気を飛ばしまくっている。
「何、2人ともどうしたの?」
後から入室して来たペリルが、2人を見てぎょっとしている
「あー、毎度と言うか、ソージュがエストラゴンの逆鱗に触れたというか?」
私に触れたと言うか?
「ソージュ隊長がチャコに触れたんだね?」
あら、やっぱり分かります?
「……そんな感じかな?」
実際には未遂ですから。問題ないです。
「全く、あの二人周りが見えてないね?……仕方がない」
ペリルがふぅとため息を吐き、さりげなく私の肩を抱いて
「ちゅっ」
「?!!」
普通に人前で口にキスしたよこの人。しかもキスした後に、ほっぺたぷにぷにして
「僕が、1番先かな?」
とか、めっちゃ余裕があるの。余りにも自然だから
「あれ?今?しましたよね?」
何で間抜けな事言っちゃったし。
「ん?したよ?口に。軽いのじゃないのが望み?」
とか、いいながら肩から腰に腕が下がり引き寄せられた瞬間に……
「「何をした?」」
二人がペリルの肩をそれぞれ握りしめて、同時に問い詰めると
「え?二人が忙しそうだったから、暇だったし、チャコにキスしたよ?」
やっぱりぺリルはさらっと「何か?」位のノリで爆弾投下
「キスしただと?どこにだ?!」
エストラゴンはソージュの腕をペイっと剥がし、ペリルの両肩を掴んでガクガクゆすっている
「うわ、頭取れるって!どこって、口?」
ペリルはうわーとかいいながら笑っているか、どこかを聞いたソージュの目は座っていた。
ぐりんとこちらを見たソージュが怖くて
「パパ!助けて?」
と縋ると、エストラゴンはペリルを投げ捨てて対ソージュへの壁となった。




