魔法陣の色は属性の色
私の混乱が、しっかりと顔に出ていたのだろう。
「俺達の隊は、冒険者ギルドの運営も管轄に入っているんだ。冒険者が討伐できないような魔物は、俺達に依頼が入る。冒険者ギルド自体が俺達の下部組織みたいなものかな」
下部組織?どういうことだろう?国をまたいでいるのだろうか?
「そもそも、ゴルドファブレンの学園から、各国の騎士団へ優秀な者から順に派遣される。それにこぼれたものが冒険者になるか、私的な護衛になる事が多い。もちろん派遣先の希望は聞き入れてもらえるけどね」
連なる5つの国は、本当にうまくまとまっているんだろう。連合国だよね
「俺達の隊は、優先的に能力が高く人柄がしっかりした者を集める。少人数であちこちの国に渡って問題を解決に行くから、個の力が無ければやれない。各国のギルドにも、ギルド長の監視と相談役として派遣してる。学園の教育に顔を出すのはスカウトの一環だよ」
思った以上に、巨大な組織だった。しかも、一緒にいる人たちは、最上位にあたる人達だった。
「それぞれの国が、各々役割を持っているんだ。ゴルドファブレンは学園都市で学ぶことを中心とした国だから、様々な能力を持ったものが集まってくるんだ」
学園都市か……なんか、青春って感じだな
「それを学園で育てて、必要なところに必要な人材を斡旋するんだ。学園の出身者は皆優秀なものが多いからね。どこの国も助かってるんだ」
ずいぶんと面白い国だなと思った
「自分で言うのも気が引けるが、俺は[鬼神]と呼ばれている。今のところ、強さでは誰にも負けないはずだ。まあ、チャコには負けそうだけど」
鬼神……なんだろう。想像がついてしまった。
「エストラゴンは[大魔神]と呼ばれている。昔一度戦ったけど、ギリギリ俺が勝てた、今やってもかなり手こずる。元々この隊の隊長だ」
エストラゴンが大魔神……ピッタリだわ
「ペリルは[大魔導師]だ。まだ若いが5国で見てもペリルと同列の大魔導師は2人なはずだ。ただ、あの若さだから、あと数年すれば誰も敵わないだろうな」
ペリルは、色々な意味で計り知れないな……
「オリガンは[鉄壁]攻撃より守り重視で、最前線に放り込んでも重篤な怪我など見た事無いな。あの男は倒れた事は1度も無い」
ひたすら頑丈なのか……的にして見ようかな?
「この隊の、最上位のチームだから、身元保証と護衛にはピッタリだろう?」
ソージュは皆の事を誇りに思っているの知れた。
「確かに安心ですが……」
戦力過多な気がしますよ?
「魔王討伐も任務に入っていたんだが、その前に周辺の魔物を討伐する必要があったんだ。その時にチャコに出会った。今も残りの隊が討伐に向かってるよ」
そうか、だから退魔の力がある栗の木の発見を急いだんだね
「よく理解できました。……これでいいですか?」
カードの魔法陣に指を置くと、陣が光輝き薄い黄色だった魔法陣が虹色に輝いていた。
ホログラムみたいだ
「……虹色か、やっぱりそうだよな」
ソージュさんが呟く。
「何か問題ありましたか?」
ダメだったのかな?
「いや、大丈夫だ。魔法陣の色は人によって違うんだ。特性が出るのか住んでる地域や取得能力や神の加護が関係するのか、陣の色で大体のタイプがわかる」
へぇ、便利だな
「オリガン!ちょっと来てくれ!」
馬の手入れをしていたオリガンは、手を止めてこちらに走って来る。
「ソージュ隊長何かありましたか?」
なんだ?とこちらを見る。
「冒険者カードの魔法陣を見せてくれないか?」
ソージュは比較の為にオリガンを呼んだのだろう。
「これですが、チャコちゃん何か問題ありました?」
私なんだよね?あってるけど
「いやな、魔法陣は予想通りだったんだ」
私の事を予測していたのか……
「まあ、そうでしょうね。でも、問題無いのでは?」
問題になる様な事だったの?
「チャコちゃん、これ見て」
オリガンから差し出されたカードは、紺色と青が混ざり合う魔法陣だった。
「俺は守護の属性がかなり強いから、濃い青になってるんだよ。虹色は……」
チラッとソージュさんを見る
「俺と一緒だな。ほら」
ソージュも私と同じ虹色だ。何が強いんだろう?
「虹色は属性は何ですか?」
何があるのかな?
「純粋な戦闘力だ。エストラゴンも同じだ。ペリルはうっすら紫がかった虹色だな」
おお、凄いよ、勇者やっぱり強いね
「流石にマズイでしょうか?」
目立つかな?
「いや、俺達と一緒なら虹色はおかしくない。寧ろ好都合だ」
そうこうしている内に後方から、馬に乗ったエストラゴンがやって来た。
「だいぶ待たせたか?何だ?揃って冒険者カードなんか出して?」
馬を降りてこちらの手元を覗き込む。
「お、やっぱり虹色だったか!チャコちゃん強いからな。男だったら問答無用で一度で合わせしたんだかな、残念だよ」
女の子で良かったと、しみじみ思った。
「揃ったし門の中に入るか」
ソージュさんが促し皆で歩いて検問に向かう
「アウスリーベン侯爵!皆様が本日はゴルドファブレン資料館に来館なさると先程エンゲアウゼ伯より聞き及んでおります!ご同行のご令嬢も確認済みとの事、そのままお進み下さい!」
ソージュさん達を見るなり、兵士の1人が走って来てピシッと敬礼をしながら伝えてくれた。
「伝令ご苦労だった。では、皆行こう」
こちらも威厳あるピシッとした対応で、オリガンはサッと御者台に乗り、エストラゴンは馬に跨る。私はソージュさんに手を引かれ荷馬車の中へ。
余計な事は何も喋らずそのまま門の中に進んだ。
「……もう喋ってもいいぞ」
私は、はぁーとため息をついた。何だか緊張して息継ぎを忘れていた様だ。
「何というか、皆様物凄く信頼されてるんですね?ちょっと驚きました」
圧倒的存在感だったわ
「一応兵士達からは、憧れられる存在だからな?」
どうだ!とソージュは胸を張っている。確かに凄いが、自分で言うからか褒めたく無い。
思考回路が直ぐ桃色になるから、ソージュの魔法陣はきっと本来ピンク色な筈だ。




