知っていたけど知らない彼女
祖父母の遺した弓道場をなぜ知っているのか分からず、色々訪ねてみたが
「違うわ、実際私は直接見たわけではないから、知っているのとは違うのかな?存在だけ知ってるのよ」
ティトはなんて説明するか、迷いながら話してくれた。
「私が話を聞いたのは私の母からで、チャコの祖父母は、多分、私の祖父母でもあるのかな?」
一瞬、彼女が何を言っているのか分からなかった。
「は?一体何の話してるの?」
全く意味不明だわ?賢者にしか分からない話かな??
「わからないかな?もしかしてチャコ姉って名前の漢字お茶の子じゃない?」
お茶の子、確かに言われてみればだわ
「え?賢者ってそんなことまで分かるの?」
あ、でも、思考を読めるのか?
「私の前世の名前は美茶よ?美奈と間違えて美茶」
美奈→美茶、漢字似てるわね?
「あら?私と似ているわね?」
私も奈子→茶子だったわ
ティトは「うー」と、言いたい事を整理しているのか、唸っている。
「まあ、いいか、チャコの父親って10代で茶子が母親のお腹にいる内に、生まれる前に他所に女作って蒸発したクズでしょう?」
あってるけど、いきなり何で?どうして知ってるの?
「私の記憶を読んだの?」
賢者ってすごいわ。占い師もびっくりだわ
「だから違うって、どれだけ鈍感なのよ?そのクズ男の相手、貴方から父を奪った女の子供が私だわ」
はぇ?ええ?ドユコト?
「……ナニイッテルデスカ?」
頭がパンクしたら、カタコトになった
「あ、パニックになったのね?要するに私と貴方の父は同じ。分かる?」
ティトがハッキリ言って来たので、目が覚めた
「……え?!じゃあティトは私の姉?」
あれ?年上だよね?でも、私が先に宿ったよね?
「チャコ姉の方が、産まれたのは先よ?だからチャコ姉で合ってる」
でも、ティトの魂は26迄生きたんだよね?
「……?やっぱり計算合わなくない?だって私まだ21歳だよ?」
どうなっているの?
「私は死んでるから、魂だけだと別世界への転生だし、時間も空間も関係ないのかもしれないわね」
ティトはなんて事なく言うけど、私はパニックだ
「ティトは私の妹で、私が転生した後まで生きて亡くなったって事?」
時系列がややこしすぎるわ?でも、時空超えてるなら不思議じゃないのかな?
「そう言う事。私はチャコ姉の腹違いの妹。昔母に何度も聞かされたことがあったの。お前は本当は由緒正しい生まれだったはずだって。あのクズに騙されたって恨みの言葉を」
そんなことを……とりあえず、父がクズなのは同意するわ
「だから、祖父母の道場を知っていたのね?」
そっか……納得したわ
「私が謝る話じゃないけど、私の馬鹿母のせいでチャコには迷惑をかけたわ、ご……」
彼女は何を思ったのか、私に謝罪をしようとしてきたので、声を張って遮った。
あんな男のためにティトが謝罪だなんて冗談じゃない。
「謝らなくていいわ!むしろ謝らないで!」
ティトに、いや、美茶に謝罪はさせない
「全ては私達のクソ親父のせいよ?だってあの男、私の母を10代で孕ませて、自分の実家に置き去りにして蒸発したんだよ?ティトの母親の事も独身だと偽って騙して転がり込んだって。亡くなる前に祖母から聞いたよ?こちらとしては廃品回収ありがとうだよ?」
本当、あんなやつ居なくてよかったわ
「……そっか、いなくてよかったか。そうだね、あんな奴いない方が良かったよ」
その表情を見る限り、碌なものじゃなかったことが伺える。
「……子供の頃から凄い苦労したね?今、幸せなんだよね?」
なんだか涙が出た。妹が居るのは聞いていた。でも私には関係ないと思った。
——なんで探さなかったのだろう!
後悔したって遅い。
「チャコ姉、会えなかった事は気にしないでね?昔の私はそれなりに殺伐としていたから、今ほど呑気ではなかったわ?だから合わなくて良かったのよ」
ティトが複雑な気持ちでいる事が分かる。
「とりあえず、お墓の場所教えて?もしあっちに帰ったら墓参りするから」
せめて……手ぐらいは合わせたい
「あー、家の親の事だから多分墓はないかな?」
あ、そう来ましたか。そんなご両親だったのか……なんだか居た堪れない気持ちになった。
「じゃあ、私が遺した店の場所教えるから、戻ったら行ってみて?でも、戻っちゃうの?折角会えたのに寂しいわ?」
本当の血縁にこちらで出会える確率なんて……普通ありえないよね?
「まだ考えてるから、一旦聞いてもいいかな?」
もしあっちに帰ったら、必ず行こう
「分かったわ。後、私もアルゼと同じく魔王討伐はするつもりないけど大丈夫?」
それに関しては……全く問題ないわ
「大丈夫、私かなり強いから」
私はティトに、ニカって笑って見せた
「……チャコ姉、これあげるわ」
ティトが手首に付けていた、可愛らしいお花のブレスレットの横にあるシルバーのバングルを外して私の手首に付けた。
「サイズ的に無理……じゃない?」
小さなバングルが、私の手首に合わせサイズが変更された。
「これ、私の所に声を届ける事が出来る魔道具。私の能力に直接気持ちを投げてくれたら念話出来るけど、チャコ姉思いが強く無さそうだから、これ使って?そうしたら私から念話繋ぐから。携帯電話みたいな物よ?」
私の手首には、ティトに付けて貰った綺麗なバングルが光り輝いていた。
ティトの物語は「以心伝心」で詳しく描かれます。お時間があったら、見に来て下さいね
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