敬称の有無で距離感が変わる?
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更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
目が覚めた時、私は見知らぬ天井を見た。
「宿屋か……」
スッキリした視界に、しっかりと睡眠がとれた事が感じられる
昨夜は泣きながら眠ってしまった。
アルゼは既にいない。
ふと、サイドテーブルに光る小鳥が居るのに気付き、魔法だな?と思いながら近寄る。
そっと小鳥に触れると
「おはようチャコ!昨日は沢山話してくれてありがとう。バカな男達はやっぱり盗み聞きしていたよ?しっかりと文句は言ったから安心してね。
心配していたから聞いていた事は許してやってね?私は仕事があるから先に行くけど、後で会えるの楽しみにしてる。じゃあね!」
光る小鳥は口をパクパク動かし、アルゼの声でかたり終わると、キラキラしながら消えて行った。
不思議な世界だね
「あー、やっぱり聞かれてたのね。まあ、過ぎた事だし?本心伝わったなら良いよね?」
むん!と伸びをして気合いを入れる。
「よし、ちゃんと挨拶に行こう。気を使われるのも嫌だしね」
身支度を整えて、隣の部屋の扉を叩くと
「おはようチャコ」
ペリルが迎えてくれた。
「おはようチャコちゃん」
オリガンも起きている
「おー起きたか?おはようさん」
エストラゴンはやっぱり対応がお父さんだ
「……おはよう」
ソージュはなんというか、わかりやすい人だなぁ、目が泳いでる
「おはようございます!昨日はよくも少女の秘密を暴きましたね?殴られる覚悟は出来てますか?勇者の本気の力はどのくらいかしら?」
拳を握りしめて皆を見ると
ガタガタン!
「ごめんなさい」オリガン
「ごめんね?」ペリル
「申し訳ない」エストラゴン
「済まない」ソージュ
全員床にひれ伏した。
「ペリルさんだけ、なんだか軽く無いですか?」
この人悪いと思って無さそうだ
「うん。だって盗み聞きしなかったとしても、アルゼから話を聞く予定だったし。
こちらが暴れた事できっと聞いてるのバレてるだろうなって。チャコちゃんが、分かってて喋ったならいいのかなと思ったんだ」
まあ、この人は……用意周到すぎませんかね?
「それとこれとは話は別です!もういいです!」
とりあえず、勝手に聞いたのはだめよ?
「ごめんて、許して?チャコ?ねえ、ほら、一緒に朝ご飯食べよ?」
わざとらしく怒ると、ペリルは分かりやすく機嫌を取ってくる。
……確かに、この人は癒しだわ
「前に食べた野菜の挟まったパンが食べたいです」
ソージュがガバっと顔を上げて
「あるぞ?野菜だけの物、ハムと野菜の挟まった物、肉と野菜のもあるぞ?どれがいい?」
なんだか凄くわたわたしている。
エストラゴンも、自分の空間魔法の袋に機嫌取りできる物が無いか見ている。
「はい、お茶」
オリガンは落ち着いている
見事に『女慣れしている、していない』が分かれていて私は思わず笑ってしまう。
「オリガンありがとう」
お茶を受け取ると
「「「オリガン?」」」
声が重なった。
「?オリガン、名前違った?」
何が変だった?
「いや?あってるよ」
オリガンも首を傾げている
「チャコ、いつからオリガンは呼び捨てなんだい?」
ペリルが尋ねてきた
「オリガン、いつだっけ?」
「あ?忘れた」
2人であれー?って悩んでいたら
「チャコ、僕もペリルがいい。呼んで?」
甘える様な言い方で寄ってきた。この人、顔の使い方が上手いなー
「ペリル?でも年上ですよね?」
いいのかな?
「仲が良ければ普通じゃ無い?」
あ、既に仲良しなんだ?知らなかった
「じゃ、いいか。ペリル私はどこに座ればいい?」
全員立ってるから、どこに座るのかわからない。
「チャコちゃん、コッチに座らんか?」
エストラゴンが手招きしている。
私は嬉しくて、うきうきしながら隣に座る
「わしもエストラゴンで良いぞ?元々長い名前だから敬称は省け。ペリルやオリガンはエッさんとも呼ぶぞ?何なら父と呼ぶか?」
え?いいの?
「え、じゃあ、パパ?」
一度呼んでみたかったんだよね
「おぉ?パパとは何だ?」
そっか、こちらではない呼び方なんだね。
「私の世界では父、父親、父さん、お父さんなど色々な呼び方があるんです。
パパは小さな子供とか、可愛いがられている女の子が呼んでるかな。
私、父親の記憶は全く無くて、パパと呼ぶのにちょっと憧れがあったんで。ダメですか?」
羨ましかったんだよね
「そうか、そうか、わしがチャコのパパか!良いぞ。おい、お前達!わしに娘が出来たぞ!わしは娘は、チャコは守るから簡単にお前らにはやらんからな!」
パパは既に溺愛モードだ。頼もしい
「うわー、これはかなりやりにくいぞ?」
ペリルが苦笑いしている。
「チャコ、俺は敬称無しで呼んでくれないのか?」
ソージュさんは寂しがりだな……
「ソージュさんは、ソージュさんて感じなんですよね。お兄さんだし」
初めは呼び方お兄さんだったし
「ついこの間なのに、お兄さん呼びがもう懐かしく感じるな。チャコが呼びやすいなら何でもいいか?」
残念といいつつ、こちらに無理強いはしない。
これが本来のソージュなんだね?頑張って気を遣ってくれてありがとう
「ソージュ呼びは……生意気に聞こえませんか?」
エストラゴン、ペリル、オリガンに尋ねる
「この4人でいる限りはいいと思うけど、立場があるから公の場では敬称つけて欲しいかな?」
ペリルは苦笑いしている
「分かりました。公の場では気をつけるべきだと思っているので、四人だけで室内や野外でも、声の届く範囲に人がいない場合のみ敬称外します。ソージュそれで良いですか?」
ちゃんと使い分けできるかな?無理かもな……
「……!ありがとう」
ソージュはパッと明るい笑顔の後、柔らかい笑みを見せた。そんな表情も出来たのね?
「わしは人前でもパパ呼びでいいぞ?チャコさえ良ければ母はおらんが、本当に養女にならんか?
出自など何とでも出来るから、ヴァルドに戻るまでに考えてみんか?もしも、元の世界に帰るにしても、チャコの父はワシだと言えよう」
エストラゴンは、私を本気で娘にするつもりだ。
「パパ、ありがとうございます。ヴァルドに戻る迄に良く考えます」
あーもう嬉しくて泣きそうだ!
「ペリル、チャコと結婚すると……エッさんを義父と呼ぶのか?……ハードだな」
オリガンの言葉に、ソージュは遠い目をしていた。
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