武器完成
ゴルドをベッドへと運んできたイヴリスは一旦家を出て、自宅にあった適当な食べ物を持ってきてそれをゴルドに与えた
「おいゴルド、お前随分と痩せたんじゃないか?まともに飯食べていたか?」
「さぁの・・・剣を作ることに夢中であんまり覚えておらんわ。そういえばたまに村の者達が気にかけて食事を持ってきてくれているみたいだがそれもあまり手をつけていなかったの」
イヴリスにそう話しながらもゴルドは食事を続けた。久々に口にする料理に手が止まらないようだった
「その分では大分剣作りに苦戦してるんじゃないか?今どの程度進んでいるんだ」
イヴリスの問いにゴルドはようやく料理を口に運ぶのを止めて質問に答えた
「剣はもう完成しておるぞ」
「なんだ、剣の方はもう出来ていたのか」
「あぁ、夢中になって打っていてイヴ殿が来る数十分前に完成したんじゃ。それで後片付けをしていたらあの有様よ。ぶっ通しでやってたツケが回ってきたんじゃろうな」
「なるほどな、なら早速その剣を見せてくれないか?お前が魔工で作り上げた処女作がどんなものか気になってな」
どんな剣に仕上がったのか興味があったイヴリスはゴルドに剣を見せてもらえるよう頼むが、ゴルドは首を縦には振らなかった
「イヴ殿、すまんがこの剣を最初に見せるのはアリシア殿にしたいんじゃ。やはり使い手となる者に一番に見てもらいたくての。こればっかりは譲れんのじゃ」
「なるほどな、別にいいぞ。では私もそれまで楽しみにしていよう。ご苦労だったな、お前は無理していた分酒でも呑みながらゆっくり休むといい」
ゴルドを労った後イヴリスは鍛冶場をあとにした
アリシアが戻ってくるのは明日、その間に村の様子を見て回ることにした
正体を明かしてから日が経ったが、村人の様子に変わった様子はない。最初はやはり少しぎこちなく、無理してイヴリス達を相手してるんじゃないかと思ったが次第に前と変わらない様子で接してくれるようになったのでその心配は杞憂に終わった
子供の心というものは純真なもので、まだあまり魔王という存在を理解していないからかイヴリスが魔王と分かった後は畏怖の対象というより強さの象徴みたいな感じで憧れられている状態。大人達の接し方が戻ったのもその光景を見たからかもしれない
だがマリアに対してはやはり上手く距離が掴めないようで対応に戸惑っている様子だった
マリア自身がそういう距離を望んでいるようなので、無理に仲を取り持とうとしても逆効果になってしまうと考えて様子見をすることにしている
「あっ!魔王様だ!」
村の中心まで来ると遊んでいた子供達がイヴリスに気がついて駆け寄って来る
「魔王様魔法教えてー」
「別にいいが魔王様と呼ぶのはやめろ。もう私は魔王じゃないんだから」
「なんでー?魔王様ってかっこいいじゃーん」
「かっこいいか?そんな事考えた事ないな」
「ねぇねぇ、またあれやってよー」
「あれ?あぁ、高い高いってするやつか」
子供達がバタバタと腕を大きく振ってきた。イヴリスは子供達を持ち上げるとほんの少しだけ力を込めて子供を空高く投げ飛ばした
周りにある樹々を優に超える高さまで子供を放り、落下してくる子供を風の魔法で優しく受け止める
この遊びがスリルがあって面白いのか子供達の間で人気になってしまい、顔を合わせる度にせがまれるようになってしまった
「おもしろーい!もっかいやってー!」
「ずるい!次は私の番!」
「順番な順番」
遊んでいる時間がある程余裕があるわけではない。だが、子供達が楽しげにしている姿を見ていると遠い昔の自分を思い出し、懐かしい気持ちになってつい付き合ってしまっている
子供と戯れた後、村の様子を一通り見て回っているとその日はあっという間に時間が過ぎ翌日を迎えることとなった
アリシアが鍛錬から戻って来たことを確認すると早速剣の完成を伝えた
「本当ですか、早速見に行きましょう」
表情を変えずにそう答えたアリシア、だが実際は口角が少し上がっていた。本当はもっと喜びたいはずだろうが他の者の前ということもあり感情を抑え込んでいるようだった
イヴリスから剣のことを聞いたアリシアは鍛錬から帰ってきたばかりにも関わらず一目散にゴルドの元へと早足で向かっていった
「待たせて悪かったのアリシア殿、これが儂の持つ全てを注ぎ込んだ渾身の剣じゃ」
「拝見させて頂きます」
ゴルドから念願の剣を受け取り鞘から抜くと、そこから紅色に輝く剣が現れる
陽に照らされるとまるで静かに燃える炎の様にも見えた。それを見てアリシアは見惚れていた
「綺麗な剣ですね・・・」
「ちょっと待っておれ」
ゴルドが何やら奥の部屋の方から引っ張り出してきている間もアリシアは剣に夢中
やがて奥の部屋からゴルドが戻ってくると一式揃えられた鎧を手に持っていた
「これは鉄で作った鎧じゃ。その剣で試し切りしてみてくれ」
ゴルドの要望に頷き構える。一度深呼吸した後剣を振り下ろした
すると鎧は時間差で両断され地面へと落ちていった。スッパリと斬られた切断面を見るとゴルドが作った剣がどれ程の切れ味かを物語っていた
「凄い、斬った感覚が全く感じられない程の凄まじい切れ味です。これ程の切れ味聖剣と同等といっても過言ではありませんよ。こんなに素晴らしい剣を作ってくれてありがとうございますゴルドさん」
「儂の全身全霊をかけた一振り、気に入ってもらえたようでなによりじゃ」
「これで剣を使った鍛錬をようやく行えるな」
聖剣に代わる剣を手に入れることができたアリシア
ここからサラとの鍛錬は更に厳しいものになっていくこととなる
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