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トングが聖剣?使わないけど〜最強女勇者はイケメン達に守られていたいんです〜  作者: 黒砂 無糖
勇者見参

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2/201

迷子のナッツ売り

見つけてくれてありがとうございます。

更新は不定期になります。出来る時に頑張ります




のんびり歩いて櫓見張り台の櫓にある宿舎のような場所へ到着した。


 周りに人はいない。兵士は山猪の処理に忙しいのかもしれない。


 扉を割らないようにそっと叩く


「すいませーん!誰かいませんか?」


 すると頭上から声が落ちてきた。


「どうされましたか!こんな所でおひとりですか?今降りますので、ちょっと待ってください!」


 丁寧に対応されたが……荒野に一人とかおかしいし、何かに襲われて一人で逃げたことにする?


「お待たせしました。このような危険なところでどうなさったのですか?」


 第一村人ならず、第一遭遇甲冑兵士だ。言葉が通じてよかった。チート万歳なのかな?


「あの、何かに襲われて慌てて逃げたら迷ってしまって。ここどこですか?」

 兵士その1は、私が背負っている籠を見て


「ふむ、その背中のものは何だい?」

 と尋ねた。職務質問と荷物検査かな?


「栗です」

 と念のため手袋をはめて、イガイガをずらして中を見せると


「ナッツか……クリ?と呼ぶのか?この籠の中は全部そうなのかい?」

 こちらで栗はナッツなのかな?分類がないだけかな?


「はい、全部そうです」

 櫓の下に空の箱があるのを見つけたので、私は箱に近寄ると


「ここに一度全部出しましょうか?」

 と兵士に確認した。


「そうだな、お願いできるか?お嬢ちゃんを疑うわけではないが、荷物確認は一応規則なんだ。沢山あるようだから手伝うよ」

 兵士その1、いい人だ絶対。だって、空箱の中をわざわざ洗って乾かしてくれてるもの。


 ——そう、魔法で。


 やっぱりあるんだよ魔法。なんか色々おかしいものこの世界。平然としてるけど驚いてるわ。


 でも……ああ、やっぱりかって感じ。


「ほら、これで綺麗だ。ここに一旦入れるね?」

 兵士その1、いや、お兄さんは、わざわざ箱を綺麗にして、丁寧に入れ替えながら


「ナッ……クリを町に売りに行くのかい?一人ということは辻馬車、それか馬に乗ってきたのかな?」


 お兄さん、呼び方クリじゃ無くてもいいよ?身元確認ね、馬車だと辻褄合わないよね。


 馬が襲われた……でいいかな?


 流鏑馬にあこがれて一時乗馬も習ったから、今でも乗れる。何なら月一乗っていた。


「馬です。森の横で休憩中、馬から離れた時に、何かに襲われて……何かは馬を追って行ったので私は大丈夫でした」

 こんなんでいいかな?


「そうか、ここまでよくたどり着いたな」

 お兄さんは、憐みのこもった目をしながら、頭をなでてくれた。


 私を、幾つだと思っているのだろう?お兄さんは身長が190cmくらいありそうだ。


 こちらは148cm


 そりゃ、190cmから見たら子供だよな……

 お兄さんは、栗の確認を終えると、また丁寧に籠に戻してくれた。


「疲れただろう。兵舎の中で休むかい?」

 魅力的な提案だが、いい人過ぎて、なんだか申し訳なくなって来た。迷っていると


「そうだ、高い所は平気かい?今は、任務中で送ってあげれないし、一人で外にいるのは危ない。兵舎が気が引けるなら、一緒に見張り台に来ないか?」


 とても素敵な提案だ。


 高い所なら、別の町の場所がわかるかもしれない。もちろんは遠慮しない


「高い所は平気だし好きです。一緒に上がってもいいのですか?」

 多少うろついたとしても、子供だと思って気にしないだろう。


「よし、じゃあ荷物は売り物だし心配だよな、もって上がろうか」

 なんとまあ、至れり尽くせりではないですか。


「そうだ、ナッツの上に掛かっていた大量の針はどうすればいい?」

 イガを知らないのかな?


「栗の日焼けを防ぐので掛けていきます」

 手袋をはめてイガを戻す


「そのグローブは丈夫なんだね?ナッツ職人だね」

 爽やかにお兄さんは言うが、ナッツの職人なんているのだろうか?


「足元気をつけろよ」


 お兄さんは小さいらせん階段をスイスイ昇っていく。石造りの櫓の内側にぐるりと階段がある。


 中には見晴台から、直接降りて来ることが出来るポールがある。消防隊が使うやつと一緒だ


「遅くなって済まない。ナッツ売りの迷子の少女だったよ。馬に逃げられたらしい。一人にするのが可哀そうだったから連れてきた。あれから問題はないか?」


 お兄さんは仲間の兵士その2と3に説明する。


 皆、甲冑姿で、頭の装備で顔が見えないので入れ替わると、どれがお兄さんか分からない。


「隊長、先程遠方で異音が確認されましたが、それ以外は変化はありません!」

 あ、さっきの山猪の事か。


「隊の様子はどうなっている?っとそうだ、済まない。荷物を置いて、備品を触らなければ好きにしていていいよ。疲れているならこの椅子に座りなさい」


 ——お兄さん、マメだね。


 見晴台は意外と広く中央寄りに小さなテーブルと椅子が2客ある。傍に水がめと、保存箱のような物と、お湯を焚く為のコンロと、小鍋が幾つかある。


 私は言われた通り、とりあえず椅子に座る。


 お兄さんは先程の兵士と、向こうでやり取りしている。


 それをぽやっと見ていたら


「ナッツを売りに来たのかい?」

 コトリと木製のカップを私の目の前に置きながら、兵士その3が話しかけてきた。


「飲みな。だいぶ歩いたんだって?馬は残念だったね。でも、君もナッツも無事でよかった」

 ここの兵士達、皆凄くいい人だ。私が子供っぽいからかな?


「はい、ここに来れて助かりました。」

 カップに入っているのは、温かいハーブティーに似たものだ。


 飲むと体がポカポカする。思わずほっと息を吐いた。兵士3の空気が何となく緩んだ気がする。


「自己紹介をしよう!俺はオリガン!2番隊の騎士。ナッツ売りのお嬢さん、名前を聞いてもいいかい?」


 こちらが緊張しないように気を使ってるんだろう。あえてチャラい感じで聞いてくる。


「……私は」と答えようとしたら


「おい!オリガン!子供をナンパするな!」


 スコーンと何かがオリガンさんの頭に直撃


「ぐあっ!」

 頭装備ついててよかったね?


 今はお兄さんからお叱りを受けている。気遣いじゃなかったのか……本能なのかな?


「ちなみに僕はペリル。こんにちは」

 兵士2は、ペリルさん。スマートに握手して去っていった。


 いつの間にかオリガンさんは追い払われていた。


「あー、あいつもか。ごめんね騒々しくて。騎士団は男ばっかだから、アイツら女の子を見ると直ぐに声をかけるんだ。もはや習性か?」

 お兄さんは、二人を見ながらやれやれと肩を落としている。


「あの、お兄さんのお名前は聞いてもいいですか?」

 第一村人なのに、名前を知らない。


「ん?言ってなかったか?俺はソージュ、なんか今更だな呼び方はなんてなんでもいいぞ」


 確かに、お兄さん呼びが定着してしまったが、ほかの方は名前で、お兄さんだけ違うのも変だよね?


読んで頂きありがとうございました⭐︎

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