イヴリスVSマリア
広野に地鳴りのような音が鳴り響く。それは本当に大地が揺れたわけではなく2人の拳と拳が交わったことで発せられていた
「こんのおおお!」
「ふははははは!」
ただの殴り合いとは思えない轟音が一撃繰り出される毎に響き渡る。小柄な体格なマリアだがその威力はイヴリスにも引けを取らない
「中々やるじゃないかマリア!」
「そっちはまだまだ余裕そうじゃない、だったらこれはどうかしら。ブラッド・レイ!」
マリアが手を突き出すとその先から複数の血の塊が出現し、それがイヴリスに向かって凄まじい速度で発射される
ヴァンパイアが得意とする血を操る技で血を光線のように放つ魔法
それだけであれば大した脅威ではないがマリアの血はただの血ではない。マリアの血には毒、厳密にいうと毒ではないが他者がその血に少しでも触れると感覚器官が異常をきたし体の自由が奪われ動けなくなってしまう
この特性があるのはマリアが他のヴァンパイアと違う個体として生まれてきたのが原因と考えている
「当たらなければどうということはない」
「避けられるのなら避けられないようにすればいいのよ。ブラッド・プリズン!」
マリアが血の光線を檻の形へと変えイヴリスを中に閉じ込めた。イヴリスの力でもすぐには壊せない凝固した血液、そこから更にマリアの攻撃が続く
「スティング!」
マリアがそう発すると檻がまた姿を変え、無数の棘が中に閉じ込めていたイヴリスを襲った
「いたたたたた!」
全弾がイヴリスの体に命中、ダメージ自体は大したことはないがマリアの血に触れたイヴリスは体の自由が奪われる。しかしそれもイヴリスの体にはマリアの血の効きが悪いようで完全に動けなくなるというまでには至らなかった
「確かに他の奴には有効かもしれないが私にはちょっと痺れる位だぞ。少しすればすぐに元に戻る」
「そうでしょうね、でもそれで十分よ」
その言葉と同時にイヴリス達の周囲が影に包まれる。イヴリスが上を見上げると上空には巨大な隕石が迫ってきていた
「おいおい!流石にやりすぎだろ!あんなの落ちたらここら一帯が更地になるだろう!」
「問答無用よ!」
イヴリスは周りの被害の事を考えて簒奪の魔眼を使用して隕石の支配権を奪い攻撃を逸らそうと試みる。だがいくらやっても魔眼が発動する気配がない
「無駄よ、貴女の考えることはお見通しなんだから」
マリアの眼にはイヴリスと同様簒奪の魔眼が顕現していた。両者の魔眼が同じ対象に向けられたことでその効果は相殺、よってマリアから支配権を奪うことは叶わなかった
「くらいなさい、メテオ・ストライク!」
巨大な隕石がそのままイヴリスに直撃する。2人がいた場所は衝撃で一帯にあった樹が根っこから吹き飛んでいき、隕石が直撃した所には百メートル規模の大穴が出来上がっていた
その大穴の中で一つ動く影をマリアは捉える。煙の中から現れたのは隕石が直撃したはずのイヴリスだった
「いったぁ・・・お前容赦無さすぎるだろ。私じゃなかったら跡形もなく消滅していたぞ。村から離れたのは正解だったな」
「他の相手に使うわけないでしょ、貴女だから使ったのよ。実際これを使ってもピンピンしているようだし」
「いや体が動かなくて防御出来なかったからかなり痛かったぞ。頭からも血が出てるし」
「それだけで済んでる方がおかしいのよ。どんだけ頑丈な体をしてるんだか」
「で?もう終わりか?ならそろそろ諦めて・・・」
「諦めるわけないでしょ、イヴリスが首を縦に振るまで私は何度でも挑むわよ」
「とことんやるしかないのか・・・」
そこからはいつ終わるかも分からない戦闘が繰り広げられた。いくらイヴリスが攻撃してもマリアは幾度となく立ち上がってきてイヴリスの前に立ちはだかってきた
お互い本気とはいえ殺意がないだけに決め手にかけ、傷が増えてきたら回復してしまうので埒が明かない
2人は次第に手数よりも口数の方が多くなっていっていた
「だいたいイヴリスは勝手すぎるのよ!出ていかなくたって言ってくれれば私だって違うやり方をしたのに!」
「言ったって無駄だと思ったんだよ!マリアは私より優秀だから私がいなくても大抵のことはできるだろう」
「だから貴女が居なくちゃ意味が無いって言ったじゃない!どうして分かってくれないのよ!」
「なんでそこまで私に執着するんだ」
「そんなの・・・イヴリスが好きだからに決まってるでしょ!」
突然の告白にイヴリスの動きが止まる
「なんだ、お前私の事が好きだったのか?」
「か、勘違いしないでよね!家族的な意味でだから!家族なら一緒にいないとでしょ!」
「家族か・・・」
イヴリスも長年傍にいてくれたマリアやルインの事は数少ない身内だと思っている。ルインと違いマリアは自分の気持ちを表に出さないので自分の事をどう思っているか分からなかったが、今回こうしてぶつかり合った事でようやくその想いを吐露してくれた
「確かに家族は一緒にいなくちゃいけないよな」
「イヴリス、分かってくれたのね。良かったわ」
「だがやはりここを離れるわけにはいかない。そこで提案があるんだが・・・」
「提案?」
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