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トングが聖剣?使わないけど〜最強女勇者はイケメン達に守られていたいんです〜  作者: 黒砂 無糖
隣国へ

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ハーレム国のハーレム王子

 ガタゴト揺れる御者台で、ソージュに寄りかかりながら、さっきまでアルゼと二人で話していた事をつらつらと話していた。


 話しながら、私はぼんやりとこのまま帰れなかったらどうするのかを考えていた。


「チャコ、今何考えてる?」

 ソージュさんが尋ねてきたので、言葉を選ばす


「このまま、あちらに帰れなかったら、どうするかを考えてました」


 本当にどうしたらいいのかわからない……


「チャコはどうしたい?」


 ソージュは静かに語りかけてきた。


「どうしたらいいかわかりません。この世界の事は何もわからないし、常識も何も無いんです。何をやりたいかも、何があるのかすらわからないので」


 そう、違う世界なんだ。異分子は私だ


「帰りたいよな……」

 ソージュさんが切なそうに呟いた。


「帰りたいです。こっちには何も無いし……誰も私を知らない」


 重ねてきた全てが置き去りになってしまった。


「俺じゃダメか?俺が帰らない理由になる事は出来ないか?」


 ソージュさんが……? 無理だ


「ソージュさんは、今、珍しい生き物に遭遇して飼いたくなってるだけです。きっと私より素敵な女性が、沢山居ます。見えてないだけですよ」


 こんなに素敵な人だ、私には勿体ない。遊びで捨て置いてください。


「きっと違うと言っても納得してはくれないだろう。でも、たとえ帰れたとしても、身も心も俺から離れたく無くなって、帰りたく無いと絶対言わせるからな?覚えておけよ?」


 ん?なんか変だぞ?


「ちょっと待ってください、身も心もって、手を出す気満々じゃ無いですか!」


 シリアスな気分返して!


「手は必ず出す!絶対出す!絶対我慢しないし、寝かせないし、ガチ泣かす!」


 え?え?えぇ?


「イケメンが決め顔で厄介な事言わないで下さい!やめて!発情期なんですか?」


 なんなのこの人、口説くならもう少しまともに口説きなさいよ!


「番を求めて何が悪い?」


 しかも、開き直ってるし!


「いつの間に番ったんですか?知りませんよ?」


 全く、勝手に決めないでほしいわ。


「この俺を煽るだけ煽ってロープで縛ったあげく、生殺し状態で1人放置されたんだぞ?仕返しされる覚悟はある筈だよな?」


 根に持っていたのか、案外肝が小さいわね?


 それに、それは綺麗な笑顔で言う言葉じゃ無い!


「確かに私がした事だけど、縛るって言うと間違った解釈になる!歪んだ認識にしないで下さい!無自覚でした!ごめんなさい!」


 ソージュはある意味気が長いと思うわ


「お前が何と言おうと、俺は決めたからな。首を洗って……風呂に入って待っていろ!」


 おい、言い直したよ


「セクハラです!」


 ヤバイわ、全力で狙われてる!


「だったらどうした?」


 くっ、怯みもしないわ


「偉そうだから……パワハラ?」


 こっちならどうだ!


「実際血筋は偉いからな?」


 へ?血筋?


「え?そうなの?隊長って血筋?」


 騎士とかかな?


「隊長は関係ないかな。隠す話でも無いし、後から聞いてないど言われるのも嫌だから、言っておくけど、俺、一応ナトゥーアの王族なんだ」


 え?王族?


「王族?は?」


 王族って、国のトップ?


「ナトゥーア現王の五番目の息子」


 お父さんが王様?


「え?王子?」


 は?うそ……


「そ、王子、偉いでしょ?」


 まじか、この顔で、王子……


「偉いですね?」


 この人、属性まで強いのか……


「だから、命令、お前は絶対俺のものにする」


 うわー、子供じゃないんだから……


「どことなくジャイアン!」


 俺の物は俺の物!だ!


「よくわからんが、侮辱されたのは分かった……だから、絶対泣かす!」


やだ!泣くのも怖いのもごめんだ!


「優しくしてください!」


 せめてご慈悲を……


「……初めては優しい筈だ」


 な、急にモジモジするの?え?初めて……


「嫌、違う!お願いだから脳内ピンク消してくれ?」


 なんなのこのセクハラ王子は!





 荷馬車の中



「あの2人、仲良しですね?」

「そうだな、あの2人がうまく行くようにアルゼも祈ってくれよ?」

「……でもチャコって、多分……」


 2人の話は既に終わったのだが、真昼間からピンク色全開な話をギャーギャー御者台で話て居るから話しかけ難い……


「アルゼは、結局今のままでいいのか?嫌なら僕が何とかするよ?」


 彼女は本当の妹だった。


 ずっとただの養女だと思っていたが、父が平民との間に作った子だった。世間体を気にして、能力が高いからと表向きは養女にしたらしい。


 父の実子なら、能力が高くて当然だ。


 僕は、ソージュ隊長の生まれた国、ナトゥーアのハーレムで生まれた。


 ナトゥーアには巨大なハーレムがあり、女性はぼぼハーレムの住人で自由恋愛の国だ。


 父がハーレムにいた母を見初め。僕が生まれた。


 母はハーレムから出るより、ハーレム内で子供を育てるといい、僕はハーレム内で育った。


 ソージュ隊長は、かつてはソージュ様だった。


 ハーレムの持ち主、王様の息子、王子だった。ソージュ様は他の王子とは違い、いつもエストラゴンと訓練をしていた。


 僕も魔法が、かなり強かったから、エストラゴンの元で訓練に参加していた。


 彼等がゴルドファブレンに行く時は、年齢が満たなかったけど無理を押してついて行った。


 その時に母はハーレムから、父の元に正式に嫁ぎ、僕はエンゲアウゼ家の嫡子となった。


 アルゼは既に養女となっていたが、母屋にはおらず、別々に生活をしていた。


 会ったことは何度かあったし、陣の使い方も父から聞いた。何とも思わなかった。


 でも今話を聞いて、色々思う事もある。


 実の妹だとわかり、魂の転生者で、人間関係以外の記憶保持者で、天啓を受けた勇者パーティーで、嫌で、隠して生活って……


 情報量が多いし、御者台からは未だイチャイチャする声がするし、


 なんだかイライラするし、なんかもう……


「イチャイチャするなら、荷馬車の中へ入ってくれませんかね?防音もつけますよ?」


 と思わず御者台に叫んでしまったよ。


 ——あー、なんか、疲れたな





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