おかしなお菓子の鑑定
見つけてくれてありがとうございます。
更新は不定期になります。出来る時に頑張ります
厨房から戻ると、入り口扉の手前で、中から声が聞こえてきた
「チャコちゃん本当は戦いたくないんだろうな。あんな小さな女の子だ。本来は戦場になんていくもんじゃない。だけど、今は一刻も早く魔王を討伐しなければならない。可哀そうだな」
エストラゴンは庇護欲と義務感に揺れているようで、声に迷いがあった。
「そうだな。彼女は血を見るのが怖いようだ。なんで彼女が勇者なんて大層な役回りを背負うことになってしまったんだろうな」
ソージュさんは、知ってなお、子供だと思っていそうだ。
「でもチャコは頑張ると言ってくれた。俺たちを頼ってくれた。だから、どんなことがあっても信頼を裏切るようなことはいけないな。安心して笑ってられるように……必ず守ってやらなきゃな」
ソージュさんはちゃんと考えてくれているんだな。
姿が見えず、声しか聞こえないから……より一層、本心だとわかる。
「彼女の能力はかなり特殊なような気がする。歴代の力押しの勇者とは違ってなんていうか……ちゃんと基礎があるんんだ。計算の上で発言しているように思う。知識がある感じ。でもまあ、とにかく、彼女がのびのびと生活できるように僕も支えていこうかな」
ぺリルさんさんは鋭いんだよな……この人には隠し事出来ないな……嬉しいけど怖いな
立ち聞きをしてしまったせいで、どうしよう、入りにくいな、と入り口のドアの前で固まっていたら、後からレヒテハントが追いついてきて、中の声を聞きふわっと笑った。
「安心してください。あの方達は心がとても優しく、そしてとても強いです。信じて話をしてくださってありがとうございます。私共使用人一同、チャコ様に協力するよう旦那様から申し使っております。何か不安があったり、不便だったり、困り事がありましたらいつでもご相談くださいね」
こんなことを聞いてしまっては、涙が出そうになるじゃないの!私の涙腺は決壊寸前だわ!
レヒテハントはノックをすると、するりと内側に入り扉を開けて私を招き入れてくれた。
「皆様が優しい言葉を紡いでいらっしゃったので、チャコ様は固まってしまい、中に入ることが恥ずかしくてできなかったようですよ?」
レティヒハントさん、ちゃんとツッコミは入れるんですね……
私はレティヒハントさんの茶目っ気に力が抜けて、ふはっっと笑い
「栗のお菓子が出来上がりました。一緒に食べましょう!」
といって、皆の前にトレーのままお菓子を差し出した。
「もう出来ていたのか?早速食べても良いか?」
「はい、ソージュさんぜひ食べて感想をください!」
「これか?随分小さいな」
「そもそもエストラゴンさんには栗そのものが小さいですしね」
「へぇ、チャコちゃん、これ鑑定してみていい?」
「ぺリルさん、何か見えますかね?」
3人とも様々な反応をくれる。
しかし、皆食べる前に、ぺリルさんの鑑定が気になったのか、目の前の箱に意識が集中している
「へぇ、面白いな」
ぺリルさんは鑑定結果を見て1人で納得している。
「何だ!何かあったのか?」
エストラゴンさんも食いついている。ソージュさんは黙って見ている。
——何か面白い結果でも出たのだろうか?
「いやね?キントンは滋養強壮で、甘露煮は結構強めの癒しの効果があるみたい。試してみようかな?」
ぺリルさんさんは袖をまくると、卓上にあったペーパーナイフを腕に突き立てた。
「ちょ、ちょっと!!何やってるんですか!」
血が流れるのを見てしまい、慌てて何か押さえる物を探そうとしたら
「チャコしゃん大丈夫だよ?まあ、みてて」
何を考えているのか、ぺリルさんは、甘露煮の液体をたらりと傷口に垂らした。傷に甘露煮エキスがついた瞬間パァッと光り、
——跡形もなく傷口が治っていた。
「凄い……ですね……」
それより、躊躇なく腕にナイフを突き刺せるぺリルさんが怖い
「凄いな」
ソージュさんは純粋に感心している
「食べても同じか?」
エストラゴンがぺリルさんに尋ねた。
「更に面白くなりそうですよ食べて見てください」
ぺリルさんがエストラゴンさんが甘露煮を食べるように伝え、ペーパーナイフを渡した
「やってみてください」
ぺリルさんの言葉に、エストラゴンさんは、迷わず突き刺したが……
——刺さったはずの腕は無傷だった。
「無効化だと?そもそも、結界と言っていたよな?菓子にした事で変化したのか?」
わぁ……ファンタジーだぁ
「とりあえず、コッホにレシピは門外不出だと伝えておこう」
ソージュさんはレヒテハントさんを厨房の使いに急いで走らせた。
異世界の栗、凄いな
滋養強壮。既に元気な人に必要かしら?
よかったら感想・ブクマ、応援してもらえるとすごく励みになります!




