奪われた
突如魔人の村を襲撃しにきた人族の軍隊、包囲されてしまったイヴリス達魔人は逃げ場を失い戦って包囲を抜けるしかなかった
「今まで俺達を騙していたんだな・・・!」
「騙される方が悪いんだよ」
「お前達の国に行った仲間達はどうした」
「さぁな、もうこの世にはいないんじゃないか?」
「貴様等・・・全員殺してやる!」
得意の魔法を駆使して向かってくる人間達を屠っていく
しかし奇襲を食らったことで半分近い魔人がやられてしまっていて徐々に相手の物量に押され始めていく
個々の能力は魔人の方が格段に上、だが人族はそれを人数でカバーし圧倒的してくる
一人、また一人とイヴリスの仲間が殺されていき戦況は劣勢なものとなっていった
「2人とも急いで家に入って!」
人族の包囲網を突破することができないと判断した母はイヴリス達の手を引いて家の中へと戻る
押入れの場所までやって来るとそこの床板を外し始めた。子供2人がギリギリ入れる程度のスペース、普段は貯蓄している食料等がある場所だがそれらを全て外に出してイヴリスと弟を床下に入るよう指示した
「いいイヴリス、※※※※。どんな事があってもお母さんがいいって言うまでここから出ちゃダメだからね」
「お母さんは・・・?」
「お母さんは村の人達の加勢にいかなくちゃいけないから。それが終わったら迎えに来るからね」
「嫌だよお母さん・・・どこにも行かないで・・・」
外へ向かおうとする母親の手を力強く握って離そうとしない弟。本能的に母親がどこか遠くへ行ってしまうのではと感じたのかもしれない
そんな姿を見た母親は涙を堪えながら2人を強く抱き締めた
「愛しているわ2人共・・・貴方達は何があっても生き延びて。イヴリス、※※※※をお願いね」
それが母親からの最後の言葉だった。外に消えていく母親に向けて必死に呼びかける弟を抱き締めながら床下に潜り、床板を戻して身を隠した
外から聞こえる悲鳴や怒声は中々収まることはなく、震えながらそれが聞こえなくなるのを待っていると、扉が荒々しく開けられるような音が聞こえてきた
家に何者かが入ってきた。足音からして入って来たのが両親ではないことはすぐに分かった
ズカズカと中に入ってくる足音がして暫く沈黙が続いたと思ったら今度は棚を倒したり食器が割れるような大きな音が聞こえてくる
自分達を探しているかもしれない。そう考えたら心臓の音が高鳴っていく
必死に口を押さえ気配を消そうとする。だが弟は見つかるかもしれない恐怖に耐えることができず口を開けてしまう
「イヴリス・・・うむっ!」
イヴリスは弟の口を塞ぎ目で弟を制する。それと同時に物をなぎ倒していた音もピタリと止む
バレたか、そう思って半ば諦めかけた
「おい、終わったからさっさと帰るぞ」
「ん?・・・・あぁ」
仲間に呼ばれたことで人間達は家の外へと出ていった
間一髪助かったが外の様子がおかしい。先程まであれだけ騒がしかったのに今はもう収まっている
様子を確認したい気持ちでいっぱいだったが母親との約束ごあるのでグッと堪えた
母親を信じてここで待つ。それだけを考えていたらいつの間にかイヴリス達は眠ってしまった
「・・・リス、・・・イヴリス起きてよ」
「ん・・・※※※※」
弟に揺すられて目を覚ます。人間達が攻めてきてから何十時間たっただろうか
未だに母親が迎えに来ることはない。外からはもう足音すら聞こえてこない
耳を澄ましていると弟の方からお腹の音が聞こえてくる。母から出るなと言われたが飲まず食わずで狭い場所に2人で閉じ込められていてもう限界が近かった
イヴリスは意を決して弟と共に外に出ることを決めた
音を立てないようゆっくりと床板を外し、顔だけ出して周囲を確認。周りに人間がいないことを確認したら弟を引っ張り上げて扉の方へと向かう
異様なまでの静けさに緊張が走る。覚悟を決め扉を押して外を見ると、イヴリスは自分の目を疑った
「なにこれ・・・」
2人を待っていたのは見るも無惨な地獄のような光景、いくつもの人間の死体に混じって村の仲間達も大勢横たわっていた
手や足だけでなく首と体が繋がっていない状態は死体を初めて見るイヴリスでもそれがもう生きていないというのは理解できた
毎日挨拶を交わしていた人や遊んでもらったことがある人、少ない人口少ないこの村では全員と何かしらの関わり合いを持っていた
そしてそこにはあの床下でずっと帰りを待っていた人物もいた
「お母さん・・・?」
目の前には血を流してピクリとも動かなくなった母、それを見た弟は何かを叫びながら母親の元に向かっていっていたがイヴリスはただそこに立っていることしかできなかった
頭の中で何かが壊れるような音がした。比喩などではなく確かにそんな音が自分の頭の中でしたのを感じた
次の瞬間、激しい頭痛に襲われたイヴリスは頭を抱えその場で倒れてしまい気を失った。意識を失う前に微かに見えたのは母の亡骸と泣きじゃくる弟の姿、それがイヴリスの家族との最後の記憶だった
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