百戦錬磨の戦線布告
真実の愛って、お話にある脳内ピンクな馬鹿王子がよく言うやつじゃない?
あ、ソージュも王子だったわ。
しかも脳内ピンク……
「ハーレムみたいに多方面に愛を囁くのでは無く、ソージュはたった一人、唯一の相手を望んでいるんだ。
その相手を探すために、10歳で国を出てゴルドファブレンの学園にはいったんだ。可愛いだろう?」
エストラゴンは、大きくなってもソージュが可愛くて仕方がないようだ。
「エストラゴン、余計なこと言うな…」
ソージュは恥ずかしいのか、もじもじしてる。身体の大きな美形のもじもじはちょっとどうかと思うの。
「僕もその時ソージュ様を追いかけてこちらに来たんです。いつの間にか、女性だけでなく人も嫌いになっていたから。
ずっと側にいたけど、中々信用はして貰えなくて大変でした。信用を得たのは今の隊になって漸くです」
ペリルは懐かしそうに笑いながら話している。
「……それは、済まなかった」
ソージュは、申し訳無さそうに目を逸らした
「それが何ですか?チャコに会った途端に別人かと思いましたよ。どこの我儘坊ちゃんかと!
オリガンを見てください。さっきからずっと無言ですよ?あの!オリガンが!」
急に名前を呼ばれたオリガンがビクッとしていた。
「……幻滅するか?」
ソージュは静かに問いただした
「いえ、チャコちゃんに翻弄される姿は、俺には寧ろ好感度が上がりましたし、親しみを覚えました。
人を寄せ付けないのも、気にはしてなかったです。
女嫌いなのは、ペリルと同じ故郷だし、いつも追いかけ回されてるから仕方ないなと。真実の愛いいじゃないですか!隊長らしくてかっこいいですよ!」
オリガンはニコニコだ。いいやつなんだな。
「エストラゴン、恥ずかしいから、俺の事はもうやめてくれないか?」
ソージュは耐え難くなって、顔を隠してしまった。ペリルは仕方がないなとため息をついた
「まあ、そんな環境にいた奴らなんだ。チャコちゃんに対して距離が近いのは間違いないが、許してやってくれないか?」
エストラゴンはソージュだけで無くペリルも含めての保護者だったみたいだな
「なんだか凄く納得しました。ペリルさんのオリガン以上に、圧倒的に女性慣れしたスマートな扱いが出来る理由も。
ソージュが女性は苦手だと言っているのに、何故か手慣れた口説き方をして来て、気付いた時には触らせてしまうやり口も英才教育の賜物ですね?」
3つ子の魂とは良く言ったものね?
「ブフッ」「グフっ」「フフッ」
誰か笑ってるわね?
両手で顔を覆ったペリルと、私と一緒に座っているソファーの上で膝を抱えて丸まっているソージュ以外の人が吹き出したのね?
「チャコ、それは誤解だ……」
ペリルさんが悩まし気に答えた
「断じて俺はチャコしか触ってない!」
ソージュ……勝手に触らない様に
「誤解も何も、2人とも一瞬なんでも許してしまうくらいは魅力的で素敵ですよ?
私が嫌な気分になったわけじゃないのだから、私の認識はどうあれ良くないですか?」
認識は変わらないしね?
「……チャコ、誤解を招く言い方は良くないよ?なんでも許すのは、危険だよ?」
ペリルさんが困り顔をこちらに向けた。
「チャコ?ペリルにも許してしまうのか?」
あー、ペリルさんが言ったのはこの人の誤解かぁ
「一瞬ですよ?流れそうになるだけで、実際流れていませんよ?」
まあ、時と場合によるかな?
「先程おでこのキス許していたよな?」
あ、そうだった
「俺だってまだしてないのに……」
え?待って?ソージュは首にしなかったかな?
「ソージュ、首やら指やらしましたよね?」
忘れてるのかな?
「おでこはしてない」
不貞腐れて言う事か?
「おい、ソージュ、チャコちゃん。その様な話は、できれば二人だけの時にしてくれんかな?聞いていてこっちがこそばゆいわ」
エストラゴンにシッシッと払われた。
「とりあえず、ペリルはチャコに近づくな」
ソージュが不満顔でペリルに言った
「嫌ですよ?近づくし、邪魔します」
あろう事か、ペリルさんが戦線布告した。
「何故だ?何故邪魔する?」
ソージュは断られると思わなかったのか慌てている
「ソージュ様、真実の愛なんでしょう?人の心とは移ろいやすいのです。私に邪魔されたぐらいで崩れるなら、そんな物は真実の愛とは言えないでしょう?」
毎度ペリルのごもっともな言葉に納得してしまう。
「恋に障害は付き物ですよ。障害を乗り越えた先に、真実の愛はあるのではないですか?なので、私が自ら障害となりチャコを誘惑します」
ペリルがそれはもう綺麗な笑顔で宣言した
ソージュは顔面蒼白だ。
そりゃそうだ、ペリルはきっとハーレムで英才教育を受けた国内屈指のフェミニストだろう。
恋愛に於いてはマスタークラス最大戦力だ。
「と、言うわけだから、これから妹と共によろしく。仲良くしようね」
そう言って、ペリルは私に笑顔を向けた。
その笑顔を見たら
私の体と心がキュゥっと縮んだきがした。
ペリルが動き始めました。
ペリル、チャコ、ロックオン




