万能な優男は好きですか?
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
武器屋を出て西門に辿り着くと、既にオリガンと、ペリルが幌馬車と共に待っていた。
「待たせたか?」
ソージュに、ついて馬車に近寄って行く。
「いえ、今丁度馬車を移動させたところです」
ペリルは何やら作業をしていたみたいだ。
「ペリル、術式は刻んだのか?」
ソージュは、事前にペリルに何が頼んだようだ。
「運ぶ前に刻んでましたよ。隊長、これすごいですよ。乗り心地は抜群です」
オリガンが、幌馬車の良さを語った
——普通のと、何が違うのかな?
「荷物は、空間魔法のカバンに入れるんですよね?幌馬車の必要はあるんですか?」
馬で移動するのに、何のためなのか不思議だった。
「荷物じゃなくて、これは人を運ぶんだよ。遠征の時は一気に進むから、御者役以外は後ろに待機するからね。馬車じゃ人数が乗れないだろう?」
ペリルが、私の質問に答えてくれた。
乗り合い馬車のようにするのか……納得だ
「ソージュ隊長がチャコが乗るから、振動が少ないようにと魔方陣を刻むように言ったんだ。僕達だけだったらそんなことしないんたけどね」
ペリルは、そう言ってウインクしてきた。さすがはイケメンだ。ウインクが似合う。
わざわざ気を遣ってくれたのかな?ありがたい。
「そんなこともないぞ?今回は少数精鋭だし、長期間になる。少しでも皆の負担を軽減しようと思ってな。普段から幌馬車を使おうとしたら、大人数だし、ペリルが大変じゃないか。だからやらないだけだ」
ソージュは、心外だと、説明していた。
「そんなことより、はよ行くぞー!」
私達は、御者をするエストラゴンに急かされた。
街から少し離れ、荒野へ向かう。
道はガタガタしているのか、音だけは響いてくるが、車内は全く揺れていない。
「ものすごく快適ですね?通常の馬車もこのような魔法陣を刻んでいるのですか?」
電車より揺れないって……すごいな
「チャコ、ペリルは特別なんだ。国内でこの魔方陣をかけるのは、ペリルとあと2人位だ魔導国のヴィントなら、数名位はいるかもしれないな」
知らなかった。ペリルって凄い人だったんだ。
「チャコ、尊敬してくれてもいいんだよ?」
にっこりとペリルが微笑みかけてきた
「……そうですね。考えておきます」
笑顔が不穏なので、考えるだけにしますね……
「チャコちゃんは手厳しいよなぁ?さっきペリルから聞いたけど勇者なんだって?こんな可愛い子が勇者だなんてびっくりだよ」
そう言いながら、隣にいたオリガンは、私の頬を触ろうと手を伸ばして来た。
バシッと音と共にその手は払われた。
「勝手に触るな」
ソージュが、シッシっとオリガンを遠ざけて私の隣に座った。
「えー、隊長だけズルく無いですか?俺もチャコちゃんと仲良くしたいですよ?」
ねー、と私を見て首を傾げて私に手を振っている。
手を振り返しながら気付いたが、オリガンもかなりイケメンだった。
でも、ソージュのせいでイケメン慣れしたのか普通に感じる様になっている。
私のイケメン耐性は、かなり上がったらしい。
「もう着くぞー」
エストラゴンが馬車を止めたのは、最初に辿り着いた櫓ではなく、また別の櫓だ。
「ここら辺なら多少暴れても問題あるまい」
エストラゴンが4頭引きで幌馬車を引いていた馬のうちの、1匹の留め具を外した。
「この馬はそのまま乗ることもできる。騎馬とは違うが安定感はあるだろう。少し休ませたら乗ると良い」
そう言いながら、エストラゴンは馬に鞍をつけ替えている。
「チャコ、的はどうする?馬に乗りながら弓を射るんだろう?」
ソージュは、私のやりたい事の内容を確認しにきた。
「そうですね、何か目印になるようなものがあれば良いのですけれど」
的になる物が有ればいいけど……どうしようかな?
「俺たちが散らばるのはだめか?」
オリガンは、自らを的にと言い出した。
「やめたほうがいいです。私の力だと的になると下手したら命を落とします」
オリガンを的にしたら、絶対吹き飛ぶ
「じゃあ僕が魔法で敵を作るよ。命中したら消えるように設定出来るし、大きさはどうする?」
ペリルがサラッと問題解決をしてくれた。
「ペリルさんは万能すぎますね?お願いします。大きさはお任せします。可能なら弱点の位置に印を付けれますか?当たりを確認したいので、敵は残るようにできますか?」
自分の軌道の結果が見たい。
「大丈夫だよ。敵は動かす?止めとく?」
ペリルは、話をしながらペンで空中に魔法陣を構築し始めている。
「どちらも適当に入れてください」
——ペリルさん本当すごいや。
尊敬出来るけど……言わないぞ。
「わかったよ。ちょっとだけ待ってて」
魔法陣を1つ書き終わる度に、キラキラした光が飛んでいく。
アレがきっと敵になるんだろう。
「チャコ、無理するなよ。落馬も気をつけろよ?」
ソージュは心配症だな
「チャコ、準備できたよ」
ペリルが、終わったと、こちらを向いた。
「仮想敵だから、一応向かってくるけど襲わないから来ても慌てないでね?」
襲わないのか……優しいな。
「分かりました」
向かって来ても安全なら、楽しそうだ。
「チャコ、馬の準備も、もういいぞ」
エストラゴンは既に乗っている。
「チャコと俺とエストラゴンが1人で乗るから、ペリルとオリガンは相乗りで頼む」
馬は4頭だから仕方がない。
「敵の場所には、僕とオリガンが先導するよ!」
ペリルは、後ろにオリガンを乗せ先導した。
「じゃ、その後チャコ、俺、エストラゴンで動くぞ」
実際の行軍みたいだ。興奮するわね
「よろしくね?」
私は、今から乗せてくれる馬に挨拶して、その背に乗った。
「では今から、チャコの訓練に出発する!」
4頭の馬は縦に一列になって駆け出した。




