魂の転生者と特殊部隊
ひとまず彼女に何と答えようかと考えていると、入り口のドアからソージュが声をかけて来た。
「チャコ、話は長くなりそうか?」
どうだろうと思い、彼女に目を向けると頷いている。
「まだかかります。何も問題はないので、ここを離れてもいいですよ?」
そう伝えた。
「一人にして済まないが、一度同行者に事情を伝えてくる。必ず戻るのでここにいてくれ」
そう言い残し、ソージュはぺリルの元へでも行ったのだろう。
「随分大切にされてますね?」
彼女が驚いた表情で扉を見ている。
「ソージュさんは過保護なんです。良い人ですよね?」
あの人、本当にまめよね?
「学園で届いて来るアウスリーベン先生のイメージとかなり違うので、正直驚いていますわ」
彼女なりに思うところがあったのか、頬に手を当てて思案顔をしている
「そうなの?学園でのソージュはそんなにも違うの?」
それって、ちょっと聞きたいかも
「あ、それより、今更ですがお名前をチャコさんと呼んでも良いですか?私の事はティトとお呼びください」
ティトは、そう言って無邪気に笑った
「ティトでいいの?お嬢なんでしょ?」
敬称をつけなきゃいけないのでは?
「年上だし、そもそも先生の事を呼び捨てできる人が気にしますか?」
さっき咄嗟にソージュを呼び捨てにしたのに、気付いていたようだ。
「わかった。ティトと呼ぶわね?今更だけどよろしく」
自業自得なので全く言い返せない
「よろしくお願いします。チャコさん」
ティトは、にこにこ嬉しそうだ。
「あなた身分が高いのでしょう?チャコでいいわよ?」
ティトは話し方や、姿、どれを見てもいいところのお嬢様だ
「確かにこの国ではそれなりの家柄ですが……では、お姉様!」
彼女は、ぱあっと花が咲くような笑顔を見せてきた。
「……むしろ様が付いてるじゃない?」
格が上がってないか?
「じゃあ、チャコ姉は?」
あ、その呼び方は……
「道場の子達がよく呼んでいたわ。それならいいかも」
あの子達どうしているかな?
「で?チャコ姉はどうして隠しているの?」
ティトは表情を切り替え、私に質問をしてきた。
「めんどくさいのが嫌だから?」
理由を隠す必要はないかなと思って、私は正直に伝えた。
「言いたい事はわかるけど、簡単に言い過ぎでは?」
伝わったようだ。伝わればいい。
「賢者なら予測出来るかな?と思って」
実際出来たみたいだし?いいんじゃないかな?
「自分の事なのに横着すぎません?」
ティトは少し困惑している。
「ダメだった?何度も同じ説明をするのって面倒なんだよね。分かったなら良くない?」
どうせ一時の事だし、べつに他人に理解されなくても良いよね?
「……大丈夫です、何となくですが、チャコ姉がどんな人かわかった気がするので」
あら?顔にですぎてるかしら?
「さすが賢者ね?」
貴族令嬢だし、気読みのプロなんだろうな
「……チャコ姉、ここだけの話をしていいですか?」
ティトが真面目な顔して切り出して来た
「え?重たい話?聞いたら罰を受けるなら嫌よ?」
やだよ?同じ転生者ってだけで、信じたり、力になったりなんか出来ないよ。聞きたくない
「私の前世は日本人です!死んですぐに転生しました!能力は『以心伝心』と言って相手の心の声が聞こえて、念話もできます!言わないで下さいね!」
ティトが私の気持ちを察したのか、一気に秘密をバラして来た。
何してくれたんだこの娘っ子!
「ちょっと!えー!全部言ったよこの子?私許可してないよね?」
聞きたくなかったのに!
「言わないですよね?」
ティトが物凄い圧のある笑顔で、逃さないと言わんばかりに私を見ている。
「言わないけど……」
負けた、少女に圧で負けたよ……
「でも、魂の転生者であることはソージュにはバレていると思うよ?」
だから2人でいる事許したんだし……
「え?何で?」
ティトは何故か分からないのかキョトンとしている。賢者でも分からない事あるんだ
「彼のあの美の暴力の顔を見て「無反応でいられる女性」はこの世界にはほぼいないと言っていいみたいよ?なのにチャコガッツリ見つめあったのに、顔色一つ変えなかったじゃない?確定よ?」
この世界の人なら興奮し過ぎて倒れるよね
「うわ、もしかしてやっちゃった?貴族は顔色を変えない努力をするんです。それじゃダメ?」
貴族令嬢が仮面をキチンと付けていたら、今頃ソージュは子沢山だっただろう。
「彼の家柄、立場、を知っても平気だったのに?」
むしろ、燃料投下じゃないのかな?
「あー、確かに優良物件ですね、納得致しましたわ。では、チャコ姉、口止めをお願いいたします」
あらま、素直に諦めたのね?
「多分、今報告しに行ってるから、転生者バレは後2人追加でお願い」
貴族に後から文句言われたくない
「そう言えば、報告って言ってましたね。他の人も貴族ですか?」
ため息を吐きながら、ティトは聞いて来た
「エストラゴンとペリルだよ?ティトは2人とも知ってそうだよね?」
ソージュもティトを知っていたし、あの2人も有名そうだし?
「存じ上げておりますわ。むしろ彼らで良かったかもしれません」
ティトは軽く落ち込みながら笑っている。
「そうなの?その理由は?」
彼らは、何か特別なのかな?
「彼らは国を跨いで任務をこなすので、隊として守秘義務がかなりしっかりしているわ。他国自国問わず流すべきではないと判断した情報は漏らさないし、各国がそれを認めている独立部隊なのです」
え、そんなに至る所からの信頼があるんだ?
「知らなかったわ?凄いのね?彼等」
内側と外側だと、彼達はだいぶ印象が違うんだね?
「だからこそ、彼等に口止めよろしくお願いしますね?」
ティトちゃん……笑顔の圧が怖いよ
「何だか私良いようにあしらわれてない?」
こんな小さな娘に転がされてるよ……
「気のせいですよ?」
ティトは圧を消しにっこりと可愛く微笑んだ
ティトの物語は「以心伝心」で詳しく描かれます。
お時間があったら、見に来て下さいね
ここまでは読んでくれてありがとうございます
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