手がかり
涙が枯れるまで泣いたイヴリスはその日村だった場所でアリシアが持ってきていた毛布に包まれながら一夜を過ごすこととなった
「夕食出来たわよ。食べましょ」
アリシアが夕食を勧めてくる。こんな時でも確かにお腹は減っていたがとても食べる気分ではなかった
弟の手がかりすら見つけられず八方塞がりな状態。イヴリスが一人で生きていくにはまだ幼すぎる
誰かに頼ろうにも村の者は全員殺された。僅かな可能性だろうが生き残っているかもしれない父親達を探すのが現状の最善手だと思う
だが先程も述べたように子供のイヴリスが一人で行動を起こすには限界がある
整理がついていない頭で必死に思考を巡らせる。そこへ今までイヴリスの様子を見守っていたアリシアが口を開いた
「ねぇイヴリス、私と一緒に暮らさない?」
頭を悩ませているところにアリシアの唐突な提案がきてイヴリスは即座に返答することができなかった
アリシアは答えが返ってくる前に続けて語りかけてくる
「貴女のことが心配なのよ。こんな小さい子を一人にできないわ」
正直言ってアリシアの事はそこまで嫌いではない。勿論完全に信用しているわけではないが、少なくとも村を襲ってきたような野蛮な人間とは違うと子供ながらに感じていた
だがアリシアと共に生活するということは他の人間とも接触する機会が増えるということ。そこに関してやはり抵抗があった
「・・・あんな人間だらけの町になんて住めるわけないだろ」
「あら?私と一緒に暮らすという事については問題ない感じなのかな?」
ニヤニヤとこちらをからかう様な表情をしながら窺ってくるアリシア。こっちの気が沈んでいるというのにいつもと変わらない態度で接してくる
少し苛立ちはしたが、変に気を遣われるよりかはずっとマシだった
「じゃあこうしましょ、あの町を離れて弟さんを探す旅に私が同行して守ってあげる。これから何をするにしても貴女一人だけじゃ難しいのは分かるでしょ?どう?いい条件だと思うんだけど」
「でも・・・家を手放す事になるんだぞ」
「あーあそこの事?あの家は使われていなかったから一時的に借りていただけよ。町にだってそこまで長く住んでたわけでもないしちょうど出ようと思ってたところだったから気にしなくていいわ。私は元々一箇所に留まらずに色んなところを旅して回っている人間だからね」
イヴリスに気を遣っている様子は感じられない。自分の為にそこまで考えてくれている相手、それが村を襲った奴らと同じ人族だとしてもイヴリスはもう一度信じてみたくなった
迷った挙句イヴリスが出した答えは・・・
「お、弟が見つかるまでだからな」
「よし!決まりね!これからよろしくね」
「勘違いするなよ。弟が見つかるまでの間お前を利用してやるだけなんだからな」
「それでいいよ。よし!じゃあそうと決まったら明日町に帰って旅の支度をしなくちゃね」
こうしてイヴリスとアリシアの旅が始まることとなった。アリシアの提案でイヴリスは念の為名前をイヴという偽名に変えた
翌朝、イヴリス達は町へと戻った。去り際にもう以前の面影がない自分の育った村をしっかりと目に焼き付け、自分の手でまたいつか魔人が住む村の再興を夢に抱いた
町に帰り身支度を整えたアリシアがお世話になった達に挨拶をして回った後いよいよ出発
そこからは様々な人間の村や町を巡って情報を収集した。人間に魔人とバレないように生活するのは思いの外難しくはなかった
魔力の差があるだけで見た目だけは基本人間とあまり違いはない
それでもやはりあの光景が目に焼き付いていてイヴリスは訪れた場所に順応することができず、基本宿屋に閉じこもっていることが多かった
情報の収集はアリシアに任せっきり、そもそも子供がいったところで相手にされない場合があるので仕方が無い面もあった
「私足引っ張ってるだけじゃん・・・あんな威勢いいこと言っておいて移動する時以外外に出られないなんて」
以前は森の中を駆け回っていたりして体を動かすのが好きだった。だが最近はそういうのが無くなってしまった
今はどちらかというと魔法の扱い方についてアリシアに教わっている。悔しいが現時点ではアリシアの方が圧倒的に魔法の扱いが上手い
幼いイヴリスでも人族よりは魔力がある。だがイヴリスは魔力の制御が上手くいかず、周りが次々と魔法を使えるようになっていってもイヴリスだけは未だに扱えずにいた
両親はそのうち使えるようになると言ってそこまで重く捉えていなかったが、やはり同年代の者達より遅れていると本人は焦ってしまう
宿の部屋で一人黙々とアリシアに教えてもらった魔法の訓練を行っていると、町で情報収集をしていたアリシアが帰ってきた
この時にはもうイヴリスがアリシアと出会って一月は経っていた。なのでアリシアが普段よりも上機嫌だというのが分かった
「朗報よイヴリス!貴女の弟と思われる人物を見たっていう人を見つけたわよ!」
「えっ!?本当!?」
アリシアが仕入れてきた弟を見たという貴重な情報。眉唾物かもしれないが僅かな可能性に望みをかけてイヴリス達はその情報を持っている者の元へと足を運んだ
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次回から他作品を投稿するのでこちらは不定期投稿になります




