美青年ドラキュラ?
ふと、意識が覚醒する。どうやら少しだけ眠って居た様だ。
一瞬、今自分が何処にいるのか分からなかった。身体が寝起きのせいか、鉛の様に重く感じて視線だけで周りの様子を伺った。
視界に入る兵舎の内装に、ああ、私は眠ってしまったんだなと今の状況を確認できた。
たった一つ、ソージュが首に吸い付いている事を除いては。
「……ソージュさん、何してるんですか?」
ビクッとした後彼は、
「すまん、わざとじゃ無いんだ!無意識だ」
と、何処から突っ込めば良いのか分からない言い訳をした。
「無意識で眠る乙女の首筋に吸い付くのはおやめ下さい。ドラキュラですか?」
あれも確か、美しさで魅了した様な?あれ、ソージュは実はドラキュラだった?思わず吸われていた場所に噛み跡がないか確かめてしまった。
「ドラキュラとはなんだ?向こうの世界では、その様な者がいるのか?」
ソージュは、反省よりも、興味が先立ったらしい
「空想の物語のお話です。処女の血を求めて、夜な夜なその美貌でお乙女を魅了して、首から血を吸う人形のモンスター?」
どんな話だっかはよくわからないが、キャラクター?としては知ってるな。
「何だそれは?そいつは何がしたいんだ?」
ソージュは変な奴だと言うが、たった今似た様な行為をしていた事、言ったほうが良いのか迷うところだが……蒸し返すのも何だかな
「世界征服とか、全人類ドラキュラ化とかですかね?確か、噛まれた人は皆ドラキュラになるか、眷属化するんだったか、そんな感じです」
私がキャラクターとして知ってるのはこれくらいだ。
「世界征服か、そちらの世界はその様な話があるんだな?」
関心した様に話を聞いているので、話を追加した。
「あちらには、こちらの世界と違って魔法はありません。でも空想上の世界では、この世界の様な魔法使いや魔王や勇者、転生に転移、タイムリープの話も沢山ありましたよ?」
想像の世界は、何でもござれだ。
「そうか、魔法はこちらだけなんだな?っと何をしている?」
私はソージュの手を持ち上げ、その長くて綺麗な指を観察する。
「私の世界の手と何か違うのかな?って思ったのです。見た目は一緒ですよね?」
つまんで見たり、つついたり、合わせてみたりした。
「チャコ、やめなさい。そう言う事をするから、吸い付きたくなるんだ!!」
ソージュは叫ぶと、ガバッと抱え込まれ、首に吸い付いて来る、
「あはは、くすぐったいのでやめてください」
髪や当たる唇がくすぐったい。ちょっとはしゃぎすぎだと思う。
「やだ。辞めない」
ソージュが、意地になってる。何か地雷を踏んだのだろうか?
「ソージュさん、そろそろやめた方がいいですよ?」
何となく、ソージュの手の動きが不埒になり始めた頃、
「チャコちゃんの走り、物凄い早かったな!」
バターン!と扉を開けるエストラゴンがそこにいた。
「ソージュ?!……もう少し我慢しなさい」
私の首筋に食いついていたソージュを見て、エストラゴンが固まる。
が、直ぐに立ち直ったエストラゴンに静かに諭され、ソージュはしゅんとした。
「チャコごめんね。大丈夫?無事だった?!」
次いで急いでペリルが入ってきて、魔法のロープを解除してくれた。
これで動ける!と立ちあがろうとしたけど、ソージュが抱きついていて離れない。
どうしようかなとエストラゴンを見たら
「チャコちゃん、申し訳ないもうちょっとだけ、そのままでいてやってくれないか?」
と、言われたので、大人しくそのままいる事にした。私はぬいぐるみか何かだったかな?
「今はオリガンが見張りをしているから、今のうちに食事をしよう。ソージュ隊長、そのままでは食べれませんよ?」
ペリルがソージュを、引き離してくれた。
彼は、時が止まる空間魔法の鞄から、串焼きと野菜の挟まったサンドイッチを渡してきた。
「……見張りをして来る」
ソージュは、拗ねたように自分の食事とオリガンの食事を手に外に出て行った。
「チャコちゃんが説明聞かずに行っちゃったから参ったよ。ソージュ隊長から後に渡すはずだった解除の陣を渡しそびれたじゃないか」
ペリルが、出て行くソージュさんを同情の目で見ている。
「そんな物があったんですね?ソージュさんには無駄な我慢を強いてしまって申し訳なかったですね」
ちょっと、可哀想な事をしたわ
「まあ、ある意味安全ではあったと思うよ?仮にも自分が好ましく思う女性に密着していた後に2人きりだなんて。僕なら全力で口説くからね?現にソージュ隊長かなり精神削れてるみたいだし」
確かに、縛られてなければ……流されていただろうなと自分でも思う。
「男性は大変ですね?」
私にはない感覚だから、いまいちピンとこないけど……
「そうだね。ついでに言うと、触れる場所で口説いても、全く相手にされないのはもっときついかな?」
ぺリルにはお見通しですね?ソージュご愁傷様です
「チャコちゃん、ソージュの奴は群がられる事には慣れていて、むしろ女を嫌悪しているが、自分からのアプローチには慣れとらんから。可能なら受け入れてあげて欲しいが……何というか、ちと、やり過ぎるからその時は遠慮せず、ダメならダメと叱ってやってくれるか?」
やっぱりエストラゴンは、ソージュのお父さんみたいだ。
「分かりました。嫌だったら止めます。先程も特に嫌な事はされてませんし、頑張って我慢していた様だったので大丈夫ですよ?」
寧ろ役得だと思ってる。
「そ、そうか?大丈夫なのか?」
エストラゴンはさっきの状態を見ていたので、そわそわしてしまった。
「……エスドラゴン、ダメなら今頃ソージュ隊長の命は無いかと思うので、察してください」
外はいつの間にか夕暮れになっていた。
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