で?どっちが好み?
いきなりどっちが好みと聞かれても困ってしまうが、折角だから考えてみる。
「2人ともスペック高すぎて、今まで付き合った人が霞むどころか消滅するわ。私、今まで碌な男と付き合って無かったかも知れない……」
いや、本当にまともな別れ方しかしてないわ
「うわ、嫌な事思い出させてごめん、じゃあこっちに来てから出会った人の中なら、強いて好みの人と言えば誰??」
出会った人……少ないわよ?でも……
「好みのタイプだと、エストラゴンさんかな?」
あの、全てを受け入れる感じが、カッコいい!
「え?エストラゴン様が好みなの!!しかも即答?なんで!!」
アルゼは、びっくりして叫んでいる。
「そんな大声で!聞こえちゃうよ?ほら、私は父親がいなかったから、エストラゴンさんの包容力かな。
皆の父親って感じに凄く安心するし惹かれる。ちょっと年上過ぎるから、相手にされないだろうけど」
隣の部屋から、ガタガタ物が倒れる音がした。
もしかして、聞こえたかな?
「うわ……ある意味強敵だわ!兄様に、大人の男の包容力を付けさせなきゃ!」
アルゼのペリル推しは変わらないらしい。
「いや、ペリルさんも、包み込んでくれそうな優しさはあるから!エストラゴンさんみたいなペリルさんは見たく無いかな?」
ワハハって笑うペリルさんは……嫌だな
「そうなの?ダメ?兄様じゃ」
アルゼがしゅんとした。
「ダメじゃないけど、沢山の女と一緒の扱いは無理だよ。浮気されてトラウマって言ったでしょ?」
浮気現場は……見たく無かったなぁ
「じゃあチャコだけになったら?」
アルゼはしょぼんとして、上目遣いに聞いてくる。
「考えはするだろうけど、信じられる自信無いかな」
どうすれば人を信じられるのか……いまではもう、自分でも分からない
「……じゃあ、隊長さんは?」
ソージュか……
「ソージュさんは……どうかな?今私に向いているのは一時の感情じゃ無いかな。
あれだけの美貌が迫って来て、現実だと思える?遊びだと言われた方がまだ信じられるわ」
ああ、私、男の人信じられないんだ……
「確かにあの顔は、非現実的ではあるか……」
アルゼが、現実離れした顔に納得している。
「ソージュさんは今まで女性から離れていたでしょ?異世界人で勇者。それだけでも興味持つし、今までの女性と自分に対する反応が違ったから、それにそそられたんじゃない?私かなり雑な扱いしちゃったし」
色々普通じゃ無かったよね……
「雑な扱いって、何したのよ?」
アルゼが怖い物でも見るように私を見ている。
「イケメン ホロべって言った」
や、あれは言い過ぎたよ
「マジか、あの隊長さんによく言ったわね?勇者なの?!あ、勇者だったわ」
勇者ですね
「男の人ってさ、自分にハマるまではグイグイ来るのに、手に入れた瞬間から興味無くなるよね?」
大体このパターンだったわ
「こっち向かないからこそ意地になるの。ワンチャンいけそうな、後腐れない相手が目の前にいて、今までの性欲抑制の反動で触りたくなって……初めてだから性欲と愛情を勘違いしてるのかも?」
あ、なんか自分で言っていて凄く納得したわ。
「タガが外れたら遊び出すかも知れないし。リハビリに一回付き合うくらいの認識かな。私にとっても、ある意味良いリハビリになると思ってるよ。お互いに良い思い出が出来そうだよね?」
むしろ最後にワンチャン、こちらからお願いしますでも良い気がするわ。
「チャコ、あなた……かなり前の男を引きずってるわよね?よっぽど辛かったんだね」
アルゼが近寄り頭を撫でてくれた。
「直前に別れた男なんて、育ての祖母が亡くなって、辛い時に、元彼と幸せそうな相手がわざわざ2人で彼の家にあった荷物を届けに来たからね?」
よくもあんな非道な行いができるわよね。
「しかも、まだ辛気臭い顔してるのかって、まだ亡くなって1か月くらいだったのよ?」
話していたらぼろぼろ涙が出て来た。
「チャコ、遊びでもいいよ、それなら尚更、兄様使いなよ。あの人遊び慣れてるからリハビリ丁度いいよ?
隊長さんも、利用しなよ!今のチャコは、愛される事が大事だから2人を振り回しちゃえ!」
アルゼ、あなた結構めちゃくちゃ言ってるわよ?
「そんな不誠実な……」
私にはそれは無理だよ
「2人のイケメンは"真実の愛"が理想なんだよ?傷ついたチャコを癒せない癖に、文句を言ってきたなら真実の愛なんか語るな!って私が怒ってやるわ!」
真実の愛ね。
私は……偽物だったんだよね
「チャコ、あの人達はそもそもナトゥーア国、通称自由恋愛のハーレム国の王子とハーレムで生まれ育ったフェミニストだよ?
何ならチャコが2人ともを望むなら、納得する可能性もあるわ?
だから今は、チャコの傷ついた心を癒さなきゃだめよ?女の子はちょっとくらいなら我儘言ってもいいのよ?好きになる、ならないはその後だわ」
アルゼは私を抱きしめながら、ずっと頭を撫でてくれていた。
彼女が言っている事は、正直めちゃくちゃな話に聞こえるけど、ハーレム思考な二人には、本当に問題ないのかもしれない。
私にはとても受け入れる事はできないけど……
でもそうか、今すぐ好きにならなくてもいいのか。
ゆっくりでいいんだ……




