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トングが聖剣?使わないけど〜最強女勇者はイケメン達に守られていたいんです〜  作者: 黒砂 無糖
隣国へ

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身分差のある義理の妹

 なぜ多数の盗賊を相手にするのに対して、2人だけで飛び出したかわかった。


 圧倒的に強かった。1人だけで化け物級だ。


 取りこぼさないために2人で来ただけだった。もちろん私も逃げ惑う盗賊に、物は試しと撒菱を足もとに投げてやった。


 ちゃんと撒菱が戻って来たのが嬉しくて、ニヤニヤしてたら後から、戦闘中はその顔は怖いからやめた方が良いとエストラゴンに忠告された。


 盗賊達を次々縛り上げていたら、遅れてペリルとオリガンがやって来た。


 オリガンとペリルが、襲われた荷馬車に近づき、中にいる者と話をしている。御者は怪我をしていたが、とりあえず皆無事だった様だ。


 ペリルは話の後、そのまま荷馬車に不具合がないか確認している。オリガンが中にいた人を連れてこちらにやって来た。


「彼女、ゴルドファブレンのツァオバライ商会にヴィント国から魔道具を卸しに来ていたらしいよ。さっきの連中は、今までも良く襲われたらしいが、いつもは魔道具で撃退出来ていたみたいだ。今回は人数が多くて困っていたようだ」


 オリガンの後ろからおとなしそうな、栗色の髪で眼鏡を掛けた印象の薄い女性が出てきた。


 彼女は周りを見て、ソージュを見てびっくりしていた(あの顔、驚きの輝きですよね?)


 次に、私に目線が向いた時ぽそっと


「……勇者」


 と、呟いた。


 オリガンとソージュが一瞬で警戒したのがわかったが、私は(イケメンと平気で行動出来るのは勇者だ!)と思われたと勝手に捉えていたので、気にしなかった。


「……お前、何者だ!」


 ソージュが、折角助けた相手に剣を向けている。危ないじゃないか


「ソージュさん、やめてあげて?襲われたばかりで混乱してるのでしょう。可哀想だわ」


 そう伝えると剣は引いたが、視線はおかしな事しないかと怪しんでいる。


「そもそも、認識阻害のメガネを助けた相手の前でつけている事自体、怪しんで当然だろう」


 あ、だから印象が薄かったのかと思った。


「別に良いのではないですか?女性はすっぴんを人前で晒すのが無理な人もいるんです。長旅で御者と2人ならメガネで済ますのは理解できますよ?」


 私はすっぴんでも平気なタイプです。何となく緊張感が漂う中エストラゴンが来た。


「ソージュ、とりあえずペリルにゴルドファブレンの、ここから近い駐屯地に連絡を頼んだぞ?奴等を回収してもらう。俺は一旦ここに残って奴等を引き渡す。そちらのお嬢さんが卸に行くなら急ぐだろう?御者が倒れているから、オリガンが彼女の馬車の御者を頼む」


 そう伝えると、エストラゴンはさっさと自分用の馬を連れて罪人を纏めた場所に戻って行った。


 オリガンも、自分が乗る予定の荷馬車の元に行った。


「……とりあえずそうしよう。その女縛っておくか?」

 ソージュが物騒な事を言うから止めようとしたら、


「あ、彼女の身元は大丈夫だよ?変わり者だけど俺の昔の?知り合いだから」


 ペリルは馬車の整備が済んだのか、彼女は大丈夫だと報告してきた。


「……一夜の相手ではないだろうな?」

 ソージュ、昔の知り合いにペリルの素行が悪いと公開していますよ!


「まさか!彼女はなんて言うか、僕の父の義理の娘。義妹になる。立場がいろいろややこしいけどね」

 

 何と偶然。ペリルの義妹らしいが何だか嫌に他人行儀だ。


「一瞬で疑われるって?何したのアルゼ、言ってご覧?」


 ペリルがアウゼを見るが、アルゼはブルブル震えている。


「ちょっと、様子がおかしく無いですか?彼女は苦しそうですよ?ペリルさんやめて下さい!」


 助けなきゃ!と手を伸ばしたら、パン!と空気が弾けたような気がした。


「何が起こっていた?」

  

 ソージュさんがペリルに尋ねた。


「アルゼには私達家族に嘘が付けないように陣が刻まれてました。何故か今チャコに破壊されましたが」

 

 ペリルがやれやれと首を振っている


「カッはっ、はぁはぁ、も、申し訳ございませんペリル様」

 

 息を切らし蹲り謝る彼女を立たせるために手を貸した。


「ペリルさん、家庭の事に口を出すつもりはありませんが、いくら身内だからとはいえ、ちょっと酷く無いですか?」

 

 やり過ぎだと思う。ペリルが目を逸らした。


「チャコ、ちょっと待ってくれ、ペリルはチャコの事を考えての行動をしたまでだ。落ち着いてくれ」

 

 ソージュがペリルの援護をしたので、少し冷静になった。


「皆さんなんでそんなにさっきから張り詰めているのですか?彼女何かしましたか?」

 

 こんな非力な女性を寄ってたかって


「チャコ、ちょっとこっちへ……あのな?彼女、お前が勇者である事を一瞬で見抜いたんだぞ?魔道具の卸売で全国を回る。その意味がわかるか?」


 ソージュさんが私の見落としに対して、念押しをして来た。


「あ!それはかなりマズイですね?でも何でわかったのでしょう?」

 

 違う意味だと思っていたわ。


「それをペリルが聞こうとしたんだ。でも何故か彼女が抵抗した、だから苦しくてもがいたんだろう?」

 

 私のためなのに、その私がどうやら邪魔をしてしまった様ようだ。


「ペリルも抵抗するとは思わなかったんじゃないかな?その必要ないだろう?だから、今からちゃんと話をしよう。彼女を無碍にはしないから」


 ソージュさんがそう約束してくれた。私、守ってとか言ったくせに、自分勝手だったな


「ペリルさんごめんなさい。ちゃんと考えていてくれたのに」


 戻ってペリルにペコリと頭を下げた。


「……あの、少しお話しさせて貰えませんか?」


 アルゼが私に話しかけて来た。ペリルとソージュさんを伺っている。


「いいですよ?女の子同士で話しましょうか?」


 多分、彼女はそれを求めてる


「チャコ、それはダメだよ」

 

 ぺリルさんが珍しく厳しい顔で反対した。


「チャコ、少しは警戒しろ!」


 ソージュも反対のようだ。2人共が反対するけど


「2人とも、心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫ですよ?それとも私が何かされると思いますか?」


 ニッと笑うと、2人は目を逸らした。


「あの2人が……随分と強いのですね?」


 私の隣で、アルゼがなぜかブルルっと震えた。





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