イケメンは滅べ!
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俺はなぜ自分が助けた少女に、邪険にされているのだろうか?
幽霊や魔物より、扱いが酷い様な気がする……
とりあえず、魔物討伐の後処理部隊が戻って来たので、皆で街に戻ることにしたのだが、
「気に入らないな?何だあれは」
俺の斜め後ろ、視界に入るのは、この隊の副隊長を務めるエストラゴン。
彼と一緒の馬に、チャコが乗っている。
エストラゴンは隊の中でも、1番声も身体も大きく、一般令嬢ならば怖がって近寄らない。
年齢的にチャコの父親世代だろう。
俺は、櫓から出発する時のやり取りを思い出した。
「ソージュ隊長!只今戻りましたぞ!いやぁあの大きさのボアが吹っ飛ぶとか、何があったんですかねぇ?ま、こちらは助かりましたがね!ハッハッハッ!」
バシバシ人を叩きながら喋るのは、副隊長のエストラゴンだ
「隊長また、何だって頭の装備付けてるんですかい?未だ、何かあったのか?」
身長230センチを超えるエストラゴンは、こちらを見下ろして不思議そうな顔をしている。
普段、街に入る前までは頭の装備は外して帰門する。装備の締め付けは結構キツイからだ。
必要時と市民の目に触れる所以外は、皆揃って外しているが、今は"私だけ"付けている。
「エッさん!それ、ソージュ隊長に言っちゃ駄目!可哀想だから、見なかった事にしてあげて」
……オリガン、余計な事を
「隊長、何なんです?」
エストラゴンには意味がわからないだろう
「ソージュ隊長がカッコ良すぎるのが駄目なんだってさ、ふふ可愛いよね」
ペリル、お前達も一緒だったじゃないか……
「隊長がかっこいいのはいつもですが、なんかあったんですか?」
エストラゴン、褒めるな、虚しくなる。
「あ、あの!私のせいなんです!」
チャコ?ああ、俺の後ろにいたのか
チャコは、慌ててエストラゴンと対峙している。
「ん?お嬢ちゃんこんな所でどうした」
エストラゴンには、チャコは小さ過ぎて見えなかった様だ。
「彼女は、街に商品を売りに行く際に馬が襲われて、ここに迷い込んだんだ。一旦家で保護してから送って行こうと思っている」
それまで装備は外せないが……
「お嬢ちゃん大変だったなぁ、怖かっただろ?頑張ったな!」
エストラゴンは軽々チャコを持ち上げ、片腕に座らせた。要は抱っこだ。
「きゃぁ!」
チャコは驚いて、小さな悲鳴をあげたが
「思った以上に高いです!凄い!」
チャコは随分と嬉しそうだ……
「チャコ、馬に乗るよ。おいで」
エストラゴンから受け取ろうとすると、一瞬こちらに手を伸ばしかけ、目が合って3秒
「ムリ イケメン ホロべ」
と又カタコトになり、よりによってエストラゴンにしがみついた。
しかも今さらっと滅べと言った。悪化してないか?
「ハハハハ!ソージュ隊長が振られるとか、明日は槍でも降りますかね?チャコちゃんやワシと一緒に馬に乗るかい?」
エストラゴンは愉快そうに、豪快に笑いながら、チャコに提案した。
「お願いします!」
素早い食いつきだ。
装備被ったのに、何故俺じゃ駄目なんだ!
「エッさん、チャコちゃんはソージュ隊長がカッコ良すぎて、顔が見れないって。目が合うだけで真っ赤になって、カタコトになっちゃうんだ」
ペリルが、笑いをこらえながら伝える。
「オレとペリルでも、近過ぎるとカタコトにはなるけど、ソージュ隊長は別格みたい。顔見せるなって事で装備付いてんだ!とりあえず街まではチャコちゃん頼むわ!」
オリガンありがとう。自分では意味がわからなくて説明し難かったから助かった。
「エストラゴン、とりあえず頼む。小さいから無理をさせるなよ」
とりあえず……エストラゴンに頼もう。
「分かりましたぜ?色男も大変ですなぁ!ハハハハ!チャコちゃん行こうか!」
エストラゴンはいい笑顔で引き受けた。
「よろしくお願いします」
チャコ、エストラゴンには普通に笑顔なんだな?
実は、俺の顔が"嫌い"なのではないか?
その後の移動も、チャコはエストラゴンと楽しそうに、ケラケラ笑いながら馬に乗っている。
——気に入らないし、腑に落ちない。
「ソージュ隊長、視線で人が死にますよー!犠牲者はチャコちゃんだけど!ハハン!ぎゃっ!!」
オリガンがニヤニヤしながら煽って来たから、取り敢えず馬上から蹴りをお見舞いした。
「ソージュ隊長、普段皆から異常なくらいモテモテなんだから、許してやってよ。カッコ良過ぎて無理とか、中々ないですよ?」
ペリルは引き続き笑いをこらえている。
「なぁ、ペリル、それって褒めてないよな?さっき、滅べって言われたぞ?」
どうすれば良いんだ?
「ま、なれるまで見つめ合えば良いんじゃない?でも、ソージュ隊長、チャコちゃんに好かれちゃっても困るでしょ?その気が無いならほっときなよ。僕は遊ぶけどね?」
ペリル……ちょっと待て!
チャコはオモチャではないぞ!
チャコ、イケメンから逃走開始!
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