イケメンの腕まくり
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屋敷の厨房設備は、レストランの厨房かと思うほど立派でとても綺麗に整頓されている。
真ん中の作業台に、栗の入った籠が居心地が悪そうに、顔が映る程ピカピカに磨かれた鍋の隣に置かれている。
「ここにある物は使っていい。欲しい物があればディアコッホに言えば用意してくれる。この屋敷の料理長だ」
ソージュさんが、恰幅のいい料理長を紹介してくれた。
「初めまして。お嬢さんが珍しいナッツの菓子を作ると聞きまして、面白そうなんで参加させてもらいました。ディアコッホです。よろしくお願いします」
ディアコッホさんが握手をして来たので、その手を握り返す。良く働く分厚い手だ
「チャコです。こちらこそ急なお願いを聞いていただき、大切な厨房の使用許可を下さりありがとうございます」
私は、手を握りながら頭を下げる
「いやはや、ご丁寧な挨拶をありがとう。坊ちゃん、いい子じゃないですか!」
料理長はソージュさんの側へ行くと、肘でうりうりと小突く
「コッホ、お客様の前で砕けすぎです」
レヒテハントが、音も無く現れた
「レヒデハント、まあいい、コッホよろしく頼むよ、後は任せるな」
手を振りながらソージュさんは厨房から出て行った。ソージュさんは従者達と長が良さそうだ。
「お任せください。チャコさんナッツはどうしますか?」
料理長はカゴを覗こうとして、トゲを触り「イテッ」っと言っている。刺さってようだ
「大丈夫ですか?私の事はチャコでいいですよ。私もコッホさんと呼んでもいいですか?」
そのほうが覚えやすい。
私は手袋をはめてトゲを退かした。
「コッホで!むしろお願いいたします」
コッホは、栗を手に握りしめて良い顔で笑った。
いかにも美味しそうなものを作りそうな、コッホさんに手伝ってもらえるのはありがたい
「コッホさん、栗はちょっと下準備に時間がかかるのですが、大丈夫ですか?」
ほかのお仕事は大丈夫なのかな?
「大丈夫だぞ?今日の仕込は済んでるし時間になったら他にも料理人はいるから問題ないよ。何を作るんだい?」
コッホさんは、やる気に満ちていた。料理人だし新しい素材が気になっているのだろう
「とりあえず、栗きんとんと、日持ちのために甘露煮を作ります」
砂糖、いっぱい使うけど、ほんとにいいかな?
「なんだかよくわからんが、何をしたらいい?」
こっほさんは、栗を大きなボールに移し替えている。
「まず何よりも、その大量の栗を茹でて皮をむきます」
大きな鍋が借りられてよかった。
「これを全部か?大変だな」
コッホさんは、山盛りの栗を見て驚いている。
「それ、全部です。」
だから剥くのはもっと大変です……
「とりあえず、大鍋で茹でればいいか?」
二人でお湯が炊けるのを待っていたら、レヒテハントがやってきて
「コッホ、ディナーの追加をお願いします。エストラゴンとペリルです」
と、伝えている
「エストラゴンさんとペリルさんが来てるんですか?」
知った名前だと思って思わず尋ねたところ、
「何か、旦那様にご用事があるとか。おそらく用事じたいはたいした事なく、チャコさんを心配しているのではないでしょうか?」
あー、確かに心配してるだろうな……と考えた所で気付く
「あの、私、先程直ぐに風呂場に拉致……いえ、案内されたのでキチンとご挨拶してなかったのです。今、ご挨拶しても良いですか?」
急にお邪魔したのに、挨拶すらしてないとか恥ずかしい。
「こちらこそ、お客様にご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。私は筆頭執事のレヒテハントと申します。ご事情は旦那様から聞いております。大変でしたね?アウスリーベン家へようこそ。ゆっくりお過ごし下さい」
レヒテハントはお手本のような綺麗なお辞儀をした。
「レヒテハントさんご丁寧にありがとうございます。チャコと申します。今日は急に迎え入れて下さり、ありがとうございました。困っていたので助かりました。後、厨房の手配もありがとうございます」
私も丁寧にお辞儀をした。
「チャコちゃん、お湯が沸いたよー!これ、このまま入れてもいいかな?」
コッホさんに呼ばれ、一礼して鍋に向かう。
「お願いします!一旦全部茹でて、皮を剥きます。力仕事になりますよ!」
さて、頑張ろう
「チャコ、今何してる?」
栗が茹で上がった頃にソージュさんが、また厨房に戻って来た。
「今から、皮をむきます。力仕事ですよ?やりますか?」
人手はいくつあってもいいい。
「チャコちゃん、一応俺たちの主人なんで使わんといてください」
コッホさんが、微妙な顔をして止めてきた。
「一応なのですか?」
良いのか?それで
「一応なのか?」
ソージュさんもその反応なのね?
「結構、普段から勝手に厨房うろうろする主人です。気づいた時には自分で何か作って……何なら俺たちに振る舞う時すらあります。ありがたいけど困っています」
あ、それは困るかも?私からするとやらないより全然良いと思うけどね
「だからマッシャーが理解できたのですね、じゃあ、問題ありませんねソージュさん手伝ってください」
立ってる者は親でも使え!だ
いそいそ腕まくりをしながら近寄るイケメン。
腕まくりだけで様になるなぁ……騎士だから当然だろうけど腕の筋肉の付き方もかっこいいとか……
この人はどれだけ神に愛されているんだ?
イケメン+料理=最高
イケメンの腕まくりはいいと思います。
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