勇者の召喚は魔法陣でやるらしい
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部屋の中には、張り詰めたような空気が流れている。皆が私の言葉を聞き逃すまいと……
落ちつつくのよ。こんな時こそ平常心だわ。
私は、何とかごまかしたかったので、こちらから質問をすることにした。
「質問があるんですけれど、そもそも魔王っているんですか?それって、ただの魔族の王なんですか?」
排除された魔王は、ただの愚王なのだろうか?それとも、魔王という存在はいつだって傍若無人で厄介なのだろうか?
「そうだな。基本ただの魔族の王だ。問題なく統治しているものもいる。今正にだが、稀におかしなことをやり出す奴がいるんだ。そいつは討伐対象だ。放っておくと被害が拡大するからな」
エストラゴンさんが私の質問に答えてくれるようだ。
「魔族は血の盟約がある。だから王には従わざる得ないんだ。愚王を討伐すると、むしろ魔族に感謝されるぞ。敵は本来はたった1人なのだが……いやいや従っているとはいえ魔族は強くてな。普通の兵士は、なかなか魔王までたどり着けないんだ」
そうなんだ。血で従うだなんて厄介ね。偉い人が力をはき違えて使う人だとだと、従わなければならない部下は苦労するわよね。
「戦いたくはないが、戦わなきゃいけない。そんな魔族たちを倒さなきゃならないのはきついぞ。殺めることなく追い払うことができるなら、それに越した事は無い。足止めしている間に、早急に魔王を討伐して、戦う気のない魔族を早く解放してやらなきゃならないんだ」
エストラゴンは、魔族に知り合いでもいるのか、彼らの心配もしている。
私に……何が出来るというのかしら。
「今までは、どうやって倒していたんですか?」
もし、勇者の召喚の話になったら、こちらも話しやすくなる。
——何とかタイミングを計らなければ。
「俺が子供の頃親から聞いた話だと、大体どの時代も、おかしな魔王が現れた時は、女神の采配なのか、どこからともなく勇者という存在が現れたらしい。国によっては、魔方陣を使って異国から勇者を召喚することもあるようだよ」
ソージュさんがいい情報をくれた。言うなら……今なのかもしれない。
「確か、魔王が判明してから、フェルゼンでは昔、勇者召喚の儀式を行っていたと言っていたような気がする。今回、耳にはしたけど、実際にやったかどうかは聞いてないけどね」
ぺリルさんはかなり貴重な情報を教えてくれた。
バラすなら、もう少し聞いてからでもいいか
「呼ばれるのは……何人ぐらいなんですか?」
もしかして、他にもいるんだろうか?他にもいるなら少しは気が楽なんだけれど……
「勇者召喚で、呼ぶ勇者は1人だけだ。聖女もいるはずだよ。聞いた話だと、魔法陣の構築をミスして召喚の儀式が失敗に終わる事はよくあるらしいよ」
ぺリルさんは魔法使いだからか、随分と召喚のやり方に詳しいようだ
「勇者が召喚されなかった場合はどうなるのですか?魔王は……勇者じゃなくても倒せるのですか?」
それなら、勇者と言うのは隠して……隠れてこっそり倒すなら、私にもできそうだ。
「歴史では過去に何度か勇者なしで討伐しているはずだ。ただその時はとても強い武人がいることが多い。今の魔王ならソージュ単体で倒せるかもしれんな」
エストラゴンは誇らしげに、笑っている。
なら、尚更、私じゃなくてもいいわよね?
「召喚された勇者は、召喚された国に属さなければならないのでしょうか?いきなり呼ばれて『はい倒してください』なんて都合が良すぎですよね。逃げ出した勇者はいなかったのでしょうか?」
素朴な疑問だし、私も可能なら、魔王討伐なんて物騒なことは避けたい。
「言われてみれば、そうだよな。いきなり知らないところに連れてこられて『はい戦ってください』なんて虫がよすぎるよな。勝手に呼びつけて自分の国のために働けなんて……確かにおかしな話だ」
ソージュさんが賛同してくれた。気持ちを理解してくれる人がいてくれたのは、ちょっと嬉しい。
「召喚される国によるんだろうとは思うけれど、それなりに待遇良くすることで、納得して魔王討伐に行っている人も多いと思うよ。勇者として呼ばれるのは大概男だし。美しい御令嬢とか、中には王様の娘を妻にする者もいる。欲深い人は簡単に勇者になってくれると思うよ?まぁ普通は嫌だよね」
ぺリルさんは……すごく的を得ている
この人は、人心掌握に優れているようだし、さっきから、エストラゴンさんと、ソージュさんを取りまとめているし、補佐官的な役回りなんだろうな。
「国内で勇者が生まれればいいのに。そうすれば自分と国のことだったら納得ができるような気がする。
それか、せめて召喚する前に尋ねてくれればいいのに。『あなたは勇者になりますか?』って。
私にも、拒否権があっていいと思うんですよね」
あかん。流れでついつるっと喋っちゃった。




