レモン味の一撃
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
朝っぱらからひと騒動はあったが、食べ始めると平和そのものだった。
「ご馳走様でした!」
チャコは朝から沢山食べて、見るからにご機嫌のようだ。
「まずは、チャコの服だな?その後嗜好品を買いに行こう。3人は何か買う物あるか?」
俺はとっくに食べ終わっていた3人の男達を見渡し尋ねた。
「わしも嗜好品の補充だな」
エストラゴンのし好品は……酒だな。
「とりあえず、付き合いますよ」
オリガンは、基本、食い物を現地調達してるか?
「俺も嗜好品を少し足すかな?」
ぺリルは……嗜好品のイメージ無いな……
「分かった、基本的にチャコの買い物を優先するが、何かあれは都度言ってくれ」
とにかくチャコの服を買ってやらないと……特に夜着は絶対だ。
「チャコが使いやすそうな服は、その先の店にあるよ」
ペリルが女性物を扱っている店を教えてくれた。
「皆で行く必要あり、付いてくる
チャコは、申し訳なさそうに、ついてくる皆を見ている。
「あぁ、俺だけだと店をあまり知らないんだ。普段買い物は全てレヒテハントに任せているから。だからペリルに来てもらった。エストラゴンは武器の店と、チャコの力を見てみたいから来た。オリガンは、オリガンだな」
オリガンは何でいるんだったか……?
「隊長!俺の扱いおかしいって!」
相変わらず騒々しいが、放置して先に進む。
「……とりあえずチャコの行きたい所は、ソージュ隊長に聞いたから任せてね?」
ぺリルがチャコに優しい笑顔を見せていた。
「よろしくお願いします」
チャコも、ようやくぺリルに慣れてきたようだ。先日ぺリルに追及されたときに怯えていたから、それが解消されたなら良かった。
「買い物はどうせ早く終わるだろう。チャコの実力が知りたくてな?わしらは早々に来て同行する事にしたのだ」
エストラゴンは、勇者の力に興味があり、早くその力が見たいそうだ。
「チャコがさっき言っていた夢魔に乗ったまま弓を射る事も出来るぞ」
俺がそう伝えると
「え、流鏑馬出来るの!やっていいの?」
チャコはキラキラした笑顔で訪ねてきた。
「あ、でも弓が無い……」
彼女は武器がないことにしょんぼりしたので、
「この後、武器屋にも行くから、見るといい」
と、快諾しておいた。本来の武器はトングなのだろうけど……
「え!買って頂けるのですか?!あ、でもいい感じのあるかな?」
むむむっと、唸るが、彼女は武器の良しあしをわかるのだろうか?
「必要経費だ。好きなのを選べばいい」
身を守るためだ。ちゃんとしたのを買ってやろう
「チャコ、服屋に着いたよ」
そこは新旧様々な洋服が陳列されている店だった。
サイズ毎のエリアに分かれているが俺にはよく分からないから、ペリルに選んで貰い、必要分を購入して店を出た。
「ペリルさんは、何でこんなに女性物に詳しいのですか?」
チャコは、ぺリルの女性物の服の的確な選び方に驚いたようだ。
「んー?小さなころから女性にに囲まれていたし、たまに任務で女装もするからね」
そう言って見せた笑顔は、チャコにはびっくりするくらい女性的だったのだろう
「凄い。一瞬で変わった!」
彼女は、そんなぺリルに興味が出たのか、じっとその顔を見つめている。
「ありがとう。誰でも出来るわけでは無いから重宝してるんだよね」
ぺリルの女装は誰から見ても完璧だから、実際に助かっている。
「はー、普段はイケメンなのに一瞬で色っぽい美女になれるとか、まるで魔法ですね。凄い美人だった」
チャコは一瞬の事だったのに脳裏に焼き付いてしまったようだ。和気あいあいとしながら武器屋に向かって歩いていたら、
「あれは何ですか?」
目チャコに声に目を向けると、店先に色とりどりの飴玉が瓶に入って並べられていた
「あれは飴玉だな。欲しいか?」
カラフルで見ているだけで楽しいよな。
「可愛いですね。買ってもいいですか?」
チャコは嬉しそうに頷くと、並んだ瓶を見ている。
「どれがいい?」
たくさん種類があるので迷いそうだな。
「じゃあこれでお願いします」
チャコは迷った後、小さな瓶のミックスタイプの飴玉を指差した。
「それより大きなサイズのを買うといい。旅の間楽しめるよ」
俺は小瓶ではなく、それの3倍程入った飴玉の瓶を購入した。
「じゃあ、皆んなで食べましょうね」
チャコはにこにこしながら、受け取った飴の瓶を抱えていた。
「それも良いな」
俺はチャコから瓶を受け取り、肩掛けの小さなカバンに入れた。
「このカバンを渡しておくよ。空間魔法のバックだ。屋敷の客間位の空間があるから、今から買う物はこれに入れるといい」
俺が鞄をチャコに渡すと、中が気になったのかカバンに手を入れて確認をしている
「あ、さっきの服と飴玉!」
チャコは、購入品を見つけて声を上げた。
「入れたんだから、あるのは当然だろ?」
そんなに驚くことだろうか?
「私の世界では無いんですよ不思議バック」
そう言ってチャコは飴玉の瓶を無駄に出し入れしている
すると、その時
「ギャー!!」「キャー!!」「何するんだ!」「やめるんだ!」
通りの少し先から、騒ぎの声が聞こえて来た。
***
「何事だ?!」
ソージュさん達が騒ぎの元に向かう
「チャコはここで待っててね」
ペリルに言われたので、邪魔にならない様に私は飴玉屋の横に移動した。
「何があったんだろ……」
私は視線を騒ぎの元に向けてズームした。
そこには、大柄で”いかにも悪人”な顔の、ガラの悪い男が、子供の首元を掴み持ち上げている。
何やら喚き散しているが、生憎ここまで声は聞こえて来ない。
男の周りに目を向けると、泣きながら男に縋る母親と、土下座させられて、足蹴にされている頭から血を流している父親らしき男がいる。
「酷いことをするわね……」
様子を見に行ったソージュさん達は、興奮した男が子供に危害を加えない様に、刺激しないようにゆっくりと近づいている。
でも、これ以上時間をかけるのは、父親らしき人が危ないと思う。
「やるか」
私は、カバンから飴玉をひとつ取り出した。
目測で男の位置を把握。
威力を出来るだけ小さくする為に、ダーツの容量で投げる事にした。
軌道上に人が入らない様に少しだけ右横にずれる。
皆、揉め事に慣れているのか、気にしているのは騒ぎの中心にいる人達だけだ。他の人ふ気にせず各々の目的を果たしている。
皆の視界に入っていないのを確認して……
「勿体無いけど、仕方がないよね」
人差し指と親指だけで、薄いレモン色の綺麗な飴玉を持ち、ダーツの様に投げる
ヒュッ
「ぐわぁ!」ズズンガラガラガラ
男の手の甲に飴玉を当てて拳を砕く。。
俺弾かれた男は、ついでに吹き飛んで積み重なった木箱に突っ込んだ。
掴まれていた男の子が落ちる瞬間、咄嗟に母が無事抱きとめていた。
「一件落着」
ついでに同じ色の飴玉をひとつ食べてみた。
レモン味かな?




